初投稿です。長文乱文失礼します。
十年ほど前に友人から聞いた話をアレンジしました。
怖くなかったらすみません。
ある家にAという男が引っ越してきた。
玄関を入って正面の部屋がキッチン。
左手にはリビングがあり、右が寝室という小さな一戸建てだ。
安い家賃で人気の市営住宅だったので、ダメもとで問い合わせたところ運良く入居できた。
一人暮らしで荷物も少なかったため、新居の片付けは思いの外早く進んだが、早朝からの慣れない作業でAは疲れきっていた。
『細かい整理は明日にしよう』
切りのいいところで片付けを中断し、風呂を済ませて寝室へ向かう。
布団に入りウトウトし始めた頃、少し離れた所で電話が鳴った。
枕元の目覚ましで時間を確認すると午前1時を過ぎている。
『こんな時間に誰だよ…って、あれ?』
離れた所で鳴ったはずの携帯は目覚ましの隣にあり、鳴った様子はない。
それによく考えてみると…
聞こえたのは黒電話の音。
黒電話を使う家庭なんてもう殆どないだろうし、Aの家にも勿論ない。
『近所か?今時珍しいな。でも音がでかすぎだよ…ったく』
この時は気にも止めずAは再び眠りについた。
翌日、あらかた片付けが済んだところでAは近所へ挨拶に向かった。
『初めまして。昨日引っ越してきたAと言います』
「あら、初めまして。わからないことがあったら遠慮なく聞いてくださいね」
出てきたのは40代くらいのKさんという女性だった。
『(昨日の電話…。もしかしたらこの家かな)』
『あの、もしかしてKさんのお宅は黒電話とか置いてますか?』
「黒電話?いえ、うちにはありませんけど…。黒電話がどうかしたんですか?」
『あ、いえ。夕べ黒電話の音が聞こえたので懐かしいなぁと思って』
「そうなんですか。でも家の中まで音が届くなんて、よっぽど大きな音なんですね(笑)」
この後他の家の住人にも軽く話を聞いてみたが、黒電話を置いている家庭はないようだった。
その夜も電話の音が聞こえた。
『またかよ…』
Aは頭まで布団をかぶり音を遮って眠った。
しかし次の夜もその次の夜も…
黒電話は鳴り続けた。
『くそっ!毎晩毎晩どの家だよ…』
頭にきたAは外に出てどの家で電話が鳴っているのか確認することにした。
Aが外に出ると…
音は聞こえない。
どの家も灯りが消え寝静まっているようだった。
『(もう切れたのか?)』
そう思い寝室へ戻ると、やはり電話の音がする。
『(もしかして…この部屋から?)』
いてもたってもいられなくなったAは、寝室中を耳をすませて歩き回った。
『(どこだ?一体どこから…)』
テレビの下、タンスの後ろ、本棚の後ろ…
あちこち見たがそれらしいものは見当たらない。
電話はまだ鳴っている。
『あと残ってるのは押入れか?』
押入れを開けるが何もない。
しかし微かに音が大きくなった。
『押入れの…向こう?』
押入れの壁に耳をつけると、確かにそこから音がしているようだった。
Aが音の出所に気付くと電話は鳴りやんだ。
翌日Aは管理会社に事情を話し、押入れを調べてもらうことにした。
昨夜は暗くてわからなかったが、押入れの板の色が一枚だけ微妙に違う。
その板を剥がしてみる。すると…
板の向こうから現れたのは黄色いビニール袋と黒電話。
Aがビニール袋を手に取ろうとした瞬間、黒電話が鳴った。
突然の事に驚きながらも受話器をとると女の声が聞こえた。
「やっと出てくれた…」
するとビニール袋が倒れ、何か丸いものが転がった。
切断された女の頭部。
見開いた目でAを睨んでいた。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話