12年11月怖話アワード受賞作品
長編16
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くるって

music:1

ある日、ある時、ある場所で

出会うべくしてであった運命の相手

それがどんな運命の相手だったにしろ

誰しも経験するだろう甘い初夜に起きた話....

これは俺と同様にオカルト狂のいとこAが最近体験した話。

に巻き込まれた話。

一回り歳の離れたAとは

俺がガキなのか気がやたらとあいよくいろいろ一緒にバカをした

Aも俺もビビリで物臭、

二人でいると心霊の話で盛り上がりはするものの、

『心霊スポットへ行こう!!』

なんてことには未だになったことがない、

なぜなら…怖いからだ(笑)

他に理由等はない

そう俺達は数多くいる好奇心旺盛な怖がりの一角なのだ

そんなAは俺より一回り(12歳)も年下で最近になって初めての彼女ができたらしく

心底惚れ込んでいる様子だった

話を聞くに、某m○x○のオカルトコミュのオフ会でひときは異彩を放つ彼女に一目惚れ、

その後Aのもてる全ての技術力(俺からの受け売り)を駆使して

どうにかこうにか彼女と付き合うところまでこぎつけた

Aと彼女の家は遠く、ベターな遠距離恋愛というやつになった

そんなある日Aからメールが届く

shake

sound:31

件名、無し

本文

やりたい

…とりあえず、

shake

sound:31

件名 無し

本文

ごめん、

俺は、お前をそうゆう風には

みれない。

とだけ返しといたが

話を聞くと案の定というかなんというか…

ただNetで繋がってるだけで

"付き合っている"

とルンルン気分を味わえる10代特有の恋愛観を、

満喫しきるのに男はそう時間はいらない。

オフ会であってから3ヶ月、

彼女になるまでに2ヶ月かかり、

そしてきたる日曜で付き合って1ヶ月記念になるのだという…

ともなると若者の頭はひとつのことで溢れかえる

例え明日世界が滅びようとも、どうやって生き残ろうかなんて考えやしない

きっとその頭のなかは揺らぐことなく考え続ける

やりたい…と

それが10代の男だ、仕方がない

そこで、

『あいにいってやれよ♪きっと彼女も喜ぶぞ』

と背中を押してやるとAは県を二つまたいで1ヶ月記念を彼女と過ごすべく意気揚々と出掛けていった

久しぶりの再会を無事すませ、

ショッピングにゲーセン、カラオケからファミレス…そして気付かなかったフリをして終電をあえて逃し準備は万端

笑いの絶えない1日だったし、エスコートもしっかりできた!!

自分に100点をあげたいとAは思ったそうだ

ただひとつ、会ったときからずっと変な違和感を感じていた

それは彼女がずっと左手に携帯を握りしめたままだということ

『何か連絡まち?』

と聞いても

『ちがう』、とだけ答え

『すぐ助け呼べるように持ってるんでしょ?急に襲ったりしないから安心してよ』

とおどけても

『ちがうよ、気にしないで』と、

笑って見せるだけであった

初めてあったオフ会でもそうだったかもしれない…

でも言われる通り気になどしないでこのあと待っているだろう薔薇色の夜を想像の思うがままに泳がせていたAは

『今日は二人の記念日だから特別な夜にしたいんだ!!』

と彼女の手を引き駅ぞいをひた歩く

二人はまだ免許をとれる年齢ではないため歩いての移動だ

駅ぞいにはラブホテルがあるはず!!

と、いう教えを覚えていたのか彼女の手をひいてぐんぐん知らない土地を歩くAと、観念したように手を引かれついてくる彼女…

そしてようやく見つけたそのホテルは

ボロボロで人気もなく、

何台か止まっているだろう駐車場のカーテンが閉まっていなければ、とても営業しているとは思えないようなホテルだった

街からもずいぶん歩いてやっとの思いでたどり着いた愛の巣…Aはもうここで他を探しにいけるほど我慢に余裕がなくなっていたらしく

ここにしよう!!と押し通して、無事ホテルへと入った。

この時入って5分しないで俺へとメールが届く

shake

sound:31

件名 兄貴ぃいい

本文

兄貴!!俺、今日大人になります!!ありがとう(*ToT)!!!

