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許された呪い 第2話 接触

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ファミレスに戻ったFさんは今後の事を真剣に考えなければならなかった。

Fさんのアパートはもはや彼にとって、最恐の心霊スポットでしかない。

引っ越したいのはやまやまだが、先立つ物がない。親に頼むのも気が引ける。

(大家にお願いして部屋をかえてもらうか・・・空き室があれば聞き入れてくれるかも)

Fさんは今さらのように後悔した。隣の部屋を覗き見した事を。

夕食時だというのに、客はまばらだった。

彼は店内の様子を、眼下を走る車と一緒に見ていた。夜景を眺めながら、ガラスに映る店内をボンヤリと見ていたわけだが、客の中に、妙に気になる存在が1人いた。

いつの間に席についたのか、広いテーブルに1人で座る俯いたままの女。

何を注文するでもなく、店員も何故か気にしている素振りすら見せない。

Fさんは気になって視線をガラスから店内に移した。

(!)

(いない!)

もう一度ガラスを見る勇気など無かった。

(俺、もしかしてとんでもない所に足突っ込んでるんじゃあ・・・)

彼は立ち上がり、伝票を掴むと、女が座っていた筈のテーブルを大きく避けて出口に向かった。

店を出て、雑踏の中をひたすら歩く。歩きながら心の中で叫び続けた。

(何なんだ、くそったれ!)

しばらくしてFさんは、恐怖におののいていた筈の自分の心に、少しずつ力が湧いてくるのを感じ始めた。

ガラスに映った女と、隣に住む女との関係はわからない。

しかし、人間ではないモノを見てしまったFさんの心に芽生えたのは、恐怖よりもむしろ勇気だった。

(もう逃げるのはやめた!)

そこまで話すとFさんは叫んだ。

「ヤケクソだよ、ヤケクソ!自棄糞も勇気の一種なんだってつくづく思ったね」Fさんの目はふざけていない。それを見て僕も、真剣に話を聞く事にした。最初は馬鹿にしきっていた彼の話は、次第に興味深いものになっていった。

Fさんは暗闇の中アパートに帰った。自分の部屋に入るとやはり少し落ち着いた。

彼は隣の女と、(一度じっくり話さないといけない)と考えていた。部屋に押し掛けるわけにはいかないので、女が外出する時を狙うしかない。

勇気が湧いたとか言いながら、Fさん、その夜はさすがに電気を消して寝られなかったらしい。

翌朝早く、Fさんは近くのスーパーで食材を買い込んだ。部屋に籠って女の外出を待つにしても、いつになるのか見当もつかないからだ。大学の講義など、もうどうでもよかった。

(隣で女は既に死んでいて、部屋に出入りしているのは、実はこの世の者ではないんじゃないのか?)

そんな想像をした事もあったが、あり得ないと結論づけた。

(幽霊がカーテン閉めんだろ、普通)というのがその理由だった。

そしてそれを証明する為には、是が非でも女に会わなければならないのだ。

テレビはつけない。音楽も聴かない。ただ隣の様子をうかがっているだけで夜になった。

その日1日、隣の部屋からは物音ひとつしなかった。

さすがに、〈覗き〉はもう懲り懲りだ。

(やはり、死んでいるのでは?)

どうしてもその不安が頭をよぎる。やけくその勇気もたった1日で萎んでしまいそうだった。

Fさんはその夜も、電気を消せずに布団に入った。

(俺、そのうち狂うかも・・・)なんて事を考えながら。

深夜2時頃。

(?)

Fさんはふと気配を感じて目を開けた。

ギィ・・

(ドアの音だ)

バタン

ガチャ

コツ、コツ、コツ・・・カン、カン、カン・・・

(女が出て行った!)

Fさんはパジャマのままサンダルを履き、静かにドアを開け外に出る。

忍び足で階段を降りると、女の後を追った。

細い路地を抜けて大通りに出る。

(いた!)

50メートルほど先に女が歩いていた。

時刻が時刻だけに、さすがに人通りはまばらだ。

(見つかるとまずい!)

女の後をひたすら追っていたFさんは、ふと我にかえって愕然とした。

(俺、女と会って、一体何を話そうとしてたんだっけ??)

(まず第一に声も掛けられないじゃないか・・・)

(こんな夜中に、「隣の部屋に住んでるFっていう者です、よろしく」なんて言えるわけがないし!)

(しかもこんなパジャマ姿で!)

Fさんは自分の馬鹿さ加減に泣きたくなった。

そもそも彼の恐怖は、見知らぬ女の部屋を覗いたから発生したんであって、女には何の責任も無い。

「あなたの部屋で不気味な足を見たんですけど」などと言おうものなら警察に通報されるのがオチだ。

それでもFさんは追跡をやめなかった。とりあえず、女が幽霊ではない、という確証だけでも手に入れたかったのだ。

前方を歩く女は24時間営業のスーパーに入って行った。

Fさんは、女がレジでお金を払う所を見て帰ろう、と思っていた。

(幽霊にそんなまね、できっこねえからな)

Fさんは尿意を感じてトイレを探した。店が広くて中々見つけられない。

うろうろしていると、前から大きなマスクをした女が近づいてきた。

都市伝説の〈口裂け女〉そのままの姿だ。

Fさんと女の距離はどんどん近くなる。

ここでFさん、とんでもない行動に出るのである。

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怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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