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中編3
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不思議な産声

妻が初めての子どもを妊娠しました。しかも、双子でした。

自分たち夫婦は大きな幸せと期待に包まれました。両家の両親に伝えると、面白いくらいに大フィーバー状態になっていました。

赤ちゃんは二人ともすくすくと順調にお腹の中で成長しましきまいた。

しかし、ある日の妊婦健診で、「うちでは手に負えない」と、わけもわからずいきなり救急車で大病院に搬送。

そして告げられました。「双胎間輸血症候群」「子宮頸管無力症」が一度に発覚したのでした。

そして、そのまま入院しながら自然に流産を待つことしかできないことも。

それまでの幸せが一転。これでもかというくらい、病室で二人、涙を流しました。しばらく泣いた後、二人とも同じことを考えていましいた。

「ふたりに名前をつけてあげなきゃね」

流産なのでもちろん戸籍には残りません。でも僕たちは一生懸命頭をひねりました。そして名前をつけてあげました。(ここでは内緒。男の子の一卵性でした)

名前をつけたとたん、ふたりへの愛情がさらに強くなりました。もうすぐ流産することも知らずに、母親のお腹の中で、愛情に包まれている天使のようなふたりに。

そして数日後の深夜、突然の陣痛。静寂から一転、妻は大きなスライド式の防音扉の向こうにある分娩室に慌ただしく運ばれていきました。

僕は廊下に出され、妻のためだけに忙しく動き回る医師や看護師の姿を眺めながら、不安に包まれていました。

いよいよというとき、立ち会いが許されました。流産といっても、陣痛→破水→出産と、ごくごく普通に出産しました。ただ、自発呼吸はまだできないので、産声はあげませんでしたが。

生まれたばかりのふたりはすぐに別室に連れて行かれ、次に出会ったときはふたりとも冷たくなった状態で、小さな段ボールのような箱に入れられていました。

300グラムと400グラムしかありませんでしたが、完全に人間の形をしていて、顔つきもはっきりしていました。夫婦どちらにも似た部分があり、思わずこぼれる笑み。

慎重に一人ずつ抱えて、夫婦二人で順番にだっことキスをしてあげました。とても幸せな時間でした。気付けば朝日が病室に差し込んでいました。

そしてこの日の午後、お見舞いに来た親戚と一緒に、ふたりの「誕生日」をお祝いしました。ふたりを囲んで歌を歌い、病院の外で買ってきたケーキをみんなで食べました。

退院してしばらくしたある日、妻がこんなことを言いました。「あのとき、違う部屋で出産してるひといたよね。二人も」

僕は「へ?」です。だって、分娩室は全部で3部屋ありましたが、僕は廊下の外に出ていたので、妻のいる部屋しか使われていないのを知っていましたから。

妻は「はっきりと聞こえたよ。2回も」。

僕は説明しました。病院の構造や、自分のいた場所、医師や看護師の動きを具体的に。絶対に他に出産した人はいないし、

他から赤ちゃんの産声なんて聞こえてくるはずがないんです。

なんと親孝行なふたりだったのでしょう。妻にだけは産声を聞かせていたのです。不思議な産声を…

私たち夫婦は、今度は幸せな涙をいっぱいいっぱい流しました。

今、我が家の墓の横には小さなお地蔵さんが建っています。双子地蔵というもので、お地蔵さんが二人寄り添い、ほほえみを浮かべています。

不思議な産声の話は、本当は夫婦二人だけの秘密にしているのですが、こうして今日ここでついついしゃべってしまいました。

なぜなら、今の僕は浮かれてしまっているからです。

もう数日間のうちに誕生する赤ちゃんのことで、ワクワクが止らないので。。。

(全て事実です。疑問にはちゃんとお答えできるので、あんまりキツい言葉で質問してこないでくださいね。もしかしたら、出産のために返答どころではなくなるかもしいれないですけど)

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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