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短編2
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早歩きの男

早い、とにかく歩くのが早い。

今朝、一番最初にこの男を見たのは新宿の街中だった。

俺は、盆休みを利用して実家に帰る為に車を運転していた。

新宿駅の東口で、ふと目に留まったその男は、信号待ちをする俺の車の前を早歩きで通りすぎて行った。

歳は40代位だろうか?

テクノカットで、少し色褪せた半袖シャツに大きめのリュックサック、浅く被った写真家の様な帽子、それに何故か作業ズボンという出で立ちで結構目立っていた。

次に俺がこの男を見たのは、都内を抜けて国道6号に入った頃だった。

まあ、都内は渋滞がひどくて車がほとんど進まない状態だったから、電車とかを使ってたと考えれば、別にそこにあの男が居ても不思議じゃない。

それにしても、相変わらずの早歩き…

一本道の国道6号の渋滞もひどくなってきたので、俺は柏インターから高速道路を使った。

途中で休憩することもなく、時速130キロ程で一気に茨城県の那珂インターまで車を走らせた。

時間にして約1時間弱だったと思う。

高速道路を降りて一般道へ出た俺。

…!!

背筋に冷たいものが…、というより気持ち悪かった。

あの早歩きの男が、前の歩道を歩いている!!

何で!?

都内だったら車よりも人や自転車が早いことがあっても頷ける。

が、こんな田舎じゃまずあり得ない。

電車は30分に一本程度しか通っていないし、第一この道のそばには電車の駅は無い。

一応、最寄り駅は有るが、最寄りと言っても歩いて2時間はかかる距離。

俺は、なるべくその男の方を見ないようにして歩道越しに男を追い越す。

一時間程道なりに走って間もなく実家という頃。

…!!!!

また居る。あいつが居るよ!!早歩きで、早歩きで俺の車の横を歩いてるよ…。

時速60キロ。

汗ばんだ白い顔で車の窓の外から俺の事をみている。

キモイ!おっさん、キモすぎる!!

そんなことを思っていると、何故か閉まっている窓越しに外を歩く男の呟く声がはっきりと聞こえた。

「君は、この辺に住んでるんだね…。ウフフ…」

俺は思いっきり顔をしかめてその男をシカトしたまま、車のスピードを上げた。

ふん、これで付いて来れんだろ。最近の外車の性能を思い知れ(?)、とか思いながら無事に実家に到着。

その日の夜だった。

庭先で誰かの足音がしていた。

…まさか!?

そのまさかだった。

あの早歩きの男が俺の車の側で何かしていた。

すぐに警察に通報。

だが、パトカーが来た頃にはその男は消えていた。

俺の車には何故か何枚ものテレクラのチラシが貼られていた。

おっさん、マジでいい加減にしろっ!!!

多分、幽霊だったのだが、そんな事なんかよりも、あのしつこさと気持ち悪さに怒りが収まらなかった。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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