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長編9
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噂の独り歩きと魔女

最近、なぜかウチのところに心霊関係の手紙が来るようになった

〇〇がいるような気配がするから除霊をしてほしいとか

変な物音がするから調査してほしいとか

ウチは陰陽師や霊媒師などしていない

たまたま家を建てた場所が霊道で霊現象が起きてるだけ

まぁ・・能力のある人間が3人いるけれど

どうも変な噂が独り歩きしてるような気がする

10月も半ば

ポストに手紙が入っていた

オヤジがその手紙を持ってきた

「おい・・・また手紙が来てるぜ・・・」

「またか・・・」

先月も変な現象が起きてるので調べてほしいと手紙が来た

もちろん丁重に断った

今回もまた変な現象の手紙だろうな

オヤジが封を切って読みだした

親父の顔が段々と険しくなっていた

「こりゃ・・・」と一声を発してずっと手紙を読んでいた

「せがれ・・・あかん・・・読まなきゃよかった・・・和尚を呼べ」

「え・・・・???オヤジ、引き受けるのか?」

「ああぁ・・・こりゃ・・・一刻も猶予ならん・・・読んでみろ」

オヤジから手紙をもらい読みだした

これは・・・話の内容の真偽はともかく話の内容が不気味すぎる

私は急いで和尚様へウチへ来るようにメールを送った

「じいちゃ・・・読んじゃった?・・・駄目だよ・・・まずは私に渡して・・・その手紙についてる情報を読み取るから・・安全なら封を切るし駄目なら浄化させるし・・もう!!!」

