山中の廃工場の続編です。
後日談
俺はあの出来事の詳細を調べる為に、図書館で古い新聞記事を読んだり、あの近辺の人に工場の事について聞いたりしてみた。
だけど、誰もその工場の存在を知らない様だった。
俺は、只の怪しい人物に成り下がろうとしていた…。
しかし、諦めきれなかった俺はあの工場に何度か足を運んでいた。
そんな事が1ヶ月程続いたある日。
その日も工場に行ってみようとあの雑木林の入口を目指していた。
夜は危ないと思っていたので昼間に行った。
と、あの入口の場所に一台の軽トラックが停まって道を塞いでいた。
その軽トラックの後ろに俺は車を停める。
迷惑なやつがいるもんだ。
などと、自分の事は棚に上げてそんなことを思っていた。
すると、雑木林の中から一人のおじさんが出てきた。
『何だ、兄ちゃん、何か用か…?』
おじさんは、茨城弁独特のイントネーションで俺に訪ねた。
俺はそのおじさんにあの工場について聞いてみた。
このおじさんは、この辺りの地主さんらしく、あの工場もこの人の所有する土地に建っているらしい。
工場の事を詳しく知りたかった俺はおじさんにそこで自分が体験した事を話してみた。(だが、あの女と男の事は伏せて…)
おじさんの話を要約すると次のようになる…
30数年前。
まだこの地区が深い山林地帯だった頃、宅地分譲のための開発事業が計画、実行された。
地元住民はこの工事に反対した。その理由は、この土地には昔から「林神」とかいう大勢の神様?が居るらしく、その神様の住みかであるこの山林地帯に開発の手をいれれば、必ず祟りがあると言うことからだった。
もちろん、そんなものを県のお偉方や工事業者が信じる訳もなく、住民の反対を押しきって工事は敢行された。
これが、林神の祟りかどうかは分からないが、工事の前に行うお祓いでその場に居たその開発事業の責任者が急に倒れてそのまま病院へ運ばれたそうだ。
…工事が始まった。
初日から怪我人が相次いだらしい。
そして、工事開始から3ヶ月後。
ついに恐れていたことが起こった。
工事の現場監督が道を舗装する作業を見ていたときだった。
誰も乗っていないロードローラー(道を舗装するための車。)に轢かれて死んだらしい。
この事故が起きて、それまで迷信や神など気にも留めなかった工事関係者達はヤバイということに気付いたらしい。
そして、神主が呼ばれて再びお祓いが行われた。
お祓いの後、神主はその場の全員を集めてこう言った、
『この土地に古くから住むもの達の安らげる場所が必要です。それを用意しない限り、また同じ様な事が起こるでしょう…』
そして建てられたのがあの工場。実際には最初は大きなプレハブだった。
しかし、一部の人間が勝手に機材を持ち込んで簡単なもの作りをしていたらしい。だが、元々それは林神の為の家?的なものだったので、やはり事故は相次いだようだ。
だが、当時その建物で作業をしていた人達はそんなことがあっても作業を続行したという。
そこまでして作りたかった物が何だったのか気になったが…
しかし、それも辞めざる得ない出来事が起こる。
工場の一室。
俺が鍵を開けて入り込んだあの部屋で、工事のお祓いを担当した神主夫婦が寝巻き姿でお互いの体をズタボロに切り裂きあって死んでいたそうだ。
夫婦の死体の周りには大量の御札が散らばっていたらしい。
その場に居た誰もがここで起こったことがただ事じゃないと感じたらしい。
後に、神主の家から一枚の便箋が見つかる。
その内容は、
「林神達の怒りはもはや祈るだけでは抑えることが出来ない。妻のお腹の子供は彼等の生け贄になってしまった。だが、それでも彼等は怒りが収まらない…。
これ以上彼等を放っておいたら大変なことになる。
何とかしなくては。」
つまり、神主夫婦は自分達を生け贄として林神達に捧げたと言うことらしい。
俺が見た、男の方はきっと神主だろう。
でも、あの女は?
それだけは結局解らなかった。
神主の奥さんが身ごもっていた子は女の子だったらしい…
それじゃ、もしかして…
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話