部屋の中は取り立てて調度品もなく、質素な造りでしたが、小さな机が隅に置かれており、その上に、真っ黒に塗り潰された写真が、大きな枠の写真入れに入ってました。
A「……何やこれ、気持ち悪い」
言い、友人Aが写真入れを手に取り持ち上げた瞬間、額裏から一枚の紙が落ち、その中から束になった髪の毛がバサバサ出て来たのです。
紙は、御札でした。皆、『ヤバイ』と思っていたのでしょう。誰一人、口を開かず、声も出せませんでした。
顔面蒼白のAを見れば、Bは咄嗟に『急いで出よう』と言い、逃げる様にBが窓によじ登った時。その壁紙全てが、ブワッと剥がれました。
壁紙の下には、写真の裏から出て来たのと同じ御札が、壁一面に貼ってあったのです。
C「何や、これ……」
酒に弱いCは無論、その場で反吐しそうになりました。『やばいてやばいて』『吐いてる場合か、急げ』よじ登るBの尻を、私とDで押し上げました。
もう、何が何だか訳が分かりませんでした。後方では、誰かが『いーーー、いーーー』と声を出しています。恐らく、Aです。祟られたのです。恐ろしくて、振り返る事も出来ませんでした。
無我夢中でよじ登り、反対側の部屋に飛び降りました。それからDも出て来て、部屋側から鈍いCを引っ張り出そうとすると。
C「痛、っ、イタ……!」
Cが叫びます。
『引っ張んな足!』部屋の向こうでは、Aらしき声がわんわん変な音で呻いています。Cは余程、凄い勢いでもがいているのか、此方の壁を蹴る音がしました。
D「……B! かんぬっさん連れて来い!」
後ろ向き、Dが叫びました。
D「何かAに憑いとる、裏行って、神社のかんぬっさん連れて来いて!」
Bが縁側から裸足で猛ダッシュして行き、私達は、窓からCを引き抜きました。
C「……足! 足!」
私「痛いか?」
C「痛うはないけど……何か、噛まれた」
見ると、Cの靴下の踵の部分は、まるで丸ごと何かに食いつかれた様に、丸く歯形がついて唾液で濡れています。
相変わらず中からはAの声がしますが、恐怖で、私達は窓から中を見る事が出来ませんでした。
C「……あいつ、俺に祟らんかなぁ」
私「祟るて何や、Aは未だ生きとるんぞ」
C「出て来る時、めちゃくちゃ蹴って来た」
暫くして、『しらー!』縁側から、トレーナー姿の神主さんが真青な顔して入って来ました。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話