「肝試し行こうぜ」
僕が中学生の頃、秋になると決まって肝試しに行こうと言い出す黒木という友達がいた。ご存知のように肝試しは夏の風物詩。秋で連想する風物詩といえば、○○の秋などと言われるようにスポーツ、読者などだ。しかし、黒木君に言わせると
「肝試しは秋が旬。肝試しの秋」
らしい。「キンチョーの夏。日本の夏」的に肝試しが旬だと言われても、さすがに「それ秋刀魚だろ」と突っ込まざるを得ない。肝試しに旬もくそもあったもんじゃない。
幽霊を信じる信じないという話は賛否両論あると思うので割愛しますが、僕は心霊や幽霊といったオカルト的なものに1ミリも恐怖を感じない。
世の中には確かに現代科学をもってしても解明できない不思議は多分にある。だから幽霊を否定はしないが、肯定もしないのが僕のスタンスだ。
だから、そんな幽霊に対して屈強とも言える僕が肝試しの度に駆り出されるのは言うまでもない。これまでに僕は、黒木の指令により、難攻不落とまで言われる廃墟工場へ突入し、幽霊との遭遇どころか完全にラリったビーバップハイスクールに遭遇し丸腰で格闘したり、地元の墓地に現れると噂される雛形あきこ似の幽霊捕獲作戦を命じられ、逆に警備員に捕獲されるなど散々な目に遭った過去がある。
おまけに僕以外は、隊長・黒木を筆頭にオカルト好きなくせに怖がりという最強というか最怖のメンツが顔を揃えるから手に負えない。
そんな黒木率いる最怖オカルト倶楽部のメンツを少し紹介したいと思う。
【黒木】
オカルト倶楽部発起人にして隊長。霊感が強いらしい。
【中村】
「すぐに撤退できるように」との理由で、心霊スポットにはいつもジャージ姿で立ち向かう。怖がり度◎
【広瀬】
お母さんが木の実ナナに似てる。
どう考えてもQ太郎にすら太刀打ちできそうにないメンバーだ。
そこで僕がいつも召集されるわけだ。
「今回は廃墟の病院に行く。KID君には先頭を頼みたい」
黒木ちょっと待て。別に先頭が怖いとか言わん。何で助っ人が先頭やねん。
「先頭は黒木君じゃないの?」
すかさず僕も異を唱えます。
「あそこは本当に危険だ。だからこそKID君の力が必要なんだ」
冷静に考えると「お前が先頭で死んでくれ」みたいに聞こえます。
「じゃあ、夜10時にメンバー揃えて待ってるから」
「わかったよ」
こうして今回も半ば強引に廃墟病院ツアーが決定したのだった。
夜も更け、時刻は夜10時。僕は待ち合わせ場所である学校の正門にいた。
うん、誰もいねぇ
見事に誰も来てない。
いったいどうなってるんだ。
「まぁ、少し待ってみるか」
と、缶コーヒーに口をつけ待つ事5分。
未だ来る気配なし
更に5分が経ち「もう帰って寝るか」と自転車に乗った時、3人の人影がこちらに向かって来るのが見えた。距離が近づくにつれ、それはオカルト倶楽部であると確信した。
僕が3人に詰め寄る。
「お前ら遅せえよ!」
「悪い悪い。黒木がドラマ見てたから遅れた」
黒木死ね!呪われて死ね!
「違うよ!広瀬が怖いからエアガン持ってくって用意に時間かかってたんだ」
どっちでもいい。誰か散弾銃持ってこい。
何をトチ狂ったら幽霊と対峙するのに空気銃って発想になるんだ。
そこへジャージ姿の中村が割って入る。
「とにかく早く行こうよ。廃墟病院まで1時間はかかるんだし」
え?1時間?
聞いてない聞いてない。お前ら気は確かか。往復で2時間って事は、船越英一郎が事件一つ解決してしまうんだぞ。
「そうだな」
やっぱり行くんですね隊長。
「よし、行くぞ」
こうして黒木隊長の号令により自転車に乗り込んだ4人は一路廃墟病院へとハンドルを向け、いよいよ廃墟病院ツアーは幕を開けた。
廃墟病院に向かう車内は、俺にとってまさに地獄とよべる場所だった……
まず助手席に座った黒木は何やらヘッドフォンして音楽聴きつつ 頭をぶん回しながらシャウトしている
白目を剥いてヨダレをたらしながら頭をぶん回している黒木の姿はビジュアル的に相当きつい…
1分でも直視していたら精神に重大なダメージをおう事うけあいである。
一瞬「早くもキツネでも憑かれたか!?」と心の中では思ったが 俺の精神状態の事を考え、深くは考えずスルーすることにした
そして後ろの二人はというと…
「…だから、お前のそうゆう所が男らしくてカッコイイよ…」
「いゃいゃ、お前こそ何気に気配りとかできてカワイイよ…」
と、30分前に始まった『お互いがお互いを褒め合う』とゆう不毛なゲームのせいで異空間が形成されていた…
いまや、広瀬と中村は小指を絡め至近距離でお互いがお互いをホメあうのに夢中である
それをバックミラー越しに見ては 生まれたことを後悔しつつ車を走らせる俺だった
怖い話投稿:ホラーテラー KIDさん
作者怖話