三十路直前の3年間、仕事のため朱鷺のいる島に住んでました。
島全体が心霊スポットだそうですが、霊感皆無の自分には、無関係だと思ってました。
ところが、暮らし始めて半年もしないうちに、人生初の金縛り。それからは、4ヶ月に一度のペースで忘れた頃に金縛り。
大抵、音が聞こえました。太鼓の音だったり、スリッパでフローリングを歩く音(和室なのに)だったり。
決して、目は開けませんでした。何かいたら怖いので。
一度だけ、目を開けてしまったことがあります。
その夜は、子供の声が聞こえました。
「…助けて、…助けて」
途切れ途切れの声が、次第にはっきりしていきます。
「助けて!」
「となりのおばちゃん、助けて!」
『おばちゃん』だと!?
20代女性(ぎりぎりだけど)に向かって、おばちゃん呼ばわりするのかあっ!
人外相手でも許せん!
思わず怖さを忘れて、目を開けました。
視線の先にいたのは、黒髪ショートヘア、群青の瞳で三白眼の、血の気の無い女の首。
呼吸も忘れて、見つめあうこと暫し。
そのまま失神。
気が付けば朝。
その後も、時々金縛りに遭いました。でも、耳元で笑われようと、重低音で怒られようと、決して目は開けませんでした。
開けたら、何かいるとわかったので。
本州に転勤してからは、金縛りに遭うことはなくなりました。
流刑地の力、恐るべしです。
怖い話投稿:ホラーテラー やのさん
作者怖話