■シリーズ1 2
親戚から父が倒れたという知らせがきたのです。
母を無くして以来、程なくして親戚に預けられた私は父と会うのは週末くらいしかなかったのです。
兄弟のいない私にとっては大切なたった一人の家族です。
私は仕事を休み田舎へ帰りました。
父は既に入院していました。
駆け付けた私の顔を見て微笑んでいました。
私は今までの出来事や近況を父に報告しました。
お母さんが死んで辛かった事、本当は親戚の家じゃなくてお父さんと二人で暮らしたかった事も話しました。
親子水入らずの時間を久しぶりに味わい心なしか父の顔色も良くなり元気になっていたようでした。
父の所に泊まりたかったのですが病院のシステム上出来ないという事もあり、その日は親戚の家に泊めてもらいました。
次の日、父の所へ行き私はまた昔の話をしました。
その時、忘れていたあの村の記憶が甦り、私は父にあの村であった出来事を話しました。
父はその出来事を母から聞いて知っていました。
そして父から幻の村の真相を教えてもらいました。
父がまだ子供の頃、その村は実際に存在していたそうです。
父もその村に遊びに行った事もあり、友達も住んでいたそうです。
話を聞くとお店や学校も私が見た物と同じのようでした。
父の家は貧しく学校に通う事は出来なかったのでその村の学校に通う友達から勉強や遊びを教わっていたので頻繁に村へ遊びに行っていたそうです。
ある日、激しい風と雨が降った時に突然、大規模な山崩れがおきたそうです。
小さなその集落は両側の山からの土砂に埋まり生存者は殆どいなかったそうです。
父は土砂で泥まみれになった集落を森の上から見たけどのどかな村は跡形もなく消えていて湿った土の臭いだけが漂っていたそうです。
それから村の跡地に慰霊碑が立てられたそうですが台風が来る度に壊れてしまい今では慰霊碑を立てる事もなくなっていました。
そして、その村はいつしか忘れ去られて行ったのですが、その当日近所に住んでいた子供の何人かが私と同じ体験をしていたそうです。
しかし、その子供達は幻の集落を見つけた後に不治の病にかかり亡くなったそうです。
それは、決まって台風の過ぎた後に村を見るそうです。
いつしか、父の住む村では台風の後には森へ入ってはいけないと語り継がれるようになったそうです。
私が集落を見つけたのに病気にもかからず今元気に生きているのは母が身代わりになったからと聞かされました。
突然、神社に連れて行かれた時、必死に拝んでいた姿が思い出されました。
母は次の日から昼間に集落の跡地へ行ってはお供えをしたり子供を連れていくなら変わりに自分の命を差し上げますと拝んでいたそうです。
父は神社へ行き毎日私と母の無事を祈ったそうですが母が亡くなる前に、
『私もあの村見たの。だから私が死んだらもう平気だよね?』
と父に話したそうです。
私は何も言えなくなってしまいました。
ただ涙が流れるだけでした。
父の容態も回復したようなので私は会社の寮に戻り、仕事を再会しました。
あの集落の事も父から聞いた話しも忘れようと必死でした。
そして、父は退院する事はなく息を引取りました。
葬儀の後に遺品の整理があったので親戚達と一緒に久しぶりに実家に向かいました。
玄関には泥団子が置いてありました。そう言えば母の亡くなった時も玄関に泥団子が置かれていた事を思い出しました。
泥の状態からして作ったばかりの物だと思いました。
叔母に泥団子の事を聞くがその様な風習もないし、誰が作ったかも解らないと言われました。
気持ちが悪いから処分しようと玄関にでると先程の泥団子はカラカラに干からびて崩れていました。
さっきまでドロドロだった団子がものの数分でこんな状態になるはずがありませんでした。
叔母に幻の集落の話をすると父も亡くなってしまったし、これ以上おかしな事が起こると大変だから片付けが終わったらすぐに寮に帰るように。
そして、二度とこの村にも帰って来ない方が良いと言われました。
私は片付けもろくに出来ず荷物をまとめて村を出て行く事にしました。
その後、私の身には何も起こる事はありませんでした。
しかし、それ以降は仕事に打ち込んでいても何をしてもあの幻の集落が頭からはなれなくなってしまいました。
忘れたはずの子供達の顔まで鮮明に思い出され夢にまで見るようになりました。
ぬかるんだ村で子供達と一緒に泥団子を作り私の家の玄関先に置きに行くと、親戚達ともう一人の私がやって来て家の中を片付けている。その様子を子供達と窓から覗いているという夢を何度も見ました。
私は疲れているのだと思い病院に相談をし安定剤を飲むも効果はありませんでした。
それから寮の近くにあるお寺に行き相談をしに行きました。
住職の話だと、その夢は亡くなった父が家に呼び寄せているとの事でした。
親戚の方と一緒に一度、元住んでいた家に行って家を見てきなさいと言われました。
親戚に連絡をしましたが私が村に帰る事を頑なに拒みました。
私は一人で実家に向かう事にしました。
久しぶりに見る村は以前と何も変わっていませんでした。
私の実家も健在でしたが雑草が生え、老朽化が進み、見るからに人が住んでいない事がわかる程荒れていました。
裏手にある勝手口の扉は壊れていて中に入る事が出来ました。
家の中には家具も一切なく広々としていました。
天井にネズミがいたのかバタバタと音がして砂の様な物が降ってきました。
湿った空気と埃っぽさに耐えられず窓をあけるとそこにはあの時と同じ泥団子が置いてありました。
まだ新しい湿った泥団子でした。
私はとてつもない恐怖感に襲われ情けない事にその場を立ち去り、親戚の家に逃げ込みました。
叔父と叔母は勝手な事をするなと怒っていました。
そしてあの家を解体して更地にすると言いました。
私はどちらが正しいのかわかりませんが私の手に追える問題ではないと思い、全て叔父に任せる事にしました。
夢は相変わらず続いていましたが…慣れというのは怖いものでして。
いつしか、またあの夢か…位にしか思わなくなっていました。
月日は経ち、私は叔父が亡くなった為、実家の隣町まで行きました。
叔母に挨拶に行くと
『お前のせいだ…全部お前のせいだー。お父さんを返えしてよー。』
と鬼の様な形相で私に迫ってきました。
私は訳も分からず立ち尽くしてしまいましたがお線香だけあげてその場を立ち去りました。
どうして私のせい?と理由を聞けば良かったのですが叔母の変わり果てた姿に言葉を失ってしまったのです。
心残りでした。最後に振り返り深々と頭を下げた私の足元には泥団子が転がっていました。
私は再度、寺に行き住職に相談をしました。
墓参りに行くと良いとか、実家の跡地に線香をあげると良いとか…言われた事は全てやっていますが子供達の夢は今も続いています。真相は謎のままです。
お話は以上で終了となります。
皆様のご期待に応えられるお話ではなかったとは思いますが長い話を読んで下さってありがとうございました。
また、おかしな事が起こりましたら投稿します。
私と同じような経験者の方がいましたらご意見お待ちしております。
■シリーズ1 2
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話