昔よく遊んだ友人から連絡があり、俺のアパートを訪ねてくれることになった。
俺が東京に引っ越してきたばかりの時は、手紙のやりとりはしばらくあったが、いつしか連絡はとらなくなっていた。
20年ぶりの再会だ。
約束した時間より遅れて、夜おそく彼はやってきた。
ドン、ドン、ドン!
ドアを開けると、なんとなく昔の面影のある彼が立っている。
すぐに異変に気付いた。
顔面蒼白で全身汗で濡れている。
久々の再会に浸っている場合ではないようだ。
「何か、あった?」
彼を部屋に入れ、タオルを渡した。
『今から、ワシが話すことよーぐ、聞いてけれ…。』
方言と訛(なま)りがあってわかりずらいと思うので、変わりに説明する。
せっかく東京に来たのだからと、ついでに彼は東京見物をしてきたそうだ。
東京タワーを見た後、近くの公園の散歩してたついでにトイレに入った。
しばらくして、何か気配を感じた。
ふと上を見ると隣の個室から女が顔だけ覗かせている。
びっくりした彼は、トイレから逃げ出した。
しばらく走って、墓地を過ぎた頃、今度は足にずっしりと重みを感じた。
間違いない、足首をつかまれている。
あまりの痛さに足元を見ると、さっきの女が苦悶の表情を浮かべ、見上げていた。
究極の恐怖を味わうと声が出ないらしい。
しばらくして、女は消えるようにいなくなり、友人は無言のまま全速力で走った。
こうしてようやく、俺のアパートに着いたそうだ。
友人は最後にこう、付け加えた。
『本当怖いべなぁ………、都会のおなごは。』
「じゃなくて、霊なんだけど。」
俺は言いたかったが、あえて言わなかった。
それより、もっと気になることがあったからだ。
友人が部屋に入ったときから、俺は部屋の空気に違和感を感じていた。
「さっきから、ずっと気になってたんだけどな……」
俺は恐る恐る友人に尋ねた。
「便所でケツ拭いた?」
友人はさらに青くなった。
怖い話投稿:ホラーテラー ソウさん
作者怖話