記念すべき我が城は

○○の秘密♪

PS.

兄貴のいってたシュコンッて支払いの筒があるホテルでした!!

使い方教えといてもらってよかった!

ありがと(笑)

すかさず返信する

shake

sound:31

件名 そかそか(^^)

本文

兄は微笑ましいぞ弟よ…

しっかり大人になってきなさい!!

○○の秘密!?

それ地元にもあるじゃんww

紳士的に優しく、野獣のごとく熱くその愛を伝えてきなさい!!

と返し時間も時間だったので眠りについた…

sound:32

sound:32

sound:32

sound:31

それから何時間がたっだろうか…

ふと目を覚ますと

着歴  13件

メール  1件

なにこれ!!!!!!!!!?

あわてて履歴確認

全てAから

メールを開くと、かなりテンパっていたのか全然何を伝えたいのかわからない

件名 無し

本文

兄貴寝てるよねごめん

くるって言われた

やはまいよ、ごめんたすけて

ここヤバイごめんたすけて!!

sound:32

電話をかけ直してもでない…

でない…

でない。

なにがなんだかわからなかったが

車のキーを手にもつと

携帯、財布だけをもってそのまま車に飛び乗りAがいっていた県へと走らせた

もう県境をこえ高速を走っているとAから電話がきた

sound:32

『A!?大丈夫か?どうしたんだ!?今無事か!?』

慌てていた俺はまくし立てるように質問をなげかけた

『兄貴…くるって…くるって…くるって…くるって…くるって…』

Aは壊れたレコーダーのように震える声で

くるって…くるって…

と続けていた

『落ち着け!!なにがくるんだよ!?今どこにいるんだ!?もう同じ県についたから!!今行くからな!!』

言い終わるか終わらないかの所で電話は切られた

もうなにがなんだかわからずとりあえずナビに"○○の秘密"とホテルの名前を入れてもああゆうホテルはナビじゃヒットしない…

とりあえず駅まで行き、

聞き込みを開始した…

すぐさま場所はわかった

車でならそう遠くはない距離だった

人づてに聞いた通りボロボロの外観に切れた電球がいくつかついた看板…

ここか…車を敷地内に入れようとしたとき

shake

バンバンバンバンバン!!

shake

と車の後ろを叩かれている

とっさにブレーキを踏みこみ、止まる

一瞬で硬直し動けなくなってしまった…

shake

バンバンバンバンバンバンバン

shake

叩かれ続ける車

音はどんどん助手席の方へと回り込んでくる…

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ

叫びたい、今すぐここから逃げ出したい

なのに怖くてハンドルを力一杯握りしめたまま動けないでいると

今度は助手席のドアノブが

shake

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

と扉を引きちぎりそうな勢いで開けようとしている

shake

バンバンバンバンバン

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

shake

バンバンバンバンバン

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

shake

『兄貴ぃいい!!開けてよ!!』

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

shake

バンバンバンバンバン

『兄貴!!くるってば!!早く開けてよ!!』

Aの声が聞こえて我にかえる…

助手席の窓を見ると

涙と鼻水と汗まみれで必死に車に乗ろうとしているAがいた

看板の影に隠れていたのだが俺の車を見つけてホテルに入る前に止めようと必死だったらしい

さっきまで恐怖に固まり、動けなかった手はAの無事を確認したことと車を叩いていたのがAだとわかったことで

また自由を取り戻していた

嫌な汗が力んでいた手のひらを濡らしていた…

鍵を開けてやると車に飛び乗るA…

『兄貴ぃ…よかった来てくれてありがとう、すぐ車を出してくれ!!

