今から2年前の6月、自分の所轄の精神病院から一人の患者が自分の父親を刃物で刺し、逃げるという事件がありました。
無線で連絡がありましたが充電池が切れてしまい、最後まで聞けませんでした。
同地区を警邏中、1人の女性を見つけたので、
「この辺は、物騒なんで早く帰ってください」
と、不安を与えないよう言うと、女性は振り返りました。
左手には血まみれの包丁を持ち、目はサメのような目をしてました。
そうです。男性だと思っていた被疑者は、女性だったのです。
信じられない力で殴られた私は、頬骨を割るという重傷を負い、その後駆けつけた二人の警官と私の3人がかりでやっと取り押さえました。
私は両肩を押さえ、顔の側に自分の顔を近づけた時、その女はこう言ったのです。
「わかったよ。この女の体は、諦めてやるよ・・・」
私は「誰だ・・・お前?」 と言いました。
すると女は「インだよ・・・」と言いました。
後日、以前お話した新野さんにこの事を話すと、
「俺が扱った殺し、麻薬でインを名乗った奴は、四人いたな」
と言いました。
その後「・・・同じ奴かもな。 まだ、やりたりないのか・・・」とポツリ。
女性ですが、衰弱死したそうです。
後で、『イン』について気になり、新野さんに連絡をとったところ、新野さんは、
「色々聞いてみると被疑者だけでなく、自殺者のなかにも遺書のなかに『イン』の名 が書いていた奴がいるらしい。もちろん、こんなこと書類には書けないがな・・・」
とのことでした。そして、
「お前ももう奴には関わるな。あいつは刑法が適用されないぶん警察の手には負えない」
と言いました。
今、『イン』を知っているのは、私と新野さんだけです。
他の警官は、錯乱した状態の産物だと思ってるみたいです。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話