中編3
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死んだ部屋(前編)

彼女は、何も話さない。

Sの事を、そして、あの晩何があったのかという事を。

これは兄貴が死んでしまってからの、俺達4人の話。

『首いてぇ…』

事故の後遺症だろうか、むち打ちなのだろうか、寝起きは首が痛い。

何度かの事故を経験して学んだことは、

保険の手続きの仕方と、その面倒くささ。

回数を重ねるごとに、周りは心配から、またか?と言う、呆れに変わる反応。

そして、身体へのダメージは後からやってくること。

俺の入院している間にファラオ(愛犬)の世話をしてくれていた心の優しい人がいたらしい。

感謝を伝えようにも連絡をする根性のない自分に腹が立つ。

夜道、コンビニまでの短い散歩道、Cさんに久しぶりにあった。

『また派手にやったんだね。』

傷跡の少し残った顔を見てCさんはニコッと優しく微笑む。

『お久しぶりです、なんだか派手にやっちゃいましたがもう元気です!!』

その夜は帰りたくなかったからか、それとも久しぶりにCさんに再開したことで、胸のズキズキとした小さな痛みをドキドキとはき違えたのか、口がペラペラと勝手に言葉を並べていた。

『この後飲みに行きませんか?』

と、口を滑らせたときにはさすがに、あっ…早まった…と表情の全面に大々的にでていたのだろうけど、Cさんはクスクスと笑いながら、

『いいよ、飲みにいこっ♪』

と、快く承諾してくれた。

数時間後、コンビニで買った酎ハイにハイボールの安上がりな宴もたけなわ、浮き足立ち、心躍り、有頂天の風にあわせて下手くそな口笛を吹きながらその夜は帰った。

なぜそんなに浮かれているのかと?聞いてくれるか誰か?

意味もなくCさんと交わした次の面会の約束を思い出す。

大のオカルト好きな俺は他に話すこともなく、最近仕入れた、

『死んだ部屋』の話をした。

そして、そこへ行こうと思っていること、Cさんも一緒に行きませんか?と説明半分、説得半分で話し、承諾をえたのだった。

浮かれる足は家の前で急速に重みを取り返し、重力を増し、動くことをやめたのだが、

それは部屋の前で見慣れた影を見つけたからだった。

『元気そうで何より、飲んでたんだね?顔赤いよ、元気そうなので帰ります。』

早口でまくしたてられ、ただでさえこちらは、Cさんよりも久しぶりの再会。

スタスタと横を通り過ぎ帰ろうとする“元”彼女ちゃんをとりあえず引き止めたくて、出たのは、

『あれ、髪切った?あ…えっと、似合ってるよ、あ、あ、それと、ファラオの世話ありがと…今度、死んだ部屋に行こうと思うんだけど、一緒に行く?』

という、なんだかまとまらないしどろもどろした言葉達だった。

なぜ、元彼女ちゃんこと、Nちゃんを誘ったのか…それは、相変わらずNちゃんのオカルトコミュで仕入れたネタで、さらにNちゃんも行こうとしていることを知っていたからだ。

未だに俺は、Nちゃんのオカルトコミュの住人なのだ。

Nちゃんは無言のまま何粒かの涙を流すと

『今夜、泊めてくれる?』

と聞いてきた。

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お疲れ様です。なかなか見れなかったのですがやっと新作読めましたのでとりあえずコメントをさせて頂きました。また続きお願いいたします。

続きが気になりますね(*^^*)毎回楽しみにしています