ここじゃヤバイんだ!!すぐくるって!!』

と尋常じゃない慌てかただった…

「わかった、わかったから.....」と、うなずきながら

俺は疑問に思ったことを投げかけてみた

『お前、彼女は!?1人で逃げたのか!?てかなにが起こってるんだよ!?』

すると以外な答えが帰ってきた

『頼むよ兄貴!!とりあえず車だしてよ!!くるってば!!もうきっとそこまできてる!!彼女がくるって…』

頭を抱えて震えてるAを見て俺もまた恐怖感が手のひらを湿らせる

とりあえず車をホテルの敷地内で方向転換させながらAを見ると

震えたままあたまを抱え込んでうずくまっている…

この古いホテルは、

いわゆる袋越路状のつくりになっていて中をクルっと回って外に出る最近のホテルとはちがい

もときた道へと車の正面を向けるために、

何度も狭い通路を

前に出したりバックしたり、

特に運転のうまい訳ではない俺は正面を向くまでに何度も何度も切り返しをしていた…

ちょうどあと一回切り返せば反対へと向きなおせるというところで

目に入ってしまった

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チカチカ点滅をしている看板の下

携帯を握りしめたAの彼女が立ってこちらをジーっと見ている

shake

一瞬ビクッ!!となったがAはまだ気づいていない様子だ…

『えっと…A…?』

『なに!?兄貴、頼むから早くここを離れよう…頼むから…』

Aはあたまを抱え込んで震えている

『残念ながら出たくても出れないんだよ…』

と、Aに伝えると…Aは不安げな顔をこちらに向けて

「なぜ??」

と目で訴えかけてきた

看板は出入口の上にあり後ろは袋小路、俺らが進めるのは彼女が立っている出入口のみ…

挟まれた…そう思った瞬間

彼女の携帯が鳴る

sound:32

プルルルルル…

回りには何もないからか

静かな空間に着信音が鳴り響く…

ピッ…

『もしもし、うん、大丈夫、あ、Aくんまだいるよ、うん、わかった、待ってるね、うん、は~い、ばいば~い。』

プツッ…プープープー

100m近くも離れているのにこんなにも音を聞き取れてしまうのは回りが静かだからか、それともそれだけ五感が研ぎ澄まされているからか…

どちらにせよ、俺たちが追い込まれている状況にはかわりない

『Aく~ん、くるって』

彼女はこちらに向けて言葉を投げ掛ける

『Aく~ん、くるって~』

チカチカ点滅する看板が照らすたびに

焦点のあわない人形のような彼女が見え隠れする

『Aく~ん、くるって』

『Aく~ん、くるって~』

『Aく~ん、くるって』

『Aく~ん、くるって~』

彼女は叫びながら車へと突っ込んでくる

その姿は清楚な”ヒラヒラ”花柄ワンピからは

想像もつかないほど猟奇的なものだった

どう見ても彼女は、いわゆる

”女の子走り”をしそうなタイプなのに

両手を前にブンブンと突き出して大又を広げて走りよってくる

ミスマッチなものほど組み合わさると人間離れして見えてしまう

残り60m....

『Aく~ん....あは、あは、あははははは』

さすがに俺もパニくる

がどうしていいかわからない

残り40m....

『くるって~、ねぇAく~ん、ねぇえ、ねえぇぇ~』

いつだって現実は無慈悲だ

逃げ道は未だになし

30m....

どうする!?

20m....

ズッズッ.......

隣の小心者の鼻をすする音....

「泣くなバカw」

突っ込んでる俺も実はオーバーヒート寸前

10m.........

あぁ...神様.....お慈悲を.....

shake

ガン!!!

shake

彼女は車の正面、フロントにスピードを緩めることなく突っ込んできて

言った

『Aく~ん、くるって~』

『うわぁ~もう勘弁してください!!!

