目の見えない男が、夜道を歩いていたときだ。
「ワタシ、きれい?」
目の前に、と言っても男には見えないのだが、大きなマスクをした女が現れた。
「ワタシ、きれい?」
(目の見えない私に、そう聞かれても困るのだが。)
男は少しの間考えて、こう答えた。
「大変申し訳ないのですが、私は目が見えないのです。
あなたの姿は見えませんが、声はとても美しいのですね。」
すると、男の顔に生温かい液体が飛び散ってきた。鉄のような香りがするその液体は・・・・
血?
男には何が起こったのかわからなかった。しかし、顔にかかったその液体はまぎれもなく血だった。
そして今も血しぶきが男の顔に飛んできていた。
「どうかなさったのですか?大丈夫ですか?」
返事はない。
目が見えない上に無音と化したその状況に、男はこれまでにない恐怖を感じた。
杖で前方を探ってみると、女の足に当たった。
まだ女はそこにいる。
「・・・ガ」
女が何か言ったが、男には聞き取れなかった。
「大丈夫ですか?」
まだ血が飛んでくる。
「・・・・・デモ゙ガ」
聞き取れない。
「・・・あの。どうかなさったのですか?」
男は一歩、女に近づいた。
次の瞬間だった。
「ゴレ゙デモ゙ガ!!!!」
さっきの女の声とはまるでちがう、かすれて汚い声だ。
「アダジノ、コエガギレイダッテ?」
女は自分の喉を裂いたのだ。
「ゴレ゙デモ゙ガ!!!!」
ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙
男の声とも女の声ともわからない大きな叫び声が、暗闇に響いた。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話