短編2
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「あ•そ•ぼ」

私は今自宅で療養生活をしている。

なんと憧れの一人暮らしを始めてから間もなく

大学への通学途中に自転車で転倒し

右腕を骨折してしまったのだ。

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それだけでも災難なのに、更に私はアパートの二階へ上がる階段から足を踏み外し

左足まで骨折してしまったのだ。

泣きっ面に蜂とはこういう事かとしみじみ感じた。

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私は荷物がなくなりガランとした最近まで

暮らしていた実家の部屋に布団を敷いて安静にしている。

介抱してくれている母はすっかり呆れていた。ぼんやりしているからよ。と叱られた。

夜になり電気を消しても眠れない。

昼夜関係なく布団で休んでいる為、眠くない。

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父も母も弟もそれぞれの部屋で眠った様で

シーンと静まり帰った部屋にカーテンの隙間から月の光がぼんやり差し込んでいる。

私は深夜、ふと何かの視線を感じた。

(誰?お母さん…?)

そう思って左手で身体を起こそうと思ったが

骨折してない左手までピクリとも動かない。

いや全身が全く動かせない。

(金縛り…?)

そう考えていると、足を向けて寝ている部屋のドアが キィー…っと静かに開く音がした。

(誰?)私は目だけを動かし視線をやる。

ドアが微かに開いている。

そしてぼんやりと照らす月明かりの中にソレはいた。

(人形?!)

信じられない事に、その人形は何にももたれず自分で立っている。

右手と左足はあらぬ方向に曲がり顔の片方が

陥没している。

(嘘?!確かあれは私が捨てた人形?!)

そう、その人形は私が一人暮らしをする時に

荷物をまとめていると押し入れの奥から出てきた物だ。

それはセルロイドの古びた人形で買った覚えも誰かに貰った記憶も無い謎の人形。

私は引っ越しの為の片付けに疲れていて、その何の思い入れも無い人形を無造作に他のゴミと一緒に捨てた。

ギィコ…

ギィコ…

それは小さな関節の音を不気味に鳴らしながら一歩ずつ近付いてくる。

曲がった左足を引きずりながら。

恐怖で汗が滲んでくる。

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ギィコ…

ギィコ…

(誰か助けて!お母さん!)

私は声が出せず、心のなかで叫んで目を瞑った。

そしてソレは耳元で聞こえた。

ギィコ…

私はパッと目を開け横を見るとソレは陥没した不気味な顔に並ぶ二つの目で私を見下ろしていた。

私は心のなかで叫んだ。

(ごめんなさい!ごめんなさいっ!!)

(私はあなたを捨てたけど、そんな風に壊してない!!)

額から汗がツーッと流れた。

と、その瞬間、ソレは割れた電子音で不気味に笑って、こう言った。

Concrete
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