※新作ではなく番外編。怖い歌?の歌詞紹介。長文です。
【未来世紀日本】
自分の記憶が自分のものじゃないなら 存在なんてまるでただの映像みたいだ はじめての場所でふと感じる懐かしさ 最近見るのは同じ夢ばかりだ
太陽はなぜか透明で暖かく 退屈な午後は俺に妙にやわらかく 当たり前の様に鳥や虫が鳴き花が咲く 女の鼻歌が耳をからかう
2089 蒸し暑い12月中旬 二週間以上酸性雨が降り続く 錆付く大気安定装置のせいで空中ポリスを一歩出ると空気は薄く 空腹を癒すには十粒のカロリー吸収剤、人工フルーツジュースで十分
バスルームに映る世話好きなパーソナルニュースシステムと 湯に浸かりながら会話する 人類は遂に使用済みな月の次は どうやら木星の開発に手を出す気だ
見向きはしない、もう文明は地球には 既に大地はガレキと後悔の住みか 当然の報いかあるいは代償の罪か どっちにしろ科学は進歩しすぎた
最後に雪が降ってから八年が過ぎた クリスマスにいつしか夏が住みついた 国境がなくなり進むボーダレス 大陸ごとに一つの連邦となってる 通貨統合で円の時代は終わってる 中華連邦の一部に日本は組み込まれる
俺は手術まで請け負うDNAディーラー 主に扱うのは記憶中枢遺伝子だ 行き詰まったこんな荒みきった現状じゃ 過去への記憶旅行は一種のはやりだ
三日目に覚め痛み依存性はなしさ 今よりもマシな時代を選んで楽になりな 非合法でやってるんで注文の際はオマエ自身も用心してくれれば幸いだ
パスワードはFブロックに五台あるEメールBOXの真ん中の台の裏に書いた そのナンバーにF.R.E.E.と書き足したコードKが俺の端末直通ダイヤル 中央情報部がいつも俺をつけ狙っている 用意された懲役は250年分
ヘブンランドという名の収容施設 つまり水星の鉱山採掘に送られる 自由という言葉は死語に成り下がり 大衆は総番号制の監視下に 明日にはまた新たな終わりが始まり スモッグの中を同じ夢が垣間見る
太陽はなぜか透明で暖かく 退屈な午後は俺に妙にやわらかく 当たり前の様に鳥や虫が鳴き花が咲く 女の鼻歌が耳をからかう
俺は権力に手を貸していた 悪名高い軍直轄第三ホスピタル 何も知らず当時は全てがタブー 70年から始まったリモートボーイ計画 子供にロボトミー手術を施し 脳にチップを埋め込む恐ろしい試み
誰かが一昨年告発した通り 彼らは何も知らずに街の至る所に 完全に統制された社会を想定して 北○鮮モデルの改良型で 強制的に感情に上限を 旺盛な好奇心を押さえるために設けた
記憶が消えるという副作用を防ぐため 俺のセッションが架空の思い出を植え付ける 病室の風景は今も忘れず それ以外はいつの日か不思議と忘れる
今じゃ気まぐれや喜怒哀楽は高く売れる 無気力ウィルスから身を守ってくれる 毎日決まった時間に日が暮れる 表通りに集結する秘密警察 静寂が灯る全体主義の夜 人は蜂の巣のような狭いカプセルに戻る
密告の恐怖が互いの疑いを覗く 臓器ハンターどもが寝込みを襲う のしかかる重圧がいつまでも起こす 最終便に仲間と乗る行き先は 地下第六ステーション、通称希望の城 尾行を撒くためドアの閉まり際に降りろ
ゲートをくぐる聞こえるE2-E4. CGの月も全てが理想のシンボル 時効待ちの男、子孫探しの女 人種問わず入り混じる裏の心臓部 欲しいネタはいくらでも手に入る
タイタイフーン、ブッダホライズン、ブラウンシュガースライス 絶えず日常にはスパイスが不可欠 IQを上げるキューブリッククラシック
目一杯キマッた行きつけのシアターで 三日ぶりに眠りに捕まってしまった しばらく俺は起きようとしなかった そこでまた同じ夢を見たんだ
太陽はなぜか透明で暖かく 退屈な午後は俺に妙にやわらかく 当たり前の様に鳥や虫が鳴き花が咲く 女の鼻歌が耳をからかう
【話がある 28時 例の橋で会えないだろうか? 出来れば一人の方がいい】
突然のメールの元はスマックラースマイリー 今回はハシシよりもヤバいものらしい 自分はキメないくせに効き目が知りたいらしく 仕入れた時点でいつも俺が御指名だ 二番街から東は奴が元締めだ 俺たちはホスピタルで一緒に働いていた
俺が橋に着いた時、奴はもう来ていた 妙に真面目な顔をしているのが伺い知れた 何かに怯え変にイラついていた 挨拶もそこそこに奴は泣き始めた
『俺もチップを埋め込まれていたらしいんだ いつかは分からないがホスピタルに居た間だ 偶然手に入れた記憶パーツの中にな、今の俺のオフクロと同じ顔した女がいた
バカな!ソレは1999型だ まさかと思いモチロンはじめは信じない でも声やしわの数、ホクロの位置や網膜タンパク質濃度まで一致した!
俺は誰だ? オマエは俺の友達だ! 俺は誰だ? どこまでが俺の意思だ? じゃあ俺がオフクロと思ってた人は誰だ? 俺は本当は何処で生まれたんだ? 俺は誰だ?
オマエは俺を知ってるんだろう この街は…俺の女は…なぁ…教えてくれ…俺は誰なんだ?』
茶色い太陽が地下からは見えた 奴とはあのまま一杯も飲まずに別れた うすうすその時点で俺にもわかってた 最近の夢の場所が何時何処かってな
スマイリーが俺に渡したフロッピーケース ポケットに入れて72階で降りて そして無言で 出来るだけ急いで とぎれとぎれの不安を凌いで
一人で部屋に着きすぐにディスクを入れ 真っ暗な中みつめるディスプレイ 何が映れば満足なのかも分からず 汗だくで全身は震え
この記憶の持ち主の名前は不明だ 記録されたのは1999年、ロードする 90年前 そこはかつての札幌 そこの・・・
そこの・・・
自分の記憶が自分のものじゃないなら 存在なんてまるでただの映像みたいだ はじめての場所でふと感じる懐かしさ 最近見るのは同じ夢ばかりだ
太陽はなぜか透明で暖かく 退屈な午後は俺に妙にやわらかく 当たり前の様に鳥や虫が鳴き花が咲く 女の鼻歌が耳をからかう
-fin-
私は初めてこの歌を聴いた時に衝撃が走りました。空想だが未来を予知している内容、妙にリアルに感じる表現にゾッとしました。
歌詞に合った音が更に不気味な雰囲気を際立たせる・・・・・・
アーティスト【THA BLUE HERB】
タイトル【未来世紀日本】
長文失礼しましたm(__)m
END
怖い話投稿:ホラーテラー ピリリィさん
作者怖話