始まりは、3ヶ月前程の、ある晩でした。
現実離れした不思議な話なんですが、今も彼はやってきますし、気になって仕方がないので投稿します。
その日私は、好きなお酒も飲んでいなかったし、疲れてもいませんでした。
意識がはっきりしてた事に間違いはありません。
長風呂をして、汗をかいて、髪を乾かして、さっぱりしてからベッドに入りました。
でも何だか眠れそうにありませんでした。
開けっ放しにしておいた寝室の小窓から風が入って、カーテンを揺らしていました。
SNSを見ながら、友人の日記にコメントした後、読みかけの本を読んでしばらくたった時でした。
そろそろ寝ようと時間を確認した事を覚えています。
午前2時半頃だったと思います。
ふと、甘い香りがする事に気付きました。
お香を焚いていた訳でもないので、不思議に思い、外からの匂いかなと思いました。
深夜に、花のような、なんとも言えない甘い匂いがするなんて、やはり私以外の誰か、マンションの隣人か、一軒家に住むお隣さんがお香を焚いているとしか思えません。
しかし、私の住む部屋は三階の角部屋。しかも寝室の小窓はお隣さんの一軒家に密接していません。
隣の家は平屋なので、窓の外は開けていて、遠くのマンションまで見渡せます。
匂いの元を気にしながらも、とりあえず寝なければならないので、私は窓に近づいて閉めようとしました。
そこに彼がいました。
正直言うと、「彼」かどうかもよく分かりません。
女か男か区別がつかないんです。
ただ、見た目は化け物のようではなく、完全に、完璧に人間でした。
寝室の明かりに照らされて、よく見る事ができたんだと思いますが、それだけであんなに見える訳がないので、彼自身が光っているのかもしれません。
髪は長めで、黒で、肌色は白く、瞳の色はピンクっぽい感じ。
ちょっと訳ありで、芸能人をよく目にする私ですら、今だかつて見たことがないような、綺麗な人でした。
ただ、その人は完全に宙に浮いていました。
そして、何といったらいいか、すごく口元が赤かったんです。
驚いて、窓を閉める事もできず、見つめる事しかできませんでした。
彼は無表情でした。
そして動く気配は一切ありませんでした。
ただ、腕組みをして私をじっと見つめていました。
今考えても、どこかおかしいのでは、と自分でも疑ってしまうのですが、
どうにかして宙に浮いているように見せているだけで、変質者やストーカーかもしれない彼を目の前にした私は、どういうわけか
「彼が部屋に入ってきたら最高なのに」
と思っていました。
余りにも彼が綺麗だったからでしょうか。
不思議でした。
怖いとは思いませんでした。
目線を合わせたまま、どれくらい時間が経っていたのか分かりませんが、彼は突然一言だけ言って消えました。
「…☆〆&、〇〇」
〇〇は私の名前でした。
彼は、本当に、そこに何もなかったかのようにパッと消えたんです。
なぜ彼が私の名前を知っていたのか今でも分かりません。
これだけなら、意識していなくても疲れていただけか、ちょっと精神が弱っていたのかもしれない、と思い込めるんですが。
それから、もう三回も彼を目撃しています。
毎回、最初に現れた時と同じように突然甘い香りを漂わせて寝室の小窓の外側に現れ、唐突に去っていきます。
見ている時、何の危害を加えられる事もなく、恐怖もありません。
そして、彼は私の部屋に決して入ろうとはしません。
外国語のように聞こえるのですが、必ず
「…☆〆&、〇〇」
と言って去っていきます。
もう何が何だかよく分かりません。
仮に幻覚を見ていたり、病気であるなら、もっと日常生活が乱れていたり、薬をやっていたりするはずなんですが、私はいたって普通に毎日を送っていますし、薬もやったことがないですし、仕事中は、人と議論したり、咄嗟の臨機応変な対応をすることもできています。
幻覚でないなら、彼は何なのか不思議です。
どうやって宙に浮いているのか。
彼が消えた直後には懐中電灯で、また、明るくなってからも確認しましたが。
足場にするような所は本当にないんです。
窓の近くに電柱もありません。
何のために、私の前に現れるのか。
普段はだんだん彼の存在が怖くなっているのに、実際に見ている時に怖くないのは、なぜだか分かりません。
言葉の響きだけでどうにか調べて、分かった事があります。
最後に言うあの言葉。
「またね、〇〇」
これは、恐らくラテン語なんですが、今どきラテン語と言うのも何だか不思議で。
どなたか同じような体験をしている方いらっしゃいませんか。
いらっしゃったら、ぜひコメント下さい。
ストーカーにしては、不思議すぎます。
何となく彼は人間ではないと思うんです。
でももしかしたら、あの甘い香りに、何か秘密があるのかもしれません。
また現れた時、勇気を出して、色々聞いてみようかと思っています。
長文失礼しました。
怖い話投稿:ホラーテラー 〇〇さん
作者怖話