それは俺が6年ほど前に体験した話です。
時期は11月初旬で北海道の厚岸町に出張に行ったときだった。
ちょうど蝦夷鹿猟が解禁したばかりで
俺が泊まっていた旅館にも、猟が目的のハンターが数名泊まっていた。
そこでハンターのおじさん達と仲良くなり、酒を飲みながら鹿猟のうんちくを
聞いたりして話していたんだ。
それで明後日には仕事も片付き帰るって話になった時
それならうまいものを食わしてやるって事になって、その日はお開きになった。
そして翌日仕事も片づき旅館に戻ってきたんだ。
時間は6時過ぎだったんだが、辺りはもう真っ暗だった。
車を旅館の駐車場(その旅館は建物の一階が駐車場になっている)
に止めて車を降りた時、妙な寒気を感じた。
時期が時期なので寒いのは当たり前なのだが、まとわりつくような異質な寒さ。
なんか気味悪く感じてた時、ふと視線というか妙な気配を感じ振り向くと
駐車場の奥に立派な角の生えた鹿の生首が置いてあった。
しかも、明かりもない駐車場の奥にあるのはずなのに
その生首はあり得ないぐらい鮮明に見えたんだ。
他に置いてあるタイヤとか脚立は薄ぼんやりしか見えないのに。
恐ろしくて逃げたいのになぜか生首から目が離せない。
動けないまま数十秒か数分たったとき。突然鹿の口がガバッって開いて
悲鳴のような気持ち悪い声で「きょああああ」叫んでものすごい勢いで突進してきた。
ぞざざざっ!!って音を出しながらあり得ないぐらい早い動きだった。
その場で腰を抜かし倒れ込んだ俺の上にその生首が這い上ってきて
そこで意識はそこで途切れた。
ふと気がつくと俺はまだ駐車場で倒れたままだった。
慌てて飛びきるが俺の近くに生首はなく、最初に見たところに鎮座していた。
しかもさっきとは違って薄ぼんやりしか見えない。
とりあえず俺はすぐさま部屋に戻って頭を整理した後、夢だった事にして忘れる事にした。
ひとっ風呂浴びて夕飯を食べようと食堂に行ったら、ハンターのおじさん達が
すでに晩酌を始めていて、早速呼び止められた。
そして出されたのがレバ刺しだった。
おそるおそるさっきの生首の鹿のものかと聞いたら、嬉しそうにそうだって
もうその時点で気持ち悪さがMAXで吐きそうだった。
レバ刺しは苦手だからって逃げようとしたけど、とりたてで絶対うまいからと
無理矢理食わされてリバース寸前。
何とかビールで無理矢理流し込んで部屋で仕事があるからって逃げてきた。
当然すぐ便所で吐いた。
その後はただ怖くてと、にかく生首の近くに居たくなかった。
だから旅館の人に急な仕事でって言い訳をしてチェックアウト。
駐車場でも絶対生首の方に目もふらず車に乗り込み、釧路まで車を飛ばし
ビジネスホテルに泊まって帰ってきた。
その後は特に何もないからほんとよかった。
あれ以来動物の剥製とレバ刺しはトラウマになって見るのも嫌になった。
まあレバ刺しは元々嫌いなんだけどね。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話