A頭を抱え込み心底震えていた

俺も心底硬直していたのあは言うまでもない

だが彼女の目はAしか見ていない

『Aく~ん、くるって~Aくん、くるって』

『ねぇAく~ん、くるって~Aくん、くるってよぉ』

『Aく~ん、Aくん、くるってさぁ』

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

そのままフロントによじ登る彼女

近くで見ると顔の周りには泥がついていたり

髪には葉っぱが絡まっていたり

膝や腕には擦り傷がある

shake

バン!

彼女はガラスに張り付きながら続ける

『Aく~ん』

shake

shake

バンバン!!

両腕をフロントガラスに何度も何度も叩きつけて

『くるって~』

絞り出すような声を出しながら

また腕を振りかぶって

shake

バン!

『Aく~ん』

バンバンバンバンバンバンバンバン!!!!!!

shake

何度も打ち付けているから彼女の白かった肌は

内出血をおこし、赤黒く変色してきている

『Aくん私とくるってさ~』

そう言うと初めて俺の方へと顔を向ける

shake

バンバンバンバン!!!!!

『Aは俺と帰んだよ!!どけお前!!』

と俺が叫ぶと、さっきまでヒィヒィと声をあげながらあたまを抱え込んでいたAの限界がきたらしい…

パニックの絶頂におちいったAは彼女の視線が自分から離れていることに気付き

ドアの鍵を開け扉を開け放ち外へと逃げ出そうとした

『うわっバカッ!?』

と、とっさに外へと飛び出すAの首根っこを掴み力任せに中へと引き戻し鍵をかけた瞬間

shake

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

shake

フロントから飛び降りた彼女が髪を振り乱しながドアノブを力任せに引っ張っている…

『Aくん、Aくん、Aくん、Aくん、Aぐん、エェくん、Aぐん、Aくん、ぇえくん、Aく~ん』

彼女は泣きながら叫んでいた

『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい』

Aも泣いていた

『モテる男は辛いなAww』

なんだか少し楽しくなってきたので

硬直したままのAにいやみをたっぷりこめ言葉をかけた

また助手席の窓を叩こうと彼女がドアから手を離した瞬間

アクセルを踏み込みその場から逃げ出すことに成功した

家についたのはもう、明け方だった、そのまま仕事へ向かわなければいけないのかと思うとまた長い1日になりそうだなと覚悟を決めたのだった…

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あぁ、ついでに帰り道、Aが話してくれた事の発端と顛末を書いていこう

事の発端は…

ホテルに入り早々に服を脱いでバスローブに着替えるお馬鹿なA、

『早く彼女ちゃんもバスローブに着替えちゃいなよっ♪』

『もうっエッチ…私はお風呂入ってから着替える!!』

ベー、と可愛くいたずらにあっかんべーをして

彼女はお風呂にお湯を張りにいったそうだ

そして残されたAはお風呂前にトイレトイレ…と

トイレへ向かった…入る寸前にズボンのポケットに携帯をおきっぱなしなのを思いだし

ズボンをガサゴソしていたら彼女が戻ってきた、

『どしたの?』と小首をかしげて訪ねる彼女にAは

『ちょっとトイレ♪』と携帯片手にトイレへいった

トイレでは俺にメールを送り、"君にもできるテキニッキ講座!!"なるA御用達サイトの確認をしていたそうだ

すると部屋から彼女の着信音が聞こえる.....

sound:32

トイレは冊子しきの薄っぺらい扉なので会話はまる聞こえ

彼女が電話に出る

『もしもし、あ、うん、大丈夫だよ』

だとか、

『Aくんは大丈夫、きっとAくんはそうゆうことしないから』

だとか、

『うん、ありがと、えぇ…やっぱりしないとダメ…?わかった…確認してみるね…』

........

『うん…ありがと…うん、じゃまたね…』

という内容を聞き取った

チキンのAはこの時点で

(えっ…なになになになに!?だれ?なに確認て?)

