これはホラーでも怖い話しでもありません。
実際にあった哀しいお話しで、本当に怖いのは人の心だということを伝えたいお話しです。
今からだいぶ前のことです。
ある女性が一人の男性に恋をしました。
女性は以前、恋をしていた男性に振られ、ひどい大失恋をしてしまったため、恋にトラウマをかかえ、男性に対して奥手になった女性でした。
そんなある日、女性の心をひらく男性があらわれのです。
彼は誰に対しても親切で、気さくに話しかけては人の悩みや愚痴にそっと耳をかたむけ、優しく受け止めてアドバイスや励ましをくれる男性でした。
そんな男性に女性は恋をしたのです。
もう自分は恋をしないと誓い、愛することを封印していたはずなのに、
気付けば男性の顔を見るだけで心が和み、話してる時間が一番幸せで、いつのまにか彼を求めていたのです。
それでも、トラウマを持った彼女は、男性に想いを伝えることが出来ず、それどころかあの嫌な記憶がよみがえり、フラれるのを恐れて自分から男性に拒否するようになっていました。
そんななか、いつものように彼女を励ましてくれたのは彼女の大親友である女性でした。
親友は故郷の町におり、離ればなれに暮らしていますが、毎日連絡を取り合い、しょっちゅう彼女のもとに会いに来てくれます。
そんな親友の励ましや、拒否していても気さくに話しかけてくれる彼の優しさに心をひらき、
ついに彼女は男性に想いを伝えたのです。
それから数ヶ月、彼女はこの上ない幸せの日々を送っていました。
なんと彼女は男性とお付き合いすることが出来たのです!
告白をしてからは、毎日愛する男性と過ごし、心が軽くなった彼女は、オシャレやファッションを楽しみました。
日に日に綺麗になる彼女に彼も喜び、彼女のために彼も尽くすのでした。
親友も彼女の幸せな姿に喜び、彼女との仲もどんどん深まるのでした。
そして1年が過ぎました。
その1年は彼女にとって人生で一番幸せな時でした。
しかし、1年が過ぎたある日、彼女の体に異変が起こったのです。
それは、彼と行った1年記念日を祝う海外旅行から帰ってきてからでした。
はじめは、なんとなく気分がすぐれす、気持ちが悪い程度だったのに、目まい、吐き気、立ちくらみが頻繁に起こるようになり、日に日に体が悪くなっていったのです。
病院へ行くも、原因は不明。
旅行先で何かに感染した疑いがあるかもしれないと検査するも分からずじまいです。
医者は入院をすすめましだ、彼と少しでも多くの時間一緒にいたいため、彼女は断り、家で休むことにしたのです。
薬も貰いましたが、一向に効かず、それどころか日に日に悪くなり、しまいにはベッドから起きあがるのも辛くなりました。
彼女の親友はしょっちゅう看病やお見舞に来てくれました。
彼も用事がある以外は出来る限り彼女の看病をしました。
それでも良くなることはありません。
そしてある日彼女は親友が看病をしている時に言ったのです。
「ねぇ•••私ね、こんな体だけど、ちっとも不幸じゃないの。だって•••大好きな彼と、親友のあなたがいつもそばにいてくれるから。私、この世界で一番幸せだと思う。ほんとうに•••ありがとう」
「ちょっとやめてよ~。なんか死んじゃうみたいじゃん! 絶対死なないから安心して、だから早く元気になってさ。また遊びに行こう!」
「•••そうだね。早く元気にならなきゃ。私には彼もいるんだもんね。頑張らなきゃ•••」
「のろけ話し〜?ずるいなぁ!今日は彼•••来ないの?」
「うん、仕事みたい。でも大丈夫!彼はいつもそばにいるから。•••ほらこれ、このネックレス。彼に記念日で貰ったの。旅行先で買ったんだって。初めてのプレゼントだから嬉しくって。だからこのネックレスをしてると元気が出てくるんだ。」
「優しいんだね~。いいなぁ。私も彼みたいな彼氏が欲しいなぁ」
「だぁめ!あげない」
「わかってるよ~!まったく」
「はははっ…」
二人がその会話をした次の日から彼女の容態はますます悪化していきました。
そしてとうとうその日が来てしまったのです。
彼女は親友に
「い、今まで•••幸せだった。ほんとに•••••••ありがとう」
「ば、バカ!!、なに言ってんの!!!変なこと言わないでよ!!」
「あ•••あと、彼に伝えて••••。ずっと••••愛してるって」
「やめて!自分で言いなさいよ!!」
「わ•••わたしが死んだら、彼に、好きな人が出来たら••••その人と幸せになってって伝えて。あなたの幸せを願ってるって•••••でも、最期に•••••もう一度会いたい…」
「ちょっとなに弱気になってんのよ!••••し、し、しな••••死なないでよ!いま、彼に連絡してるから!!」
しかし、彼が到着する前に彼女は息を引き取っていきました。
親友はずっと泣きつづけ、彼も最期に会えなかったことに悔やみ、泣いてお別れを言ったのです。
後日、親友は彼女の両親に呼ばれて自宅を訪問しました。
そこで、信じられないことを告げられたのです。
「あの子の死んだことに納得がいかず、調べてもらったのです。そしたら原因がついに分かったのです。」
両親はすっと親友の前に診断書を渡したのです。
「死因は放射線障害でした。トリチウムという放射線を体に取り入れ続け、死んでしまったのです。」
父親の話す横で母親はずっと嗚咽を堪えながら泣いていました。
「放射線って…その…なんで放射線なんかを取り続けてしまったのですか…」
「あの子のしていたネックレス。あれが…放射線物質で作られていたのです。」
「その…ネックレスって…」
そうなのです。
彼女がしていた彼からもらったプレゼント。あれが原因だったのです。
実は彼は浮気の常習犯で、彼女からの愛に飽き、違う女と浮気をしていたのでした。
それだけでなく、彼女の過去や愛を知ったいるため、バレたりすると厄介になると思い、別れる口実を探していたそうなのです。
そこに悪知恵のはたらく浮気相手にそそのかされ、手を汚さず殺すことを考えたのです。
あの日、彼女の亡くなった時、彼は仕事なんかではなく、女と遊んでいたのでした。
彼は事件性があるとみて警察から取り調べを受けましたが、海外で分からず買ってしまったと言うだけで、証拠もないために不起訴となってしまいました。
親友は怒りに燃えましたが、殺した事実がないために何も出来ず、ただ、彼女に謝ることしか出来ませんでした。
なにも知らない彼女は、最期まで愛する彼を想い続けたまま息を引きとったのです。
亡くなった彼女の顔には涙が流れており、最期の最期まで彼を想うかのように、あのネックレスをかたく手で握っていたのです。
怖い話投稿:ホラーテラー kさん
作者怖話