中編3
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AM 3:00

その晩、私はクラスメイトと一緒に山の広場に建つバンガローにいた。

今日は、ずっと楽しみにしていた一泊二日のキャンプで今は先生たちから配られた夜食のゼリーやらジュースやらを飲み食いしながら楽しくガールズトーク中である。

「でさー、正直なところ、みっちーは勇太君のことどう思ってるの?」

申し遅れた。

私の名前は青田 未知。中学2年生である。

「またその話?勇太は、ただの幼馴染だってば。」

嘘だ。

本当は、今年に入って既に片想い8年目をむかえている。

でも、それを知っているのは現時点で私だけ。

まあ、直感的に確信してる子は絶対何人かいるのだろうが。

そんなわけで、皆でワイワイキャーキャーと

楽しく夜を過ごして皆が眠りに着いたのは午前3時前の事だった。

皆はスヤスヤと夢の中なのに、何故か私だけが寝付けずにいる。

頑張って寝ようとしてみるけれど、瞼は簡単に開いてしまう。

外ではコオロギが鳴いているばかりだった。

辺りが静かだから、一層鳴き声が大きく聞こえる。

もういいや。

寝るのは、諦めることにした。

いつか眠くなるだろう。

そう考え、眠くなるまでの暇つぶしと称して3ヶ月前に買ってもらったスマホでサイトの巡回を始めた。

ちょうどその時だ。

ガチャリ。

バンガローの扉が開いた。

やばい。先生かな。

素早く携帯を隠して寝たふりをする。

「バーカ、バレバレだっつーの。」

あれ?この声は…

「ゆっ、勇太…⁉︎」

間違いない。私の幼馴染である朝宮 勇太だ。

心臓が一気に跳ね上がりそうになった。

「あっ、あんた何しにっ…。」

「しーっ。」

勇太は、自分の口元に指を当てると、周りを見回しながら言った。

「あんま、大っきい声出すなよ。未知を誘いにきたんだからさ。」

あ、れ。今なんて?

誘いに…?未知を…?

「星がさ、すげー綺麗なんだ。山だからずっと近くに見えるし。だから、未知にも見せてやりたくて…。」

な、何なんだ、この展開は。

一瞬、ある漫画のシーンが思い浮かぶ。

男子が女子を連れ出して星空の下で告る…シーン。

いや、ないないない。いや、でも……

「行きたい。」

気がつけば私はそう返事をしていた。

最初に外に出てわかった事は、あんなにうるさかったコオロギの声は止んでいたことだった。

「ほら、見ろよ。」

勇太が、昔より随分筋肉のついた腕を上に向けた。

つられて私も上を見る。

そこには、ついため息が漏れてしまいそうな大満天の星空が目の前に広がっていた。

「すごい…!」

前に学校の行事で行ったプラネタリウムとは全く別物だ。

こっちの方が100倍美しい。

「未知、こっちの方がよく見えるぞ。」

勇太は、私の腕を掴んで走る。

私、なんて幸せなんだろう。

その時だ。

後ろから何者かに強い力で腕を掴まれた。

やばい、今度こそ先生か?

「アホ、何やってんだ!」

あ…れ?何で?

何で、勇太がいるの?

そして、何で私はフェンスの手すりに登ってるんだろう。

向こう側は、ただの崖なのに。

「アホ!俺が見かけて止めてなかったら、お…お前落ちて…死んでたかもしれないんだぞ!」

震えた声で、そう怒鳴る勇太を前に私は呆然と立ち尽くすことしかできないでいた。

今日もどこかで、一番鶏が鳴く声が聞こえた。

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