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短編1
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溢してはいけない

中東出身のスタッフから聞いた寓話。

とある大金持ちの実業家がいた。

彼が手がけた事業はことごとく成功し、その国を大きく進歩させた功労者としての名声もあった。

もはや彼には何の不安もないだろうと思われていたが彼はひどく水を恐れていた。

とても親しい友人がなぜそんなに水を恐れるのかと彼に問うと、

彼は若い頃に悪魔と契約して商才を手に入れた。

そして悪魔は去り際に大量の水をこぼした時にお前は全てを失うと告げて消えた。

なので最新の注意を払って水をこぼさないように生活しているのだということであった。

友人はその話を半信半疑で受け取った。

その後も彼は様々な事業を展開して全てを成功に導いた。

しかしある嵐の日、彼の手がけた治水用のダムの堰が突然決壊し、鉄砲水となり下流の街を襲った。

夜中の災害であったため非常に多くの死者が出たが彼自身もこの災害で亡くなってしまった。

さらにそれだけではなく彼の死後この災害の賠償や当主を失ったことによる混乱で彼の興した事業は次々に破産していき最後には何も残らなかった。

まさに悪魔の言った通り彼が築き上げた全てが失われたのであった。

Concrete
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