と、軽くテンパり初めてたとか、

出るタイミングもわからなくなり何だかんだで

10分くらいトイレにいたがあきらめて外へと出てみたらしい

そこにはさっきとはあからさまに雰囲気の違う真剣な面持ちの彼女が座っていた

『大丈夫?お腹いたいの?長かったからさ…携帯もってって何してたの?』

詰め寄る彼女に、

兄貴分に今からエッチする報告をしてただの、

エロサイトで素敵テクニッキを確認してただの言えない…

なおのことしどろもどろするA

『見せられないものでもあるの?』

詰め寄る彼女…

『ねぇ、携帯見せて!!』

なおも詰め寄る彼女…

『な、な、なんで俺が見せなきゃなんないんだよ!?』

『それって俺を信用してないってことだろ!?そっちこそ誰と話してたんだよ!?』

『友達、やましいことがないなら見せられるでしょ?Aくん!!』

そんな押し問答が続き…

彼女はAといい争いながら左手の携帯を見もしないでなにか操作していた…

チラチラAが見ながら問答を続けていると…

彼女はデータフォルダーを開き、

見ていないのに器用にミュージックを選び、再生させた…

sound:32

プルルル…

彼女の着信音…

sound:32

プルルル…

『あっ…ごめん…ちょっと電話に出るね、』

彼女はあたかも電話がかかってきたかのように振る舞っている…

『もしもし、うん、あっ…大丈夫だよ…』

『うん、Aくん、悪い人じゃないし…えっ来るの…?』

少し不安そうにAをみる....

『う…ん…わかった…彼女ちゃんにもあってもらった方がいいよね…』

『わかった…は~い、じゃ待ってるね…うん。』

ピッ…

彼女は一人であたかも誰かと話してるかのように振る舞っていた

『話の途中だったのにね…ごめんなさい…』

『それと今から私を任せるのが不安だからって友達の"彼女ちゃん"がAくんに会いたいって聞かなくて…くるって…ごめんなさい…大丈夫だって言ったんだけど…私のこといつも守ってくれるから…』

はてなが頭を埋め尽くすAはとりあえず聞いてみた、

『えっと…"彼女ちゃん"て、"彼女"?』

目の前の彼女を指差しながらAは尋ねる

『うんん、違うの、同姓同名って言えばいいのかな?ちっちゃい頃からいっつも一緒にいるんだ♪』

彼女は平然と説明しつつニコッと微笑む

『え?いや、だって今携帯自分で鳴らしてたじゃん…?』

そんな説明で納得なんていくわけがないAは畳み掛けるように聞く

『なにいってんのAくん?話をすり替えないで!!今はAくんの携帯を見せてもらうって話でしょ?』

もう、この時点でおかしいと思い始めていたAは話をはぐらかしながらとりあえず服を着始めた…

『ちょっとなんで今からお風呂入るのに服きてんのよwおかしなAくん♪』

『いや…まじめな話するのにバスローブじゃちょっとね…』

と言うと、目をキラキラさせながら彼女は言う

『嬉しい!!やっぱりAくんは

他の男なんかとは違うよね!!私のこと愛してるから携帯も見せてくれるんでしょ!?』

まっすぐに、清らかにしか見えない目で見つめてくる彼女

『いや…それはちょっと…』

と視線をそらし下を見ると

左手の指がまた動いてる…

(まってやめて、それ怖いから....)

この時点でAの性欲を恐怖が侵食し始める

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データフォルダ…ミュージック…

着信音…

鳴らす…

sound:32

プルルルルルル....

