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短編2
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断罪のナイフ

とあるお店が在る。

俺は曰く付きなコレクション兼商品にまるで磁力に引き寄せられるように何度も訪ねてしまう。

そして今日も……

「やあ、いらっしゃい。今日もコレクションを見たいそうだね。存分に見ていってくださいな」

この店は会員制だ。

会員になる条件は一つだけ、いつか商品を買う事。

いつになるかは、客次第だそうだ。

特典は好きな時に品物を閲覧できる。

ここは、そんな店。

古ぼけた封筒の上に禍々しく鈍い光を放つナイフに目が吸い寄せられ足が止まった。

「店主、このナイフはなんですか?」

「ああ、このナイフは……」

店主の話が始まった。

ナイフの持ち主は60歳の男。男はある一つの目的の為に生きてきた。

男は35年間、妻を愛した。それこそ異常な程に愛した。妻の望みは全て叶えたかったが妻は控え目な性格でなにかを望む事は殆どなかった。

妻の顔を見る度にある事を思い、さらに妻を愛した。

なにかと記念日を作り祝った。

旅行に行き思い出も作った。

プレゼントも数え切れない程贈った。

妻の好物を作るため料理も学んだ。

妻に愛される為ならなんでもやった。

妻が幸せになる為なら頑張れた。

妻は何故そんなに愛してくれるかと聞いた。男は妻を幸せにしたいからだと答えた。

妻は笑った。

ある時、妻が病気になった。男は毎日のように見舞いに行き妻を励ました。

妻を助けてくれと医者に懇願した。

妻を助けてくれと神に祈った。

手術が成功した時は涙を流し喜んだ。

退院した時は盛大に祝った。

そうやって幸せな日々を積み重ねた。

そして幸せが積み重なった頃には60歳になっていた。男は目的を果たすと決め妻をドライブに誘った。妻の大好きな場所に。

懐には35年間、肌身離さず持っていたナイフを忍ばせて。

目的地に着いた。

人気のない湖。

男は覚悟を決めた。

何も言わず妻を抱き寄せナイフを握らせた。

妻はナイフを突き刺した。

妻は涙を流しながら何かを言っているが聞き取れない。

男は許してくれと言った。そして過去の罪を悔いながら目を閉じた。

「それが、このナイフです」

男の罪とは何か考え知りたくなった。

「断罪はされたんでしょうかね。このナイフだけでは答えは出ませんね」

意味深な言葉を気にしつつ店を出た。

怖い話投稿:ホラーテラー 月凪さん  

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