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怖かった実体験 不審な老婆

短編2
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怖かった実体験 不審な老婆

これは、私が一人暮らしを始めて半年くらい経った時の出来事です。

住宅街の大きな道路に面している、古いアパートの二階に住んでいた私は、いつものようにベランダで煙草を吸っていました。

すると、腰の曲がった老婆がアパートの周りをウロウロしていました。一階の住人なのかもしれないとその時はなんとも思いませんでしたが、住んでいくうちに一階の住人にあの老婆はおらず、どこからともなくやってきてはウロウロしているという事が三、四度ほどありました。

アパートとはいえ、他人の住居のまわりを目的もなくウロウロされると個人的に不快だったので、その老婆をよく思っていませんでした。

ある日、出かけようとアパートの階段の下に置いてある私の自転車に跨ろうとしたところ、アパートの影から老婆がひょこっと現れ、私に話しかけてきました。

「あんた、ここに住んどるんかい。あんた、ここの2階で殺人事件があったやろ、階段上がってすぐのそこ。え?知らんの?暴力団の事務所で、母親と子が毒殺されちょったわ。警察も来とったやろ?、大事(おおごと)やったよ。気をつけなあんた…。」

私は終始、老婆の不気味なシワシワの顔と口調に不信感を覚えながらも、少しこの話に心当たりがありました。

2週間前くらいに玄関を出たところ、老婆が殺人事件があったという部屋の前あたりに警察がいたのです。その時私は「こんにちはー、どうかされましたか?」と気軽に話しかけたのですが返答を濁されてしまったので、少し気にかかっていました。

私は老婆の話に少し戸惑いながらも、自転車に乗りアパートを後にしました。

電車に揺られながら、アレは何だったのだろうと不安でした。

数日後の夜、いつものようにベランダで煙草を吸っていると目の前の駐輪場にパトカーが停まっていて、パトカーの外で警察官二人が話をしていました。

取り込み中かと思い、横目に観察しているとアパートの影からもう2人警察官が出てきて合流していきました。

小さくて最初は気づかなかったのですが、警察官の後ろにはあの老婆が。

連行されていました。

その後不安になり、交番に電話をかけて殺人事件について聞いてみたものの、そんな話はないとの一点張りでした。

もしこれが本当に起こっていたとしたら。

老婆が認知症からくる虚言癖で騙されていたならまだマシですが、それはそれで怖いなぁと思いました。

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