去年の忘年会の帰り道。
最終電車で、駅に着いたのは、12時を回っていた。
駅から自分の家までは、2キロほどある。
バスはもう無く、タクシーも考えたが、酔いざましに歩くことにした。
千鳥足で家路に着いたのだが、足が思うように動かない。かなり酔ってしまったらしい…
(やっぱりタクシーにすれば良かった…)
まだ半分も来てないのに、頭の中は後悔ばかりだった。
夜でも車通りの多い交差点を過ぎ、家まで続く長い坂を上って行こうとしたその時、歩道の縁石に座っている男の子を見つけた。
小学一年か二年生くらいだろうか?
下を向いて座っているのだった。
こんな夜中に、男の子が一人でいるのに違和感を覚えて、何気なく男の子に問いかけた。
「こんな時間に、どうしたんだい?」
男の子は、ゆっくり僕の方を見上げた。
どうやら泣いていたようだ。
寂しそうな顔を、手で拭いながら、男の子は答えた。
「父さんと母さんを待ってる…」
両親を待ってるのか…カギでも無くしてしまったのだろうか。
しかし、こんな寒空の中、長い時間いたら風邪をひいてしまうだろう。
「両親は、いつ帰ってくるのか分かるかい?」
男の子に尋ねたが、分からないようで、首を横にふった。
困った事になった…
男の子をこのまま放っておけない。
どうしたものかと考え込んでいると、男の子が急に立ち上がった。
「来た!父さんだ!」
向こうからくるヘッドライトを指さして、男の子は言った。
(良かった、これで大丈夫だ。)
車の中から、父親らしき男が降りてきて、子供を抱き上げた。
「ごめんなトシカズ、母さんは来れないけど父さんと行こう。」
男はそう言うと、子供を自分の車に乗せた。そして、僕に言った。
「どうもすみませんでした。遅くなってしまって…
あなたも乗って行きますか?」
僕は、すぐ近くだからと断った。
男の子は車から手をふりながら去って行った。
気が付くと、僕は病院のベッドに寝ていた…忘年会の帰り道に、転倒して頭をぶつけ、3日間、昏睡状態だったらしい…
そして、あの夜の同じ時間に交差点で事故があり、幼い子供と父親が亡くなったそうだ。奇跡的に母親だけは、一命をとりとめたらしい…
車に一緒に乗って行ったら…
どうなっていたかは分かりません…
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話