中編4
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消えた侵入生

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それってどういう事っすか。

「ですから私の一存では学生寮への入寮を認められません。

どうやらそちらの書類に不備がある様です。

何か心当たりはおありですか?」

不備って・・・何か入試で不正でもしたって言いたい訳?

「いえ、そういう訳では。

ただそちらの書類に幾つか不審な点が見受けられました。

例えば理事長印が無いんです。」

え、

だからそれってどういう事ですか。

ちゃんと試験に合格したんだし事務処理なんてそっちの責任でしょ。

てか、街は一通り歩いたけどここら辺は学生寮以外に宿泊施設なんてありませんよねぇ。

電車ももう無いし今日は野宿しろって事ですか。

「とにかく入寮は認められません。

我々の事務処理も全て適正です。

ですので今回は特例として旧校舎の貴賓室にご宿泊をお願いいたします。」

???

今日は・・・って一体どういう意味ですか。

だってアンタはこっちが入試不正したって言いたいんでしょ。

「そうではありません。

今、ウチの学校は理事会がゴタゴタしてるのよ。

もしかして反理事長派の息が掛かってるのかも。

とにかく明日、負って仔細説明いたしますので。」

・・・

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納得出来ないがとりあえず言われた通り学生寮ではなく旧校舎の貴賓室に泊まる事にした。

その日の夜。

貴賓室の豪勢なベッドで横になりながら物思いにふける。

ダメ元で受験したこの地元じゃちっと名の知れた私立高校。

まさか俺の偏差値で受かるとは思ってはいなかったが。

てか学生寮って入寮出来るのは普通3月とか4月からだろうに。

「それにしても2月に入寮させるって珍しい学校だよな。」

そう言った彼の名は鈴木と言う。

俺と同じく何等かの理由で学生寮事務に弾かれ一緒に貴賓室に泊まる事になった仲だ。

まったく・・・何が悲しくて真冬に男二人が仲良くベッドINせにゃならんのかね。

エアコンも死んでるしこれ下手すりゃ凍死するぞ?

「だよなー何か天気予報だと今夜は豪雪らしいな。」

は?ウソだろ?

そんな下らない事を愚痴りながら俺達はいつの間にか下劣な深夜番組を観ながらまどろんでいた。

コンコン・・・

ノックで目が覚めた。

時計を確認すると深夜の二時過ぎだ。

どうやら見廻りが来たらしい。

急いで照明を消しベッドへ滑り込んだ。

コンコン・・・

またノック。

どうやら見逃してくれない様だ。

「しゃーない。」

鈴木は素直に夜ふかしを謝る事に決めた様だ。

俺は布団の隙間から様子を伺う。

ガチャリ

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予想外の相手だ。

てっきり警備員の見廻りだと思っていたが。

「えーっと・・・あなたは学生さん?

たぶんですけど風紀委員・・・さん・・・でいいんですよね?制服デザイン何か違うし・・・」

風紀委員だったのか!?

鈴木の問いに彼女は無反応だった。

「いや、ホントすんません。

照明点けっぱで寝ちまって・・・」

・・・て

・・・来て

「はい?

こっち来いって事ですか?」

やはり絞られるのか。

鈴木は部屋の外に出て風紀委員さんに付いていく。

それから十分程経った頃だろうか?

再び風紀委員さんのノックが響いた。

やっぱりダメか・・・

さては鈴木の野郎・・・俺を売りやがったな?

馬鹿みたいな事を考えながら俺は覚悟を決めてドアを開けた。

その時だった。

「鬼はぁ~外!」

深夜番組のアニメっぽいキャラクターが無邪気に叫んでいる。

ああ、すっかり忘れてたわ。

そういや今日は節分だっけか?

俺はぼーっとした顔でテレビを眺めた。

ガタン

風紀委員さんが床に膝をついて両手で自分の顔を覆っている。

何だ?

あの、どうかされましたか?

気分悪いなら誰か呼びましょうか?

風紀委員さんは俺の言葉を無視し急に立ち上がると走り出した。

ちょ、廊下走るとアブな・・・・

つい風紀委員さんの手を掴んでしまった。

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覗き込んだそこに風紀委員さんのかわいらしい顔は無かった。

そこには目も鼻も無くぽっかりと牙の並んだ巨大な口だけがあった。

その口から何かが床にこぼれ落ちた。

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それは血にまみれた人間の指だった。

俺は何も言えずそのまま腰が抜けて床にへたり込む。

風紀委員さんだったものは物凄い勢いで廊下を走り去っていった。

心臓は物凄い勢いで脈を打っている。

翌日、当然ながら警察に事情聴取された。

変に思われるのもアレだしあのバケモノの事は話さなかった。

信じてくれるかどうか分からなかったが学生を装った変質者が鈴木を拉致し抵抗したときに指を落とされたと説明した。

結局、鈴木は発見されず俺の証言通り変質者による誘拐事件とされた様だ。

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それからあの一悶着が嘘みたいに学生寮にはスムーズに入寮出来た。

今では友達にも恵まれあの恐怖の一夜が夢だったのでは無いかと思える程に充実した日々を送っている。

不気味な位に・・・

ただ、ここの学生寮では節分の日には床に盛り塩と豆が散乱しているのだ。

嫌が応にもあの日の夜の記憶に引き戻される。

そもそも俺は本当にこの学校に己の運だけで合格したのだろうか?

鈴木も俺もこの学校が仕組んだ何等かの人柱だったのでは無いかと思える時がある。

気のせいかもしれないが今日もあのバケモノの気配がするんだ。

毎年節分の日には必ず一人になる。

今も一人で2chにカキコミしてる。

どんなに大人数でどんなに予定をギッチリ詰め込んでも皆不思議と節分の日には色々理由を付けて俺に近付かないんだ。

節分の日だけ・・・絶対にこれはおかしいよな?

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Concrete
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