これは俺達が中学校時代の話
俺、友人のAとBはいつも一緒に行動していた
始めにBの家は複雑な環境で、親は凄い金持ちで、Bの兄弟も一流の学校、そして会社に勤めていた
そんな中末っ子であまり勉強も出来ず、俺達みたいないわゆる庶民と遊んでいたBは父親と仲が悪く家を追い出される形で、一人暮しをしていた
まぁ一人暮しと言っても、家で唯一の味方である母親が毎日ご飯を作りに来てくれ、余る程の仕送りを貰っていたし、授業参観や家庭訪問等も全部母親が出てくれていた。父親が世間体を気にして、中学校には一人暮しというのを隠していた
本題に入ります
Bの父親が重い病気で、医者から「もう長くない」と言われている頃の話だが、その時は父親が経営する会社の成績もガタ落ちで、倒産の寸前だった
父親の方からBに「最後だから顔を見せに来い」と言われ、渋々であったがBは父親に会いに行った
その後、Bから電話があった
B「親父から変な物貰ったから、遊ぼうぜ!Aも呼んでるから、公園に集合な!」
変な物……?
馬鹿な俺はワクワクしながら公園に向かった
公園に着くと、既にAとBは集まって、なにやら騒いでいた
A「おうヒロ(俺)!遅いぞ!」
俺「わりー、それで?変な物って何んだよ?」
B「これこれ〜」
Bは自慢気に野球のボールぐらいの大きさの木箱を出した
俺「何これ?」
B「いや、実は俺も分からないんだけど、親父が形見にってくれたんだ……でも、今更こんな物いらねーし、気味が悪いから、これをぶっ壊して遊ぼうぜ!!」
俺「これ、壊すの?いいのか?」
B「いいよ、いいよ!あんな親父の形見なんかいらねーよ!」
皆さんにも経験があると思うが、若い頃、男の子にはどうしようもない破壊衝動がある……
大体、身の回りにある物は壊してはいけないと教えられ、それを我慢してきたが、目の前には初めての壊してもいい物がある…
俺達3人のテンションは一気に上がった
B「まず、俺からな!」
Bは木箱をおもいっきり地面に叩き付けた…
ガンッ!!コロコロ……
箱は意外にも丈夫に出来ていて、ほとんど傷もつかなかった…
この頑丈さが俺達の闘争心に火を付け、俺達は更にテンションが上がった…
A「よっしゃ〜!貸せ!!」
ガンッ!!!
Aも同じ様に箱を叩き付けたが、箱はまだまだ壊れる気配はない
そして、俺……その後、またB→A→俺というローテーションで箱を地面に投げ続けた
3周くらいしたところで、箱に亀裂が入り、いよいよ壊れる時が近づいてきた…
B「よし!行くぞっ!!」
Bは今まで以上に力を入れ、木箱を地面に叩き付けた…
パァーーン!!!
爽快な破裂音と供に箱はほとんど粉々に砕け散った
俺達「うおっーー!やったぞ!」
よくわからない達成感に満ち溢れていた
A「……ん?何だコレ?」
砕けた箱から和紙の様な紙に包まれた物が出てきた…俺達は紙を広げ中身を取り出した
俺「何だこれ?木……?」
中からは木の枝ような細長い物が出てきて、俺達はそれをじっと眺めていた…
B「あの糞親父……形見に小枝を息子に渡すって…ナメやがって!こんな物をあんな頑丈な箱に入れて、何を考えてんだ…」
ここで、ずっと黙っていたAが口を開いた……Aは震えた声で
「こっ、これって……人の指…じゃねえのか?」
俺達に一気に緊張感が走った…
人間の指………言われて見れば、確かに指に見える…いや、完全に人の指だ………
干からびて木の枝の様に見えるが間違いなく、人間の小指である…
俺「おっ…おい!どうすんだよ!人の指って…」
A「どうする……ヤベーよな?」
B「………」
Bは小刻みに震え、何も聞こえてない様だった…
そりゃ、父親から貰った形見から指が出て来たら無理もないだろう
A「とりあえず、大爺の所に行こうぜ…大爺ならなんとかしてくれるだろ…?」
