高校の時、俺たちの間では奇妙な遊びが流行っていた。
その遊びとは、
まず、コップに雨水を貯める。その雨水が入ったコップに、自分の見たい夢の切れ端を入れる。例えば、エッチな夢が見たいなら、エロ本の切れ端を入れる。(笑
そして、ちょっと汚いが最後に自分の涎をコップに入れ、「この夢が見たい!」と五分ぐらい強く念じる。
すると驚くことに、その日はその自分が見たい夢を見れるのだ。しかも、その夢の中では、自分の思うように動ける。夢とは思えない、とてもリアルな感覚で。アイドルの写真なんかを入れて夢を見た奴もいた。
この遊びのブームは、ちょうど今のような梅雨時期に流行っていた。ただ、その遊びは梅雨の時期が終わる前に終わった。
それには、ある理由がある。
この遊びを広めたのは、俺の友達で怖い話が好きなリュウだった。
リュウは、この方法を怪しいサイトから見つけてきて1人で試したらしい。もちろん、最初は半信半疑、暇つぶしにでもなればと思いやってみたらしい。コップに入れたのはリュウの部屋に飾ってある某アニメのポスターの切れ端。雨は降ってなかったので、水道水で代用した。
「おいおいそこ結構重要じゃないのか?」と聞いた俺にリュウは「カルキ抜きはもちろんしたさ。」と返答。そういう問題なのだろうか(笑
するとその日リュウはそのアニメの夢を見ることに成功したらしい。そのリュウが、夢を見ることに成功した次の日に、
「二次元へ行けた!これはすごい!みたい夢が見放題だ!」とクラスで騒いだことから、俺たちのクラスでは、この遊びが一気に広がった。
その日からクラスの話題はこの遊びの話で持ち切りだった。やれ俺はあのアイドルの夢を見ただの、やれあのアニメに入っただの、みんなそれぞれこの遊びを満喫していた。
そして、みんなでやっていくことにより、この遊びについて詳しいやり方が分かってきた。水道水でなく雨水を使うと、夢の中での感覚はよりリアルな物になる。そして、コップに入れていいものは紙だけではないということ。
修学旅行で行った京都にまた行きたいと、京都で買ったキーホルダーをコップに入れた奴が見事に京都の夢を見ることに成功した。
見れる夢が広がってきた時、俺は、ある事を思いついた。
ハワイの海で泳ぐ、これだ。
みんな高校生であったことから、まわりはエロ本かアイドルの写真ばっかり使って夢を見ていた。だからだれもほかの事にこの遊びを使おうとするやつはいなかったのだ。(京都に行ったやつは例外、変わった奴だった。)
俺は、コップに雨水をため、パソコンでハワイの写真を探し、綺麗な海の写真を落として印刷、コップに突っ込んだ。そして、涎をコップに垂らす。
初めてこの遊びに挑戦する俺は、いまからハワイで泳ぐのだ、という期待を胸に秘めいざ夢の中へ。
俺が気付くと、そこは海の中だった。
ハワイの海は、俺が想像していたよりも綺麗で、何メートルも先まで透きとおっていた。カラフルなイソギンチャクや、綺麗なサンゴ、それらと戯れる熱帯魚達がこのマリンブルーの世界を自由に泳いでいる。
すごい、凄すぎる!というか本当に夢を見ることに成功した!