ピッ…

『もしもし、うん、もう駅まできたの…わかった…』

(ええええええええ)

Aは心の中で叫ぶ

『じゃ~そのまま線路沿いを○○方面に向かってきて…うん、○○の秘密ってホテル…うん、待ってるね…』

ピッ…

『Aくん、私ね、前の彼に狂ってるって言われたの…』

『普通の男じゃお前とはいれないって…私はそうは思わないんだけどさ…』

『なんかみんな私がお願いするとすぐ嫌がって逃げちゃうんだ…あっ彼女ちゃんもう、くるってさ…』

もう、Aは逃げ出したい衝動を押さえられなかった…

風呂場の方から水の溢れる音が有線の音楽に紛れて聞こえていた…

『わかった…彼女ちゃんが見せろっていうなら見せるよ…でもまずはお風呂の水、止めておいで…』

そういって微笑みかけたAの不細工な微笑みに拍車がかかる

彼女はニコ~っと微笑むとお風呂場へペタペタと小走りでかけていった…

そしてAはすかさず自分の荷物をもって逃げ出したのだという、

結局行き場もなく駅の方へと走り続けた、

その間も俺へと連絡をいれ続けたのだが出なかった…

何度も彼女が追いかけてきてるのではと後ろを振り返ったりした

駅についても始発まで時間があるし…彼女が来るかもしれない…

Aは行き場がなく駅のトイレにたてこもっていたらしい

するとどれくらい時間がたったのか…俺からのコールバックが来た!!

やった!!助かった!そう思い電話でテンパっていると…

トイレの外から着信音が聞こえる…

sound:32

プルルル…

とっさに俺との電話を切ってしまう…

ピッ…

『もしもし、うん…やっぱ彼女ちゃんの言うとおりだった…』

『うん、ごめんね…うん、やっぱり狂ってもらわないとダメなんだよねきっと…』

『そうしないとAくん私といれないんだよね…うん、わかった…ありがと…わたし頑張るね!!うん、またね!!は~い…』

気付かれてた…?

いや、気付いてないだろ…てか男子便所だし、入ってこないだろ…

なんて安直な考えで落ち着こうとするAだったが…

視線を感じて上を見ると

彼女がいた、

ドアの上に手をかけ、顔だけこちらを除きこみながら言った

『Aく~ん、狂って~』

化粧が崩れたのか目の周りは真っ黒

ただでさえ大きな目をよりいっそう見開きAを凝視する

もう、彼女の可愛いかった面影はなくなってたらしい…

すぐにまた彼女の顔は見えなくなり

かわりに

shake

ガン!!!

と下の隙間から細い腕が入ってきた

危うく足をつかまれそうになったがAはトイレの上から隣の個室へと落ちるように移って

すぐに扉を開け走った

彼女は腕が挟まっていたからかしゃがんだまま動けないで腕を引っ張っていた

そこからは必死に逃げ出したAは

きっと兄貴は○○の秘密に来る!!

sound:38

そう信じ、線路沿いの草むらを泥だらけになりながらホテルまで戻り看板の近くに隠れていたそうだ

何度か彼女の着信音と、独り言…?が聞こえたらしいがみつからないよう逃げ回っては

またホテルにもどりを繰り返したらしい…

nextpage

そして俺の車がホテルについたということだった

その日以降は何事もなく、連絡もなかったらしい

数ヵ月は.....

常に周りに女気のないAに

『A、最初の彼女にふさわしい思い出深い子だったなww』

とふとしたときにからかうネタが増えたとから、かっていたのだが

苦笑いしながらAは答える

『もの凄く可愛かったんだけどな~彼女もいろいろあったみたいだし…』

ん?いやな予感がする.....と思うのはこいつをよくしっているからだ

『最近また仲直りしたんだ』

その予感をこいつが裏切ったことはない

懲りたのか懲りないのかわからないが

なんだかこいつらしいし、

今ではどうか彼女がAで癒され

幸せになれるなら.......

それでもいいのだろう......

たぶん.....

きっと......自分に言い聞かせている

たまに彼女とAが家に来るようになるのは彼女が一足先に免許をとってからだが....

それも近い話だ

『俺さんも一緒に出かけますか??ドライブ行きましょ♪』

笑う彼女はやっぱり可愛くてAにはもったいない

『Aくんもくるっていってるし♪』

あたりまえだ、と笑う俺をいたずらに見る彼女の

見えない闇に少し引かれる

なにはともあれ

頼むから俺を巻き込むなと深く願うばかりだ。

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