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中編3
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心霊タクシー

昔、私の父から聞いた話を投稿します。

父は昔から知識が豊富で話も面白く、私達姉妹はよく色んな話を聞かせて貰いました。

もちろん怖い話もよくしてくれました。

その中で私が1番怖かったのがこの話です。

当時、父は大学生2年生で夏休みの真っ最中。その夏休みを利用し、(現在私も住んでいる実家)に帰ってきたそうです。

久々の地元という事もあり、友達のアパートに5、6人を集め飲み会が開かれました。

飲み会と言っても父は今も昔も筋金入りの下戸で、一滴も呑んでいないのですが、友人も多く、人付合いの良い父はよく飲み会に参加していたみたいでした。

夜もふけり、そろそろお開きにしようとした時、

さすがに狭いアパートで大の男全員は寝れないという話しになり、素面で比較的家が近かった父が友人の一人と共に帰る事になったそうです。

うちの地元は今でこそコンビニやスーパーが建っていますが、当時は田んぼだらけで民家も疎ら。しかも街灯も無く、父達は借りた懐中電灯だけで家まで帰ったと言います。

しばらく歩いていると…道の向こうから車がこちらに走って来るのが見えてきました。

(こんな夜遅くに珍しいな)

と父が思っていると、

どうやらその車はタクシーのようでした。

タクシーはかなりゆっくりとしたスピードで父達に近づき、それに気付いた父の友人も

「お、タクシーなんて珍しいな。あれ乗って帰るか。」

父「何言ってんだ、ウチももうすぐだし、それに人が乗ってるみたいだ。」

そう、よく見るとタクシーの後部座席には確かに女の人が乗っていました。

そうしてる内にタクシーが父達の横を通り過ぎた瞬間、父は物凄い寒気のようなものを感じ、

絶対に通り過ぎたタクシーを振り返って見てはいけないという衝動にかられたと言います。

そして自分の横を覚束ない足どりで歩く友人に手を貸し、忠告しました。

父「……おい、黙って俺の言う事を聞け。絶対に後ろを見ないでそのまま歩け。」

その父の気迫にただならぬものを感じたのか、お酒が入っている友人もただただ頷いて父にひたすら付いて行きます。

普通なら歩いて15分くらいで着くはずの距離なのに、この時ばかりは1時間も2時間も歩いているような感覚だったと父は言います。

いくらかも歩いていない間に、また前方から車がやって来るのが見えました。

なんと先程通り過ぎたばかりのタクシーがまた前から走って来るではありませんか。

父達の歩いている道は一本道で周りは田んぼだらけ。Uターン出来るような脇道もありません。

言い知れぬ恐怖が父達を襲い、絶対にタクシーを見ちゃいけない!と互いに目で合図し、タクシーが横を通り過ぎるのを待ちました。

タクシーは先程と同じようにゆっくりと近づき、

そして今にも停まりそうな速度で父達の真横まで来た時―。

あんなに見てはいけないと思っていたのに、父達は見てしまったのです。

タクシーと

その後部座席に座っている女を。

女は父達の方をゆっくりと向き、

静かにおじぎをして笑いかけました。

「「……うわあぁああ゛っ!!」」

それを見た瞬間、父達は叫び声を挙げ、無我夢中で家まで走りその場から逃げたと言います。

「…お父さん、その話怖く無いよ?だって女の人、笑っておじぎしただけじゃん。」

「うん、でもその女の人な……

真っ黒い目玉で、顔が半分無かったんだ。」

今でも父はあの時、反射的におじぎを返さ無くてよかったと言っています。

怖い話投稿:ホラーテラー 山海さん  

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