俺はその日目覚めるまで夢の中の海で泳いでいた。
その日の朝、目覚めた俺は、体に残る疲労感に驚いた。泳いだのは夢の中であって、本当に泳いだわけではない。だが確かに、体は一日中泳いでいたことによる疲労で疲れ切っていた。
この時俺は、「疲労までリアルに体験してしまうのか、この遊びは」くらいにしか思わなかった。
学校についてみれば、皆もこの遊びによる疲労からか、だんだん元気がなくなってきている気がした。
この遊びを広めた肝心のリュウもどことなく顔色が悪かったが、俺と話しているときにあることを俺に言ってきた。
リュウは俺と話しているときにあることを俺に言ってきた。
「俺の兄貴、覚えてるか?」
リュウの兄貴は、亡くなっている。俺らがまだ鼻ったれの厨房の時だ。リュウの兄貴はカッコいいバイクを乗り回していて、俺らの憧れだった。たまに後ろに乗せてもらっては、いろいろな所に連れて行ってもらったり、朝まで放浪したりしていた。リュウの兄貴は顔も良く、話も面白かった。リュウの兄貴の話す怖い話は絶品で、とにかく怖かった。話を聞いては、リュウと二人で怖がっていた。
そんなリュウの兄貴はやはりモテたようで、俺が見るたび毎回違う美人な姉ちゃんをバイクの後ろに乗せて走っていた。そして、リュウの兄貴は、一人でバイクに乗るのも好きだった。
リュウの兄貴は、バイク事故で亡くなった。リュウの兄貴はバイクで事故る前から、変な事を呟いていたらしい。実は、この呟いていたことが、リュウの兄貴の事故と関係があったのだが、それはまた別の話だ。
そんなリュウの兄貴を、俺は忘れられるはずがなく、リュウに
忘れるわけないだろ、○○○さんがどうしたんだよ?(○○○←リュウの兄貴)と聞き返した。リュウは、昨日のこのはやり遊びで見た夢の事を話し始めた。
以下、リュウの話。
「昨日俺は、この遊びを使って兄貴に会おうと考えた。そんで、亡くなった兄貴の形見の壊れたスピードメーターをコップにつけて夢を見た。すると、暗くてよく見えなかったんだけど、山?の谷みたいなとこに俺が立ってて、横には川が流れてるんだ。俺は、兄貴が周りにいなかったから、あぁ失敗した、と思ったんだよ。そしたら、兄貴のバイクの音が、川の向こうから聞こえてきたんだ。俺は兄貴の名前を叫んだ、軽く泣いてたかもしれない。
すると、兄貴の声が微かに聞こえたんだ。だから俺は、兄貴が喜んでくれてると思って、今そこにいくよ!って叫んだんだ。そしたら兄貴の凄い怒鳴り声が聞こえて、
「馬鹿野郎!今すぐ起きろ!これは夢じゃない!これは呪戯夢だ!」
って言われたんだ。俺は何が何だかわからなかったんだが、気付いたら起きてた。んで枕元のコップを見たら、コップ、割れてたんだ。」
呪戯夢?なんだそりゃ?と思ったが、リュウの兄貴は、意味のないことは言わない。俺はなんだか胸騒ぎがして、このことを親父に聞いてみることにした。俺の親父は、なぜかこういうオカルト関連の話にやたらと詳しい。だから、リュウの兄貴とも、怖い話繋がりで仲が良かった。
学校が終わり、俺はリュウと家に帰ると早速親父にこの出来事を話した。
実は、学校でこういう遊びが流行ってて、かくかくしかじかで、リュウの兄貴に呪戯夢という名前を聞いた、と。
この話を聞いて親父は最初、驚くとも哀しいともとれる表情をしていたが、一息、「ふぅー。」と長いため息をつくと、話し始めた。
呪戯夢というのは、この地方に昔あった、呪いや修行などに使った降霊術。本来この方法は死者との面会の為のもの。コップに入れるものは涎ではなく、本当は使用者の血液らしい。この方法で死者に逢ったものは、死者に自らの魂を引き換えに誰かを呪う、死者と交信し霊力を高めるということを行うことができる。実はこの土地は、ほかの土地よりも霊力の強いところで、昔はこの土地を攻めてくるものを呪いで守っていたらしい。だが、近代化が進むにつれ、だんだんこの呪いも忘れ去られていたそうだ。
幸いお前らはこの呪いの方法を悪用というか、くだらんことにしか使っていないようで良かった、だが、この方法を行うことだけでも、多少の代価、魂は持っていかれる。何回もやっていた奴はやばいかもしれんな。と。
俺とリュウは、このことをクラスメイトに話し、この流行り遊びは終結した。
呪いの効果のことは、悪用する奴がいるかもしれなかったので、あえて言わなかった。
使えば使うほど寿命が減るということを話して一応は収集はついた。
このことがあったおかげ?でリュウは霊感がついてしまったらしい。
リュウの兄貴に逢ったことが、リュウの霊感を強くしてしまったのだと親父は言った。
そして、あれからリュウはこの遊びの書いてあったサイトを探したらしいが、どうも見つからなかったらしい。
いろいろと謎は残っていますが、一応この話はこれでお終いです。
2回に分けての投稿、申し訳ございませんでした。
怖い話投稿:ホラーテラー ペロンチョさん
作者怖話