大学を卒業すると地元を離れて一人暮らしを始め、やっとの思いである会社に就職したはいいが、
いつも残業や仕事に追われる日々で、その割には給料も安く、大変な毎日を送っていた。
そんな頃に体験した話。
その日も、ようやく仕事が片付いて、家に到着したときはもう夜の12時を過ぎていた。
風呂に入り、早く寝れるようにビールを飲むと、
明日も仕事が待っているのですぐに床についた。
電気を消し、目を瞑った。
いつもなら疲れていてすぐに眠れるのだが、その日は違った。
目を瞑ると、明日の仕事の事がまぶたの裏に張り付く様に思い浮かんでしまい、なかなか眠ることができない。
俺「明日は今日残業してまでやった大事な書類の提出だな・・・。ミスをしてなければいいが・・・。」
という事などを考えていたりしていると、逆に目が冴えてしまった。
あまりにも目が冴えて、もういくらよこになっても到底眠ることなどできないと気づき、
気分転換に夜の散歩でもするとこにした。
玄関から出る前に腕時計を確認すると、時間は深夜2時10分を回っていた。
季節は夏だったので、夜といえどかなり蒸し暑かった。
小さめの懐中電灯を手に持ち玄関から出ると、それでも涼しげな風が時折吹いて、心地よかったのを覚えている。
外に出ると辺りは電灯の明かりのみで、電灯の周辺以外は自分の姿さえも見えないほどの濃い暗闇だった。
懐中電灯を点けたが、それでも暗く感じたほどだった。
近くにある八木崎公園まで歩いて、それから家に帰ることにした。
何も考えずに無心のままゆっくりと歩みを進めていた。
深夜の夜道というものは何だか不思議なもので、昼間はよく人が歩いていたり他の家々から子供たちの笑い声が聞こえたりと、とても賑やかだったのに今は完全なる静寂に包まれている。
寝てるからだろうといわれてしまえばそれまでだが、昼間とのギャップがあまりにもありすぎて、何か不思議な気持ちになった。
かれこれ10分近く歩いただろうか。
もうすぐ公園に着くだろうという時に、前方の暗闇から大人の声と子供2人の声が賑やかに聞こえてきた。
大人のほうは父親なのだろうか。
子供たちと楽しく話している。
父親「そうだなぁ、ハハハ」
子供「ねー、それでさ、ユウジがさぁ」
子供「ほんとかよ?アハハハハ」
深夜のこんな時間に子供が歩いているなんて不審におもったが、
大人がついていたのでそれほど不思議でもなかった。
声は段々と近づいてきた。
子供「だってさーあいつあそこでこけるんだもん。笑っちゃうよ」
子供「だねー。アハハハ」
父親「ハハハハ」
ただおかしなことに、暗闇の中でよく分からないのもあるが、
前方にあるのは声だけで人がいる様な気配がまったく感じられなかった。
声が俺の目の前まで来たとき、ピタリと話し声がやんだ。
俺は声のあるほうに軽く会釈をしてみた。
俺「こんばんわー」
生暖かい風が俺を横切った気がした。
すると後ろのほうでまた笑い声が聞こえ始めた。
子供「アハハハハ、すごいねそりゃ」
子供「まあね」
父親「やるじゃないか、ハハハ」
ムッとした俺は懐中電灯をその親子の方に向けた。
向けると同時に、親子の笑い声がピタリと止まった。
曲がるとこなどない一本道のはずなのに、後方には何もなかった。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話