真夏の蒸し暑い熱帯夜の夜。自分の部屋で寝ていた俺は、余りの寝苦しさにぼぅっとしながら起きると、ベッドの脇にショートカットの女の子が立っていた。
彼女はなんだか悲しそうな表情をしていた。
しばらく見つめ合った後、彼女は後ろに振り向きながらスゥっと消えそうになった…
『待って!』
と何を思ったか、俺は彼女を引き止めてしまった。
すると彼女が驚いた様な表情で、また俺の方を振り向いた。
『君…、俺に何か言いたいんじゃない?』
と聞くと、彼女はゆっくり頷いた。
「…淋しい…」
会ったばかりで、しかも出会った時と場所が全く可笑しいこの状況で、俺は彼女の心の中の悲痛な叫びに耳を傾けた。
どうやら彼女は自分は死んでしまったのは自覚している様だ。
しかし、今までとは全く違う世界に驚きと不安と孤独感でさ迷っていたらしい。
名前は梨緒と名乗った。
他人事に思えなかった俺は、彼女にある提案を出した。
君が何処にも行く当てがないのなら俺の所に居てもいいと…
だが梨緒と俺とでは住んでる世界が違う。
無条件で住まわせる訳にはいかなかった。
①絶対に俺と俺の家族には取り憑かない事。
②睡眠の妨げ、金縛りなどは起こさない事。
③身的、心的被害を加えない事。
④他の人と話している時は話し掛けて来ない事。
などを条件に梨緒が淋しい時は俺の部屋に来てもいいと言った。
彼女は満面の笑みをして頷いた。
その目頭にはキラリと光るものが見えた気がする。
第一印象からは彼女は余り喋らないシャイな感じがしたが、実際はそうでもない。
寧ろ、喋り過ぎなくらいだ。
一緒にテレビを見ながら、最近の流行お笑いやブームなど楽しく話していた。
ある時、彼女の様子が可笑しい事に気付いた。
なんだか困った様な表情を良く見る。彼女の視線も何かを反らす様な素振りだ。
そこで俺が何故そんな表情をしているのか聞いてみた。
「…睨まれてる」
と彼女は言う。
どうやら俺の部屋に居る事で、俺の守護霊から嫌な視線を浴びているらしい。
俺は気にするなと言ったが、それ以来彼女は余り部屋に来なくなった。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話