短編2
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配達中の白い手

10年前に私が実際に体験した話しです。

私は、新聞奨学生という大学費用を免除するかわりに住み込みで新聞配達をするという制度で大学に通ってました。

朝刊→大学→夕刊・集金→友人達と遊んでそのまま朝刊のサイクルが続き、大学1年目の若さもあってか2.3日寝てない事もありました。

そんな中、朝刊を配ってる時にマンションの中を歩いていると壁から白い手が生えている光景をたまに見るようになりました。

最初は驚きましたが、心霊現象を信じていなかった私は、寝不足からくる幻覚なのだと結論付けていました。

白い手は2.3本ただ生えているだけでした。

稀にマンションの中に生えてる白い手がゆらゆら動いており、何だろうと気になって手を伸ばそうとすると、世界がグルンっと回って白い手は消える。

何だろうと集中した事によって脳が覚醒して幻覚が消える。そんな風に思っておりました。

2.3日寝てない時にそんな症状は現れ、その光景に馴れてきた私は、

(ああ、手が見え始めた。ちゃんと寝ないとな…)

といった感じで自分の疲れ度合いを確認する要素として扱っていました。

そんなある日、原付で朝刊を配ってると

交差点に差し掛かり、信号は青信号。

特に何も考えずにそのまま進もうとした時に

交差点に入る直前の道路からいきなり10本以上のゆらゆら動いた白い手が生えてきました。

ゆらゆらと動く白い手は稀で、こんな多い数を見たのも初めてで私は驚き、急ブレーキを踏みました。

急ブレーキを踏んだ瞬間には白い手は消えて何だったんだ…なんて思った瞬間には目の前に信号無視をしたトラックが猛スピードで通り過ぎて行きました。

あの時、白い手が生えてこなければ

自分は跳ねられていたとすぐに理解しました。

今ではもう白い手を見る機会はなくなりましまが、

あの時の白い手は一体何だったのだろうか?

と今になっても思い返す時があります。

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