中編4
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ラーメン屋に潜むモノ

少女Aの後日談の3。

Kと付き合って半年が経ち、世間は間近に控えたクリスマスムード一色だった。

煌びやかなツリーを飾った商店街の道。

仲良く語り合う恋人達。

誰もが幸せ……かに思えたが

俺達、というかKはそんなの無関心だ。

露出狂か?と思わせた服装もすっかり成りを潜め、コタツに入り麻雀牌柄のチャンチャンコを着込み寒さをしのいでいる。

口を開くと決まって

「あぁぁ寒い寒い寒いお金ほしい寒い寒い…」の繰り返し。

俺はミカンの皮を剥きながら黙って聞いてる。

「ちょっと!聞いてんの!?」

「そんなに金欲しかったらバイトすれば?昨日チラシにクリスマスケーキの販売員募集してたぞ?高校生でもいいみたいだし、半日で6千円だってさ」

「本当?じゃあG行ってきなさいよ♪」

俺が?てか俺バイトしてるし…何故にかけもち?

俺はこの頃近くのラーメン屋で皿洗いのバイトをしていた。

一応Kにプレゼントを贈るつもりだったのは内緒だ。

そんな事があった翌日俺はバイト先にいた。

相変わらず店は閑古鳥が鳴いている。

準備中なわけではない。

理由を敢えて言うなら「不味い!」という事。

なんて言うんだろう?

全体的に病院の臭い?消毒臭いというか、とにかく不味いの一言。

何回か賄いを食べたが、あまりの不味さに驚いた俺。今では理由付けて断っている。

客来ないかな…と暇そうにしていると『ガラガラ』と久しぶりに入り口が開いた。

「いらっしゃい…」

一瞬凍りつく俺の視線の先には、例のチャンチャンコ姿にマスク姿、ダテ眼鏡のKが立っている。

「G〜!来ちゃった♪エヘッ」

俺は全身から脂汗が吹き出した。

あれほどバイト先には来るなって言ったのに…

Kが食べたら何言い出すか分かったもんじゃない。

「G君知り合いかい?それじゃあサービスしないとな!」

と50才手前、人の良さそうな店主Mが笑顔で話しかける。

「いらっしゃいませ…ナンデキタノ!?…シカモヘンソウシテ!」

「え?なに?なんか言った?…うーんとね、この一番高いカニ野菜チャーシューの醤油をGのツケで♪」

「ツケ?ツケナンテネーヨ!」

「浮いたお金でプレゼント買おうと思ったのに…ウルウル。お金とるんだ…」

「………カニ野菜チャーシュー醤油でーす!」

やっぱりこうなるんだ。

いや、それより問題は…

「お待ちどう様!」

「待ってたよぅ、待ってたよぅ♪いっただきまーす♪」

…ズル…ズルズル…ブッ!ゲホッ!

「…な、なにコレ〜!?」

おい!?頼むからそれ以上は止めてくれ〜!

バン!と両手をテーブルに付き立ち上がるK。

「ちょっとG!…」俺は駆け寄りKの口を塞いだ。

「K!どうした?…そうか熱が上がったのか可哀相に、帰って寝なきゃ駄目だよ」

「はぁ?何言ってんの?あんたにはアレ見えてないってーの?…ハッハ〜ン、なるほどネ♪………邪魔したわね」

そう言うと一人納得したKは帰ってしまった。

「すみませんMさん、病み上がりで本調子じゃないので帰ってしまいました。お代は俺払いますから」

Mさんは「いいよいいよ」と言ってくれたが、きちんと払った。

バイトが終わってKと喫茶店で待ち合わせした。

目立つ姿のKをすぐ見つけた俺は席に座るとニヤニヤしたKが

「なんかおかしいと思ったのよね〜、客がいないのに女の子雇って看護婦のコスプレさせるなんて。最初あんたが浮気してんじゃないかとチェックに来たんだけど……プッ!…アハハ!」

意味が分からない。

何笑ってんの?

「分からないようだから教えてあげる♪あそこ辞めた方がいいよ。看護婦の格好した女がうろついてたし…3人…いや奥にもいたから4人かな?」

俺は絶句した。

俺も霊感ある方だと思っていたが、全然気がつかなかった。

Kの話によると、Mがラーメンを作っているあいだ看護婦がMを見上げていたらしい。

それを俺が見ていたから、てっきり俺にも見えていると思っていたらしい。

だから病院の臭い?

何にしろKの話を聞いた俺は店を辞めた。

後日バイト代でKにプレゼントを渡すと、なんだかんだ言いながらも喜んでくれた。

そんなKからは封筒が1枚渡された。

「帰ってからのお楽しみ♪」

と念を押されたので自宅で開いてみると、中に紙切れが2枚入っていた。

それには『○○温泉優待券』の文字が…招待券でないところがKらしい。

…つーか、これ商店街のくじ引きじゃん!

「浮いた金で〜」と言うのは何だったのかよく分からないが…

Kなりに気い遣ったのだろう。

しばらくしてラーメン屋は潰れてしまった。

あとから聞いた話だとあの場所は昔病院があり、イジメにあった新人看護婦が何人か自殺しているそうな。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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