佐伯一家シリーズ〜壱話・つけてくるのは〜

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佐伯一家シリーズ〜壱話・つけてくるのは〜

俺の名前は【佐伯 海(さえき かい)】

小さい頃から霊媒体質で迷惑な事に、見える・触れる・話せるの三拍子ときたもんだ。

ただ話すのは波長が合わないと中々難しい。

幽霊や妖怪といった類は、現代でも存在しているのか証明はされていない。

しかし、逆に存在していないとも言い切れない。

なぜなら科学では説明出来難い現象は年に数例起きており、[見える]という人もいるからである。

俺もそんな[見える]人の一人なんだけど、こないだも風呂場で…

___『ただいまー。』

おっ、今日はカレーか。

玄関までいい匂いが漂っている。

『おかえり、今日はカレーやで。』

台所の方からオカンの声が聞こえた。

ビンゴ、部活帰りで腹の減っている俺は匂いに釣られて台所へと向かった。

『腹減ったー、今食うわ。』

しかし、すぐに食べる事は出来なかった。

『今日はお父さんがもうすぐ帰ってくるらしいから先にお風呂入ってき。久しぶりに家族皆で食べよ。』

オトンが帰ってくるのはいつも遅い時間で、こんなに早く帰ってくるのは珍しかった。

久しぶりに親子が揃うということで風呂に入り待つことにした。

まあ部活帰りで汗臭かったしね。

そういう事で風呂に入り頭を洗っている時だった。

目を瞑っていると、よく前や後ろに何かいるような感じがするときないか?

ふとそんな感じがしたんだ。

俺の場合、こういう時は九割の確率で[見える]。

とりあえず、シャンプーを流そうと思い蛇口を手探りで探す。

ヒタッ、と冷たい手のようなものに触れた。

とりあえず蛇口を捻り、シャンプーを洗い流す。

そして、目を開けるとやはりいた。

浴槽から子どもくらいの手が出ている。

いくら見えるのに慣れたと言っても、こんなに至近距離だと流石にビビる。

『おい、ここはお前のいる場所じゃないぞ。』

追い払おうと心の中でも出ていけと念じた。

ビビりながらも頭の中は意外と冷静で、どこで憑いてきたのか考えていた。

(絶対あそこだ)

帰宅途中、少し深めの用水路がある。

そこで先週、雨が降り増水したところに子どもが落ちて亡くなったと聞いていた。

実際に花やオモチャなどが添えてあり、その事故は新聞にも出ていた。

まだ小学一、二年生くらいの子だったはずだ。

と、呑気に考えていると浴槽から徐々に頭が見えてきた。

『うっ…。』

ドブ川のような異臭が鼻をつく。

ゆっくりと顔も見えてきた。

顔や手はパンパンに腫れ上がり、見るに耐えない。

少し引っ張ると皮膚がズルっと剥けそうな感じがした。

同時に声が聞こえてきた。

『だず…て…すげで…けて……』

頭の中に響いてくる。

たすけてたすけてたすけて…

何度も何度も。

(無理だ、お前は死んでいるんだ。早く成仏しな。)

心の中で強く念じた。

するとフッと身体が軽くなった感覚がした。

意外とあっさり終わり、異臭は消え、浴槽を見るともう何もいなかった。

『ふぅ…。』

安堵の溜息が出た。

今回みたいに霊が憑いてくることは間々あった。

強張った身体をほぐそうとさっさと身体を洗い、湯船に浸かった。

『変わって』

何処からか、しかしはっきりと聞こえた。

ゴボッゴボボッ!

何かに湯船へと引きずりこまれた。

さっきの子だろう。

これは少しヤバイかな。

息が出来ない…。

(俺を殺しても変わることは出来ない。)

強く念じる。

それでも力は弱まらない。

『変わって』

目の前に、不気味な子どもの顔が…。

水中なのにハッキリと見えてしまう。

(こんな事をしていたら、お父さんやお母さんが悲しむぞ。やめろ。)

再び、強く念じる。

引きずり込む力が弱まった。

『ぶはっ!』

空気が肺いっぱいに入るのが分かる。

『うっうっ…会いたいなあ、お父さん、お母さん』

姿は見えないが、子どもの泣き声がする。

『早く成仏して、天国に行きな。』

不気味な姿こそしていたが、まだ子どもなんだよな。

ガラッと風呂のドアが開いた。

『あんた、さっきからバシャバシャ何やってんの。早くその子祓って、お父さん帰って来たよ。』

そう言いながら塩を渡す俺のオカンも[見える]人だ。

『分かった、すぐ上がる。』

適当に塩をふり、早く成仏しろと念じておいた。

『また憑けてきたのか?』

そう聞いてくるオトンも[見える]人だ。

まさに、この親にしてこの子あり。

ついでだが、俺の横でカレーを頬張ってる姉ちゃんも[見える]。

何故か三人とも坊さんや巫女でもないのに自力で霊を追い払う。

だから家まで憑けてくるのは俺だけだった。

何かコツがあるのか聞いたところ、お前がシャキッとしていなからだと返された。

まあそんな事はどーでもいいか。

翌日、用水路に沿った道の、ある一箇所に沢山の花やオモチャが添えられている場所に俺はいた。

『オレンジジュースで勘弁してくれ。もう憑いてくんなよ、早く成仏して楽になれ。』

近くの自販機で買ったジュースを添えておいた。

去り際に、あの子の両親らしき人物とばったり会い礼を言われた。

悲しみを抑えた何とも言えない笑顔で。

死んだ方も、残された方もどっちも辛いよな。

『ごめんなさい、ありがとう』

そう声が聞こえた気がした。

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怖くて切ない話だ

ヤバい、泣きそうになった。
佐伯家、すごいな!
霊=怖いばかりじゃないんだな。

いい話ですね!こーゆー話好きです!