【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編3
  • 表示切替
  • 使い方

空腹のワケ

5年前の夏の時期

お腹が空いていた。

夏なんて逆に食欲落ちる方なのに、朝飯食べて30分ほどすると腹の虫が鳴く。

会社の昼休みにコンビニ弁当を二つ食べても1時間もしないのに腹が減る。

会社の先輩や同僚にも

「痩せてるのによく食べるね」

「食った物はどこに入ってるの?」

等と言われる始末。

食べても食べても太らないし腹も減る。

常に何か食べておきたい状態ってのが一ヶ月くらい続いた。

ある休みの日にアパートに一人暮らしをしている友人Aの家に泊まるつもりで昼間から遊びに行った。

友達とゲームしたりテレビ観たりしょうもない話ししながら過ごした。

Aは言う

「お前…ずっと何か食ってんな。見てて気持ち悪くなるわ」

オレは友達の家に行く前にスーパーでお菓子や惣菜やパンやらを買い込んでて、遊んでる最中にもずっと食べていた。

「なんかなぁ、一ヶ月くらい前から腹減ってしょうがないのよ。

別に腹痛くなるワケでもないし食ったら落ち着くからいいかなと(笑)」

「一ヶ月て、病院行った方がいいんじゃないの?」

「そうだな(笑)」

そんなやり取りをしながらも食べ物もほとんど無くなってきた。

いつの間にか夜になっていて腹も減る。

友達に

「腹減った〜。何かない?」

勝手に冷蔵庫を漁るが使いかけの野菜やら調味料くらいしかない。

「お前ホントよく食うな(笑)

何もないから何か買ってこようか?」

「マジで!?ありがとございまーす(笑)」

友達が買い物に出掛けてくれた。

空腹で気分が悪くなり横になっているといつの間にか眠っていた。

目が覚めるとそこは知らない場所だった。

辺りをよく見回すと、どうもお寺の様だ。

(???)

ガラッ

引き戸が開きAが入ってきた。

腕には包帯を巻いている。

「お前、その腕どうしたん!?

ってかなんでこんなとこにいるんだ??」

「お前こそ大丈夫か?…何も覚えてないんだよな…?」

全く意味がわからなかった。

その時Aが言うには

Aが買い物から帰ってくると、オレは冷蔵庫を漁っていたから

「お前どんだけ待てないんだよ(笑)

ほらっ、買ってきた……」

オレの姿を見て唖然とした。

使いかけの野菜や調味料を食い散らかしていた。

「おい!何やってんだよ!!」

止めたが聞く耳ももたずにバリバリと夢中で食べるオレ。

そのオレの顔を見ると、白目を向きプルプルと震えている。

「うわぁっ!おいっ!おいっ!」

Aが必死で呼びかけるがひたすら食べ続ける。

「ハラヘッダァァ」

オレの声じゃない声で言ったらしい。

それと同時にオレはAに飛び掛かり、Aの腕の一部を食いちぎりグチャグチャと喰った。

「ぎゃああああっっ」

Aが絶叫すると、隣に住んでいる人がその声を聞き来てくれて

オレを取り押さえてくれたらしい。

が、オレは異常な力で暴れまくっていたから、Aがガムテープやビニール紐でグルグル巻きにして拘束した。

それでもバタバタ暴れようとするオレのあまりの豹変ぶりにAは、親戚の寺に電話して住職に来てもらった。

住職は

「とんでもないもんが憑いとるな…」

ともらし、オレに向かって何か唱えながらお経の本かなんかで軽く

ポンポンと叩くとオレは落ち着いたらしい。

それからオレを寺まで運び、一日かけてお祓いをしてくれた。

それを聞いたオレだったが、信じられなかった。

「……オレまだ腹減ってるんだけど。」

「まぁ、あれからもう三日経つからな。

そりゃ腹も減るだろ(笑)」

笑いながらAは言う。

とりあえず住職さんにもお礼を言うと、ご飯を食べさせてくれた。

腹も普通に落ち着いた。

「あの…オレに何が取り憑いてたんですか?」

と住職に聞くと

「餓鬼ってわかるか?喰っても喰っても腹が満たされない

妖怪っちゅーか霊っちゅーか、それだ。

もう少し遅れとったらお前さんの魂まで喰われとったぞ。」

と言われゾッとした。

取り憑かれた原因ってのがハッキリとしてるワケではないが、

住職さんに言われたのが

お腹が空いてるのに我慢したり、ずっとそんなのを続けると憑かれやすくなるらしい。

餓死する人の中にはその「餓鬼」ってのに憑かれて死んでる人もいるみたいだ。

そんな事があって以来、オレは腹が減ったと思うと我慢せずにどこでも食べるようになった。

怖い話投稿:ホラーテラー カステラさん  

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