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短編2
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呼ばれる

野球部の元部員の健太、和樹、直也と元マネージャーの真美は、高校卒業後も頻繁に会って遊んでいた。

別々の大学に通っていたが、冬休み中に、日帰りでスキーに出掛けることになった。レンタカーを借りて交替で運転することにした。

和樹がハンドルを握っていた時のことである。スキー場の近くまで来たところで突如雨が降り出し、次第に雨脚が激しくなった。

「ワイパーが効かないや。前がよく見えない」

「気を付けてくれよ。こんな崖の上から落ちたら、洒落にならないからな」

その時、対向車のライトが目に入った。和樹は必死でハンドルを切った。対向車と接触することはなかったが、勢い余って車は崖から転落した。

「真美! 真美!」

誰かが呼んでいる。海で泳いでいたような気がしたが、夢だったのだ。目を開けると、直也と和樹が心配そうに覗き込んでいた。

「良かった。ずっと眠ったままだったから、心配したよ」

「ありがとう。呼んでる声が聞こえて、目が覚めたの」

そこまで話して、真美は周囲を見渡した。

「ここは病院なの? 健太はどこ?」

「駄目だった。残念だけど」

と、首を横に振りながら和樹が答える。

「そんな…」

ショックで言葉が続かない。和樹と直也にはまだ言っていなかったが、真美は先月から健太と交際していたのだ。これからの人生を健太と一緒に歩みたいと思い始めていた。真美の目から涙が溢れる。

トン、トン。

窓をノックする音が聞こえる。と同時に、健太の声が聞こえてきた。

「真美! 僕だよ。ここを開けて顔を見せてよ」

「健太なの? どうして、ドアじゃなくて窓なの? ここは何階?」

信じられないという面持ちで真美が呟く。

「耳を貸しちゃ駄目だ。健太は、こちらの世界の人間じゃないんだよ」

以前から霊感が強いと自分で言っていた直也が眉をひそめて囁く。

「真美! 真美! ここを開けるんだ!」

健太の声とノックの音が次第に大きくなる。

真美はふらつく足で窓に近寄った。

「窓を開けちゃ駄目だ!」

「あちら側に持って行かれるぞ!」

直也と和樹は必死に止める。

「いいの。私は健太と一緒にいたいの」

真美は窓を開けてしまった。

「良かった。ずっと眠ったままだったから、心配したよ」

「ありがとう。呼んでる声が聞こえて、目が覚めたの」

頭を包帯でぐるぐる巻きにした健太が微笑んでいた。ベッドの上の真美も包帯だらけだ。

「私、死んだの? それとも生きてるの?」

健太と一緒にいられるのなら、どちらでも構わないと思った。

その時だった。

トン、トン。

窓をノックする音が聞こえてきた。

【完】

怖い話投稿:ホラーテラー テッコさん  

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