「あ・・・ごめん・・・」

前回はなぜ断ったのかと言うと楓が手紙を持ったときに何も感じなかったから

つまりイタズラ

速攻でゴミ箱行きになった

だが今回は楓を通さずにオヤジが勝手に封を切ってしまった

これも・・・霊障のひとつなのかも・・・

今、思えば・・・

夕食も終わり

和尚様が来た

「遅くなってしもうたわい」

高速道路の交通事故で渋滞にはまっていた

いつもなら夕方には来てる

遅い遅いと思ってたら事故渋滞だったのか

和尚様に手紙を渡した

和尚様も段々と険しい顔に変わった

「こりゃ、あかんですわい、準備して明日にはいかないといけないですわい」

「明日!?無理!平日だよ、会社があるよ、学校もある」

「しかし、手紙の内容からして一刻の猶予もないですわい」

「え・・・・無理」

「オヤジ殿、どうします?」

「せがれはともかく楓ちゃんがいる・・土曜日か・・・ギリギリかな」

「ですわな・・・」

どうしても会社や学校がある

土曜日

例の如くのメンバーで依頼主が住んでいる隣町へ午前4時頃に家を出た

もちろんS君に留守居役を頼んだ

車で1時間ほどの住宅街の外れ

裏側はもう山になってる

一軒家がポツンと建っていた

「ここか・・・まぁ・・」とオヤジは一語と言ったきり黙ってしまった

和尚様はジッと家を見ていた

「オヤジ殿、こりゃ・・・」

「くそ坊主、わかったか・・・こりゃ・・・」

オヤジが呼び鈴を鳴らした

家主が出てきた

「どうも遠くからすいません・・・」と頭を下げた

60代くらいの白髪の男性

リビングへ通された

普通という感じ

なにか変なものがあるという感じではない

ただ、空気が重い

匂いがあるわけではない

圧迫感がある

主は家族構成から話をしだした

主人

奥さん

娘さん

3人家族だ

娘さんは社会人だが今は会社をやめて家にひきこもっている

奥さんは原因不明の体調不良で入院中

今、家にいるのは主と娘さんだけ

娘の様子がおかしくなったのは今年のはじめ

去年までは普通に会社へ通勤をしていた

正月に入り主と娘さんだけの正月を迎えた

正月も終わり娘さんの休みも終わったのにもかかわらず

「会社へ行きたくない」と言い出した

主がいろいろと聞いたが一向に理由を話したがらない

3月に入り会社からクビの通告の電話が来た

理由はもちろん無断欠勤

ここのところ娘の顔を見たことがないという

「主、娘さんはきちんと食事はとっているのか?」

「いや・・食事も・・・最近は娘の姿を見ていない」

「え?・・・おい・・・娘の部屋へ行ったのか?」

「行ってはいるけれど返事がない・・・」

「おいおい・・・まさか・・」

「いや、娘はちゃんと生きてる・・たまに娘の声はするから」

「おい・・・声だけか・・・」

「ご主人、娘さんはいくつですわい?」

「娘は今24歳です」

「主、一度、娘さんの安否を確かめるから娘さんの部屋へ案内してくれ」

「わかりました」

全員、主の後について行った

娘の部屋は2階にあった

主がドアをノックをし娘の名前を呼んだ

返事がない

主はドアを開けようとしたら

「お父さん!!開けないで!!!」と大きな声

「おい!娘よ、話がある!開けるぞ!!」

「ダメ!!!絶対にダメ!!!」と強く否定してきた

「くそ坊主、こりゃ・・」

「はい、間違いないですわい」

「主、すまんが強硬的に開けさせてもらうぞ」

「え・・でも・・・娘が・・・」

「ご主人、一刻の猶予もないですわい、今、開けないと後悔しますわい」

「え・・・わかりました」

オヤジはドアノブをおもっきしひねってドアを押した

勢い余ってドアが一気に開いてドンと大きな音を立てた

すごい悪臭が廊下に流れ出してきた

「くせーー、こりゃあかん、せがれ、楓ちゃんたちを連れて車へ戻れ!」

「オヤジ、わかった」

私は3人娘たちを連れて家を出て車に乗った

2階からオヤジたちの声や娘?さんの声が聞こえてきた

しばらくすると和尚様のお経が聞こえてきた

娘?さんの悲鳴やオヤジの怒声が響いていた

およそ1時間ほどして救急車が来た

救急隊が担架を担いで家の中に入っていった

家から主とオヤジと和尚様が出てきた

主は救急車に乗った

家から救急隊が担架を担いで出てきた

慌てて担架を救急車へ入れて早々に救急車が出発した

「オヤジ、どうした?」

「せがれ・・・あの娘、あかんかもしれん・・・やはりよ、早く来るべきだったかもな」

「え?・・・」

「まぁ・・詳しいことは家に帰ってからだ」

家に帰るまでオヤジと和尚様は下を向いたまま何も話さなかった

家に着いた

「せがれ、すまんが、家の周りに塩をまいてこい、たくさんまいてこい」

「え・・・わかった」

私は粗塩を東西南北の角にたくさん皿に盛った

玄関では和尚様がお経をあげていた

リビングでは家族のものが心配そうな顔をしていた

「あんた、大丈夫かい?」

「まぁ・・ちょっとな・・・やはりよ、早く行くべきだったのかもよ・・・もう手遅れかもしれん」

「さようですわい・・・」

オヤジが淡々と話しだした

オヤジたちが部屋に入って目についたものは

ゴミ、ゴミ、汚れた服、まさにゴミ部屋になっていた

娘は部屋の隅でジッとしていた

主が声をかけても壁を見つめるだけだった

主は娘の姿を見て絶叫した

「そんな・・・」

オヤジや和尚様もあまりにも酷い姿を見て絶句した

「くそ坊主、こりゃ・・・もう・・・あかんぞ・・・」

「はい・・手遅れかもしれませんわい」

主は呆然と立ったままになってしまった

娘の姿

頭の髪の毛は抜け落ち、あちこちに円形のハゲ

頬はやせこけ

体はもはや骨が見えていた

