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短編2
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追いかけてくる影

それは、私がまだ大学生だった頃の話だ。夏休みのある夜、友人の山田と肝試しをしようということになった。心霊スポットとして有名な山の中にある廃村に行くことにしたのだ。そこは、何十年も前に全ての住民が姿を消したという噂があり、誰も近づかなくなった場所だった。

廃村に着いた時、辺りは真っ暗で、懐中電灯の光だけが頼りだった。古い家々はすでに朽ち果て、瓦礫が散乱している。私たちは村の中心にあるという神社に向かって歩き始めた。空気は湿っており、静寂が耳に痛いほどだった。

神社に近づくと、突然、山田が背後を振り返った。「今、誰かが俺の後ろを歩いてる気がする」と彼が言った。もちろん、誰もいない。ただの気のせいだと思い、私たちは再び歩き始めた。

だが、数分も経たないうちに、今度は私も背後に違和感を感じた。何かが追いかけてくるような気配がする。振り向いても、何も見えない。しかし、その感覚は消えなかった。

「おかしいな…」私は山田に「やっぱり戻ろう」と提案した。山田も不安そうな表情をしていたので、二人で来た道を引き返すことにした。

その時、突然後ろから足音が聞こえた。振り向いても何もない。ただ、確かに聞こえたのだ。次の瞬間、山田が悲鳴をあげて駆け出した。「逃げろ!」と叫びながら、私も慌てて後を追った。

廃村を抜け、車に飛び乗った私たちは、山道を全速力で下った。背後から何かが追いかけてくるような恐怖に駆られ、車のスピードを緩めることができなかった。

やっと安全な場所まで来たと思った時、山田がふと静かに言った。「俺、振り向いたんだよ。後ろに何がいたのか見たんだ。」

「何がいたんだ?」私は恐る恐る尋ねた。

彼は小さく震えながら答えた。「俺たち…二人とも…だったんだよ。俺とお前が、追いかけてきてた。」

その後、山田はしばらく学校に来なくなった。今でも、あの夜何が本当に起こったのかは分からない。ただ、一つだけ確かなことがある。あの場所にいたのは、私たち二人だけではなかった。

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