地方の田舎駅で働いていた頃の、今でも照明に覚えている奇妙な話を聞いてください。
当時の私(男)は、まだ就職したばかりでした。
駅の改札をくぐっていた年配のお客様からは、「若いね〜」と声をかけて下さったりしていて、今で言うとてもアットホームな駅でしたので、すぐ仕事面でも慣れることができ、自分はこんな素敵な職場に恵まれて幸せだな〜と毎日思っていました。
ある真冬の22時頃、終電を見送り、ホームにお客様がいないのを確認したあと『明日は仕事休みだし、この後ビデオレンタルしにいこうかな。』と一人で考えながら駅員室に戻ってみると、同僚の田中(仮名)がモニターを見ながら震えていたのです。
「どうした?」と声をかけるものの、「いや、ちょっと待って」と眉をひそめながらずっとモニターを眺めているのです。そのモニターは、駅のホームに設置したカメラが映し出す風景ですが、今さっき自分がチェックしてきたのにどうしたのかな?と私もモニターをのぞきました。
駅員室のドアの前に、女の人がジーッとたっているのです。
しかもドアを少しでもあけたら頭に当たるだろうというくらいスレスレに。
『おまえやっぱり気付いてなかったのか。おまえの背中スレスレに後ろずっとついて回ってたぞ…』
田中の言葉は私をゾッとさせましたが、田中は普段から冗談好きなためまた冗談かと思っていました。
しかしモニターには、ドアの前に立つ女性の姿が確かに写っている。
『お客様だろ。なにかあったんじゃないのかな?』
『でも…』
田中がしゃべろうとした瞬間、
ドンドンドンドンドン!!!
ドアをたたく音が狭い駅員室全体にひびきました。
モニターを見ると、確かに女性がドアを思いっきり叩いている。
私たちは、今起こっている不思議な現象を信じることができず、とにかく耳を押さえていました。
約3分くらいたってからドアの音は止みました。私たちは直ぐ様モニターに目を向けると、ドアの前には誰もおらず、どのカメラを見ても先程の女性の姿はありません。
すると、改札付近を映し出すモニターの中に、田中の恋人の女性が歩いてきました。
私たちは一瞬で安心することができましました。
『そういえば、この後デートだったんだよ』
そう話す田中は、2つある駅員室出入口のもう一つのドアから恋人の元へかけより、少し話したあと恋人を駅員室につれてこようとしていました。
その光景は、実際窓から見えたので少しの間モニターは見ていませんでしたが、不意に改札付近のモニターに目をやりました。
田中と恋人の女性がこちらにむかって歩いているそのすぐ後ろに、さっきの不審な女性が田中にくっついて歩いているのです。
私はとっさに窓へ目を向けましたが、ちょうど死角になっていて2人の姿は見えません。
モニターには、入り口の取っ手に手をかける田中とその隣に恋人。そして、田中の後ろに女性。
ドアが開いたときには女性の姿はありませんでした。
しかしモニターには駅員室に入らずドアの前に立つ女性の姿。
なにも知らない恋人さんを恐がらせてはいけないため、二人が入ってきても私は知らん顔してました。
『こんばんは。お邪魔してすみません』
品のある可愛らしい子で、いかにも田中の好きそうなタイプだった。
『内緒ね!』
田中は私にそう言うと、更衣室で制服を着替えてからそそくさと荷物をまとめはじめました。
でもやはり、ドアの前の女性が気になってしょうがない。
田中には、恋人が来て舞い上がっていたので、女性の話はしませんでしたが。
一人残されるのはさすがに怖かったので、自分も狭い部屋で着替えていると、駅員室から聞こえてきた
『ギャー!!』
という叫び声に驚き、私はすぐ更衣室から飛び出しました。
『どうした?!』
田中の恋人がうずくまって泣いていたのです。
『えっと…俺はわざと見ないようにしてたけど、こいつ見ちゃったみたいで…』
田中が指差す先には、モニター。
『電源落としてなくてごめんな…。』
『いや、大丈夫…。とにかく早く駅から出よう…』
田中がモニターのスイッチを切り、仕事を終えた私たちは駅を後にしました。
次の日、駅長や掃除のおばさんたち数名に昨日のことを話したのですが、信じてもらえるどころか朝一に駅長から注意を受けました。
『モニターの電源が入ってたのはどういうことだ?』
昨日、確かに田中が電源を切り駅員室を出たはずなのですが…。
そんなの言い訳にもならない…。
私と田中が震えている理由は、私たちしか知らない。
『俺、絶対消したよな…?』
小声で話し掛けてくる田中の真っ青な顔を見るだけで恐ろしかった。
怖いってもんじゃないので、あの夜は無かったことにしています。
長い話を聞いていただき、ありがとうございました。
ちなみに、田中はあの時の恋人さんに尻に敷かれちゃってます。
面白い亭主ですな。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話