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これはとある友人から聞いた話です。
その友人、仮にYとしますが
Yはレコーディング関係の仕事をしており
その日も収録の為、とあるスタジオに
行ったそうです。音響エンジニア等が
全員揃い、歌手が歌唱用のスペースに移動する。
その後曲が流れ、歌手が歌い始める。
曲が流れ始めてから、大体3分位。
歌詞が2番から3番に変わろうかという
所だったそうです。
歌手の後ろにある二つのスピーカー。
歌手に向かって左側にあるスピーカー。
そこから老婆の上半身がいきなりぐわっと
現れた。そしてまるで下半身を引き抜こうかと
する様に凄まじい形相でもがいている。
それを最初に見たY達は余りの事にしばらく
固まってしまっていた。しかしすぐに
正気に帰り、老婆が気付かれぬ様にと
祈りながら、曲を止めずに
歌手に対して「ヘッドフォンを外して」
「後ろを見ないまま ゆっくりこっちへ来て」と
カンペの要領でメッセージを送った。
歌手は最初は意味がわからず、
一瞬困惑の表情を浮かべたが、
何か尋常ではないY達の様子が
多少は伝わったのか、不可思議に思う様子は
見せながら、Y達の方へと移動した。
例のスピーカーの方を見てみると未だ老婆は
体を完全に引き抜こうと体を大きく揺らし
もがいている。しかも先程までは腰の辺りまでは
埋まっていた部分が心なしか減少した様に思える。それを確認したY達はスタジオを後にすると、
未だ状況を飲み込めないでいる歌手に
かいつまんで状況を説明した。
歌手は流石に信じられない様子だったが
Y達の様子を若干不気味に感じたらしく
結局収録が中止になっても何も言わずに
帰って行ったそうです。
あの老婆の霊が何であったのか
どうしてあそこに現れたのかは全く
わからないそうですが、あれ以来同じ事は
どうやら起きておらず、そのスタジオは
今もどこかに存在するそうです。
作者碧いウサギ