これは私がまだ小さい頃、母の実家のある奄美大島に行った時のことです。奄美大島のおばあちゃん家に行くことは、ほぼ毎年のことでした。私と、2つ上の姉がいつも母と一緒に帰っていた時のことです。
どこの田舎でもしていることかはわかりません。奄美大島の方では、夕方になるとお盆の初日、提灯とろうそくを持って部落中の人がお墓へ出かけます。我が家の墓石の前で、両手を合わせながらご先祖様どうぞ家にお帰りください、私たちが案内しましょう、と言ってろうそくに火を灯し、提灯を手に霊を家まで案内するのです。
その行列は、私が幼いころまではまだまだ長いものでした。きっと今では部落の中にもほとんどそんな風習を守っている人は少ないと思います。
私と姉とはまだ幼いので、大人の歩く速さには到底追いつくことはできません。ですから、列の一番後ろに自然となってしまっていたのです。
と、一番最後だと思っていたその列に、私たちの後ろを歩く人がいました。
その人は背が高く、昔ながらの浴衣を着て、片足がありませんでした。松葉杖を使っているのでしょう、ゆっくりとしか進むことが出来ません。私が小さいからなのか、この人はとても背の高い人に思えました。うつむいてゆっくりと列の最後を着いてきます。私も姉も、なんとなく気になってはいたのに気がついたらもういませんでした。
そのお墓から続いていた列は、各自家の前に来ると、一人また一人と家に帰ってしまうので、その人も自分の家に帰ってしまったのだろうとそれほど深くは考えませんでした。
私たちも家に着き、おばあちゃんはお墓からお供してきたおじいちゃんの霊を、よく帰ってきましたね、っと言ってお仏壇にそのろうそくを移し、お盆が始まりました。その頃は何も気にならなかったのか、さっき会ったその松葉杖の人のことを母に尋ねることがなく、数年たった後お盆の話になり、姉と一緒に母にそのことを聞いてみました。母は、そんな人は部落はいないというのです。姉と私は身ぶるいして怖がったものでした。やはりお墓からご先祖様がお供してたのでしょうか。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話