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中編4
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大戦末期の話。

広島にとても美人で評判の娘がいた。

艶やかな黒髪で目鼻立ちの整ったその顔は

戦時下の殺伐さを和ませてくれるようだと近所でも評判だった。

ちょっとした近所のアイドル的存在だった。

戦争が終わったら舞台女優になりたいと将来の夢を語る

明るい娘だった。

ある夏の日、悲劇は起こった。

8月6日、広島、原爆投下。閃光の後、大爆音。

娘は何が起こったのかわからなかった。

気がつけば、家の中にいたのに外に放り出されている。

自分が住んでた家は倒壊し、炎上していた。

あちこちで「助けてくれ」「逃げろ!」という声。

火の手が迫ってきたので、娘も無我夢中で逃げた。

そして時間が過ぎた。

娘は、緊急避難所の小学校にいた。

次々と運びこまれる人。火傷を負った者や髪の毛の抜けた者

まさに地獄絵図だった。

娘も火傷を負ったらしく、ヒリヒリしていたが

医者もてんてこ舞いで、他の人のほうがとてもじゃないが

悲惨な状況だったので、それに比べると自分はまだ大丈夫な

ほうだと思って、おとなしく順番を待ちつつ、

看護を手伝ったりもしていた。

しばらくして、足に負傷を負った子供が運び込まれてきた。

怪我が痛むのか、泣きじゃくっていた。

娘はその子供をなだめようとして近づいた。すると子供は

「ウェーン!みんなお化けじゃー!お化けじゃー!」

「母ちゃんもお化けになって死んでしもうたー!」

といって泣きやまない。

よっぽど地獄を見たんだろうと娘は涙して、

その子をあやめた。のだが・・・

「ウェーン!お姉ちゃんもお化けじゃー!怖いよー!」

娘はハッとして鏡を探した。

そういえば体以上に顔がヒリヒリする。

ヒリヒリするくらいなので、大した事はないだろうと

我慢していたのだが・・・。

そんな場所だから、鏡などなかなか見つからない。

やっとの思いで洗面所の砕けた鏡の破片を見つけて

自分の顔をうつした。そこには・・・・

ケロイドになり醜くただれた自分の顔があった。

あの、綺麗で近所でも評判のよかった自分の顔が・・・

「アアアアァァァァァァァァ!!」

娘はショックで泣き叫びながらその場にうつぶせ

頭を掻きむしった。

が、手を見ると自分の髪の毛がごっそり抜けていた・・・

自慢だった髪の毛がどんどん抜け落ちてゆく・・・

「私の顔がァァァァァ!髪がァァァァァァ!

 ・・・ァァァ・・アハハハハ!・・・キヒヒヒヒ!」

娘はそこから笑いながら走り去っていった・・・。

数ヶ月後。

戦争も終わり、人々は終戦の混乱に必死で生きていた。

とある広島県下の農家の出来事。

そこの主人が、夜寝ているとき、天井でなにやらゴソゴソ

這いまわる音がする。

ネズミか何かだろうと思って気にもとめずに寝入った。

翌朝、いつもは早起きの自分の娘が起きてこない。

珍しいなと思い、娘の部屋に起こしに行くと・・・

そこには、顔をめちゃくちゃに刺された娘の死体があった。

件数こそ少ないが、何件かこの奇妙な殺人事件は起こった。

警察も調べてはいるが、戦後間もない混乱期のこと、

なかなか手が回らないというのも事実だった。

その中で、目撃者の男が一名上がった。

夜中に必死の形相で逃げたところを保護されたらしい。。

その目撃者の証言によると

夜中、何かの物音で目が覚めた。

天井のほうから、ズッ、ズッと這うような音が聞こえる。

これまたネズミか何かだと思ったという。ネズミが天井にいる

ことなど別段めずらしくもないことだった。

しかし、それからが何故か寝付けなかったという。

しばらくしてなんとか眠ろうと思い、目をつぶっていた。

すると何やら「トン」と物音がして、何かいる気配を感じる。

何だろうと思ってふと目を開けて隣をみると、そこには・・・

月明かりに照らされて、顔が溶けてただれた人間が

手に刃物を持って

「いひひひひひひ」

と笑いながら立っていた。

襲ってきたところを布団を放り投げて逃げおおせたそうだが

男はそこまで話すと恐怖で顔が引きつって青ざめていた。

警官が同行して家に戻ってみると、男が飼っていた犬が

顔をズタズタにされて殺されているのが発見された。

それっきり事件は起こらず、犯人も捕まらずに

この事件は迷宮入りとなった。

戦後今も、未だ犯人は捕まっていない・・・・。

怖い話投稿:ホラーテラー 琴乃 何故引退した!さん  

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