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中編3
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知らないヒト

これは、私が体験した話です。

今から5年位前の話です。

5年前の夏休み、私と妹は母方の実家へ泊まりに行きました。

そのとき、母の妹も来ていて、その息子のTくんも泊まりに来ていました。

Tくんは私の一つ下、妹は私の2つ下でした。

その日の夜、私とTくんは遅くまでビデオをみてお菓子を食べていました。

あれこれやっているうちにいつのまにか12時をまわっていました。

でもまだ眠気がこれっぽっちもない私たちは、祖母に「怖い話をしてくれ」と頼みました。

祖母は「早く寝ないと明日海につれてってあげないよ。」と言われ、私たちはしぶしぶ2階へと行きました。

「布団のなかでゲームやろう」とTくんが言い出し、私もそれに賛成し、一緒にゲームをやっていました。

しばらく、時間がたって誰かが廊下を歩いてくる音がしたのです。

「誰?」

私は体を起こして障子のほうを見たのです。

Tくんも気づいており、障子を見つめていました。

そして障子がスーッと開いたのです。

そこに立っていたのは、怖い顔をした祖父でした。

「まだ起きてるのか!早く寝ろ!」

と、私たちは怒鳴られてしまいました。

でも、それだけでは懲りない私たちは電気を消しておしゃべりをしていました。

その時、またろうかから足音が聞こえるのです。

「やべ、まだおじいちゃんが怒鳴りに来たか?」

Tくんはそう小声で私に言ってきたのです。

でも、私は祖父ではないと思いました。

なぜなら、この家の廊下は祖父と祖母の寝室からはほんの5メートルくらいしか離れてないのに、その足音はずっと歩いているのです。

そして其の足音は私たちの寝室の前でピタッとやんだのです。

私はTくんのほうをみました。

Tくんは、障子をみたまま動きません。

そして障子がスーッとあいたのです。

そこにたっていたのは

祖父でも祖母でもない。

しらない男のヒト。

こちらを見ているのです。

ずっと。

そしてその男は手に何かを持っていました。

今思えばソレは刃物のようなものだと思います。

男は私たちに何かを言いました。

はっきりとは聞こえませんでしたが、確かに何かを言っていたのです。

気づけば、もう朝でした。

そして、このことをすぐ、祖母に話したのです。

でも祖母は「気のせいだ」と言って取り合ってはくれませんでした。

そしてTくんは何も話そうとせず、私たちはそのまま海へ出かけました。

あれから5年がたって、最近、また祖母の家に行ったのです。

Tくんも来ていました。

私は思い切って聞いたのです。

あの日のことを。

Tくんはしばらく黙ってから私に話してくれました。

あの夜、Tくんもやはり、あの男を見ていたのだそうです。

そして、あの男が何を言っているかも分かっていたそうです。

男は「早く逃げろ」といっていたそうです。

何故、逃げろと言ったのか今でも分かりません。

その日の帰り、母に「おばあちゃん家で何か怖い体験したことある?」

を、何気なく聞いてみたんです。

母は、「あるよ。なんたって、あの家の2階は霊道だからね。」

笑いながら話していた母。

霊道は文字通り、「霊の通り道」で、あの夜みた男はやはり霊だったのか、私はそう思いました。

あの男は今も、2階の廊下を彷徨っているのでしょうか。

私はこの先、多分、あの家に泊まりに行くことはないでしょう。

     

怖い話投稿:ホラーテラー みゆさん  

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