とても24歳の女性とは思えない姿

まるで悪魔が座り込んでいる姿そっくりだ

「くそ坊主、念のためだ、お経を唱えろ!!!」

「はい、おやっさん」

およそ30分間ほどお経を唱えた

「お・・少しだが娘に反応が出てきた!くそ坊主、もっと声を上げて唱えろ」

「はい!!!」

娘に反応が出てきた

体がピクンピクンと動いたように見えた

「よっし!この俺が娘に取り憑いてる悪霊を追い出すぜ!」

オヤジは呪文を唱えた

娘が絶叫しはじめた

汚い言葉を罵り口からゲロを吐いた

更にオヤジは呪文を唱えた

娘の体が180度に曲がり首も180度回転した

それを見た主があまりにも恐怖のために倒れてしまった

娘に取り憑いていた悪霊の苦しい絶叫が響いていた

訳の分からない言葉でオヤジたちを罵りさらに娘の体は腰辺りから90度曲がった

およそ1時間の戦いを終えた

急いでオヤジは救急車を呼んだ

「よっし!悪霊は出ていったぜ、あとは娘の生きる力だけだ」

「左様ですわい、生きる強い意志ですわい」

オヤジは倒れた主を起こした

「終わったぞ、悪霊は追い払ったぜ、あとは生きる力があれば助かる、救急車を呼んだ」

「え!?悪霊!?・・・」

「そうだよ、娘に取り憑いていた」

「娘に・・・」

「あぁ・・原因は悪霊だよ、それとな、悪霊が来た一番の原因は奥さんだよ、奥さんが悪魔なんだよ、奥さんと娘は仲は悪いだろ?」

「え・・確かに、家内と娘はいい関係ではないです・・・実を言うと家内は後妻なんです・・・娘の母親は病気で娘が5歳のときに亡くなりました、そのあとに再婚したんです」

「やはりな・・・主、よく聞いて欲しい、一応は悪霊は追い払ったけどな、今、入院している奥さんは助からないかもな」

「え・・・そんな!!!!両方とも私にとって宝だ・・・なんでことを・・・」

主は泣き崩れてしまった

オヤジの話を聞いて家族全員が下を向いてしまった

翌朝に電話が鳴った

例の主からだ

「前日は・・・家内が亡くなりました・・・娘の方は集中治療室で治療をしています・・・

本当にありがとうございました・・・」

「そっか・・・主、奥さんの状態はこういう感じだったろ」

「え・・・はい!、そんな感じだったんです・・・ええ・・・たしかに・・・家内は・・・そうです・・」

「とりあえずは、早急に葬式を上げて骨にしろ、それと奥さんの一族には絶対に知らせるな」

「はい!そうします、明日にも葬式をして早急に灰にします」

「今、例の主からだよ、奥さんが亡くなったようだ、娘は集中治療室で治療中だそうだ」

「オヤジ・・・」

「まぁ結果的には奥さんが原因だった、いや奥さんが悪魔だったんだよ、魔女だな、主の優しい心につけ込んであの家族の一員になってしまった、目的は家族の崩壊、一応は家族の崩壊を阻止はしたけどな・・・やはりよ、1週間早くあの家へ行けばよかった・・・1週間前が密約の最終実行日で娘の魂を抜き取る日だった、あの手紙を読んですぐにわかったよ、それで主に電話をして結界を作ってもらわったわけ

それでなんとか1週間もたせた」

「そっか・・・だから早く行きたかったのか・・すまん・・・オヤジ」

「いいってよ」

半年後に娘は退院した

徐々に良くなるはずだ

主が1ヶ月後に我が家へ来た

お礼と奥さんの話をされた

やはり奥さんの素性というか得体のしれない何かだった

前の奥さんを亡くしてからしばらくして今の奥さんが突然家を訪れてきた

それから毎日家に来ていた

徐々に主も奥さんに心を開くようになっていった

ついには奥さんを家に入れてしまった

娘さんはその奥さんのことが気に入らずにすごく不機嫌だった

今思えば娘の言うことを聞いていればよかったと主は後悔していた

今の奥さんと再婚してから家の中が徐々に崩れていった

主の会社が倒産したり

娘の引きこもり

奥さんが原因不明の病気で入院

などなど

それが1年以内に起きた

主はいろいろと原因を探った

何が原因なのか

いろいろと考えた末、やはり今の奥さんが来てからおかしくなった

けれど確証が無い

ふらっと商店街へ行きそこでお昼にしていたときに

お客の話を小耳にした

噂話で我が家の話をしていたらしい

それで手紙を書き我が家へ送ったのだと

おいおい・・・やはり変な噂が独り歩きしてる・・・

今の奥さんの行動というか少しおかしなところもあった

まぁ癖だろうと思っていた

夜中にふらりと外へ出ていく

はじめはトイレだと思った

しかし、1時間経っても戻ってこない

それがほぼ毎日だ

さすがにおかしいとおもい

寝ずに起きていた

午前3時頃に奥さんがむくっと起き上がりそのまま家を出ていった

慌てて主も距離をおいて後をつけた

そして、暫く歩くと空き地がありそこに4,5人の黒服の人達がいた

奥さんがその中に入りその周りにいた人たちは縁を描くように並んだ

そしてどこの国の言葉が知らないけれどなにかしゃべりながら儀式をしていた

まさに魔女の儀式に見えたらしい

あまりにも異様な光景を見て恐ろしくなり急いで家へ戻った

ところが家に戻ると奥さんはベットで寝ていた

2度見した

たしかに奥さんだ

いつの間に・・・

「あのぉ・・本当にすいません・・・今さっきから何やら音が聞こえてるんですけれど」と主は恐る恐る聞いてきた

「はい・・・噂通り我が家は化け物屋敷です、ラップ音はほぼ毎日聞いています」

「え!?・・・大丈夫なんですか?」

「まぁ・・慣れました」

「はぁ・・・」

いろいろと主から聞かされた

主は深夜遅くに頭を下げて家へ帰っていった

Concrete
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