大学生になったばかりのAは、一人暮らしを始める事にした。
(どんな所でもいいから、出来るだけ安い所がいいな。)
と考えていたAは、とにかく安い物件を探した。
だが、そんなAが住む事に決めた所は、なんと新築の綺麗なマンションの一階の部屋だった。
普通なら、家賃八~十万円ぐらいだが、なんとそこは家賃四万円というかなり安い金額で住む事ができた。
(もしかして何かいわくつきか?)
と思ったAだったが、理由はごく単純で、すぐ近くを電車がはしっており、その音がうるさいという、霊的なものはいっさい関係の無い理由だった。
(この値段でこんないい所に住めるなら、文句はない)
Aさんは、そのマンションに引っ越す事を決めた。
引越し当日、荷物運びを済ませたAは、綺麗な部屋の中をぐるりと見回した。
「ほんっといい部屋だなー。.......ん?」
Aは部屋の中を見回してる内に、妙なものを見つけた。
それは、赤い窓。
窓枠が真っ赤に塗ってある、木製の窓。ガラスの部分もとても古く、ところどころヒビがはいっていた。
「あんなの、最初に見に来たときあったっけ?」
見逃したのかと思ったが、とても見逃すような場所ではなく、さらに窓にしては位置が低すぎる。
「.......何か気味わりぃ。」
いわくつきではないと分かっていたが、その窓は明らかに変だった。
「まぁ、いっか。」
引越し初日ということもあり、彼は気にしないことにした。
「がら.....がらがら....」
真夜中、Aは何かの物音で目が覚めた。
「なんだ.....?」
その音が、赤い窓のほうから聞こえるのはすぐに分かった。
「窓が開く音?.......泥棒かっ!!」
Aは赤い窓のほうへ視線を向けた。
一瞬、Aはそれを大きな蛇かと勘違いした。
人の足ぐらいの太さの、細長い蛇のような体の先にある、髪の長い女の顔。それが、器用に口で窓を開け、部屋の中へ、ズズッズズッズズッと入ってきた。
(何だよ.....これ.....)
Aは、恐怖で動けなくなった。
そのときだ、
「.........!!!」
Aはそれと目が合ってしまった。
するとそれは、ズズッズズッとAに近寄ってきた。その女の顔は、憎しみと恨みに満ちていた。
(頼むっ動けっ動いてくれ!!)
Aの体は、金縛りになったように、動かなくなってしまった。
(いわくつきじゃねえかよ!!)
Aがそんな事を考えている内にそれは、Aの周りをとぐろを巻くように囲んでいた。
よく見ると、それの体には無数の女の顔があった。どれも、恨みや憎しみに満ちた顔だった。
そしてそれは、Aをにらみつけ、
「お前はあいつの子孫か!!」
Aはそこで、気を失った。
「ううぅ......あれ?」
気がつくと、もう朝だった。
(昨日のあれは夢か.....)
Aは、はっ!と赤い窓を見た。
赤い窓は、ちょうど昨日のそれが通るぐらいのすきまが開いていた。
「もう、こんな所居られない!!」
Aは、親の居る実家へ飛ぶように帰った。
「おっ、どうした、もう帰ってきたのか。」
Aは実家につくと、父親にそう声をかけられた。
「......恐かったー!!」
Aは思わず泣いてしまった。
「?どうしたんだよ、急に。」
Aは、その部屋の事を話した。
「.....まったく、なんもねえって言ってたのに、とんだ目にあったよ。あーあ、また部屋探さなきゃ。」
「........」
「あれ?嘘だと思ってる?」
「.....思ってねえよ。」
「じゃあ何で黙ったんだよ。」
「....それ、多分部屋じゃなくて、お前に憑いてるんだよ。」
「えっ!!」
「いや、実はな.....」
Aの父が言うには、こういう事だった。
Aの祖先は、とても女遊びが激しく、色んな女性から恨みを買っていたらしい。何度か殺されかけた事もあるという。
祖先やその女の人達が死んだ後、Aの家の男が、女の頭をした蛇に襲われる事が相次いだという。
これは女のたたりだ!!
A家の子孫はそれらを鎮める為、祠を作ったという。すると、A家の男が襲われる事は無くなったという。
「......でな、最近それにがたが来てな、なおさなきゃならんなーっと思ってたら、お前のその話、もう少し祠の力が弱まってたら、お前も危なかったかもなー。」
さらっと言ったその言葉に、改めて恐怖をAは感じた。
「で、何で赤い窓なんだよ?」
「えっそりゃ多分、祠の横にある赤い窓だよ。それがお前の所に現れ、お前の所と祠をつなげ、その女の化け物の通り道になったってことじゃねえのか?窓が低い所にあったのは、祠が小さかったから、それの高さにあわせたからじゃないのか?」
Aの父の話には妙に説得力があった。
数日後、Aの父親が祠を直しに行った後は、赤い窓もなくなり、それが現れる事も無くなったという。
怖い話投稿:ホラーテラー 青二才さん
作者怖話