大爺は近所のお寺の住職さんで、寺に遊びに行くと、子供達に怖い話を話してくれたり、わからない所の勉強を教えてくれたりするすごく頼りになる人である
今だに放心状態のBを支えながら俺達は寺に向かった
寺の前では明(あきら)兄さんが庭の掃き掃除をしていた
明兄さんは、この寺の修行僧の方で、遅くまで遊んでいる子供を見つけると一人一人を家まで送ってくれたりする優しいお兄さんだ。明兄さんが家まで送ってくれるとどれだけ遅く帰っても親は怒らなかった。それだけ、周りから信頼されている
俺達は明兄さんに泣きついた
明「……ん?…どうした?」
いつもと違う俺達を見て、明兄さんはすぐに何かあったと察してくれ、寺の中に通してくれた
明「で…?何があった?」
B「…これ……」
俺達はバラバラになった木箱と中に入っていた指を見せた
見せた途端に明兄さんの顔が一気曇った…
明「お前達、そこを動くなよ!今お師匠様(大爺)を呼んでくる」
明兄さんは部屋を出て行った
A「やっぱりヤバい物だったのかな?」
俺「あんなに焦った明兄さんは見た事ないな…」
B「……ごめんな…」
Bは自分……いや、自分の親父のせいで俺達を巻き込んだ事を気にしている様だ…
俺「いや、俺達だって壊したんだから…気にすんなよ…」
A「そうだな…」
B「……」
全員が悪いし、誰のせいでもないまだ子供だった俺達にこの状況は難しすぎた……
3人の会話が無くなった頃、大爺と明兄さんが部屋に入って来た
明「これなんですが……」
大爺は箱と指をまじまじと眺めて「……間違いないな、指切りだ」
その言葉を聞いた瞬間、明兄さんは手で顔を覆い、俯いた
B「大爺…、指切りって?」
大爺「いいか、よく聞きなさい…これはお前達のこれからを左右する重要な話だ……。まず、この箱は【指切り箱】と言う。この箱はまだ、身分などの格差や差別があった頃に作られた物だ。ある地域を治めている貴族が居てな…こいつは高名だった父親の権力を乱用して好き勝手に自分の治める地域を動かしていた。そして、そんな父を見て育ったその男の息子も地位や権力を振るう子になった…、その息子はあろうことか、自分の村の娘を強姦してその娘に子供を宿したんだが、そのまま娘を捨てたんだ……もちろん娘の父親は憤慨して屋敷に乗り込んだ。しかしろくでなしの父親は息子の言い分を聞き、耳を傾けなかった。
それどころか、下の身分で自分達に盾突いた罰として、嘘をついた娘の小指を父親自らが切り落として献上するよう命じたんだ…
誰もがこの対応に納得できなかったが、誰も文句は言えなかった…文句を言えば、自分達が何をされるか分からないからだ…
何も悪くない父親と娘……そんな恨みと怨念がこの箱には詰まっているんだ…」
俺「じゃ、そんな箱を壊した俺達はやっぱりヤバいの?」
大爺「お前達は箱を壊したんじゃない、開けたんだ……この箱の厄介な所は年数が経てば経つほど、人から人へ渡れば渡るほど呪いが強くなる……箱は開ける者が現れるまで待っているんだ」
沈黙が流れた……、ここに来て初めて自分のやった事の愚かさがわかった…
大爺「ところで、お前達はこんな物を一体何処で手に入れた?昔の見聞を見れば作られた箱は6個、その内4つは既に破壊している…そんなに簡単に手に入る物じゃないはずだ…」
俺達はBの親父から貰った事を大爺に伝えた
明兄さんと大爺は顔を見合わせた
明「お師匠様……」
大爺「ふむ…調べなくてはならんな……明、お前はこの子達を連れてBの父親に話を聞きに行きなさい。私はこの子達の親にも事情を説明しなくてはいかん」
明「わかりました」
俺達は明兄さんとBの父親が入院している病院に行った
長くなって、すいません
まだ続きます
怖い話投稿:ホラーテラー 猛壮さん
作者怖話