中編5
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ごめんね ありがとう

ずっとずっと昔の話しです

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小さい頃から親は遅くまで帰らず、家には

妹と2人きりの殺伐とした生活が続いていた

放置という虐待

虐待という言葉も、その頃には

まだ、なかったけどね

母親は生活が苦しいわけでもないのに

水商売をしていて若い子と同じように

明け方まで遊んで、帰って来ない日が多かった

父親は、そんな家庭を嫌い遅くまで

どこに行っていたんだか帰って来なかった

食事も百円玉が数枚おいてあり今のような

コンビニも近くにない時代

お肉屋さんで毎日コロッケを買って食べていた

その時は、自分の感情なんて考えたり

しなかったし良く解ってなかった

そんなもんだと思っていたのだろう

でも本当は淋しくて淋しくて

仕方がなかったんだと思う

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中学に上がると同じような奴らの仲間が出来た

今の若者のようにニュースになるような

変に悪いことはしなかったけれどね

警察にお世話になったこともないし

まあ…

ただの不良少女

ブリーチかけてメッシュ入れて

ズルズルの長いスカートにエナメルの靴

まわりからは、白い目で見られていた

タバコに、万引き、カツアゲを少々………

これも立派に悪いことか…

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学校なんて、行かない日も多かったし

行っても体育館で遊んでたりしてた

親は呼び出しされても1度も

来なかったから叱られる心配もない

荒れてた……

そんな生活が当たり前になった

中2の頃から悪夢に悩むようになった

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夢に、お爺さんが出てくる

知らない人

突然見るようになった

その頃、私の部屋は溜まり場になっていて

いつも数人の友達がたむろしていた

父が帰ってくる、午前2時過ぎに寝て

朝、カーテンの隙間から父が車に乗り込み出勤するまで

静かにしていて

「行った?行った?」なんて確認してから

好きに騒いでいた

music:2

その場面と同じ夢を繰り返し見た

私を含め皆もいるのに

もう一人の私がいる

もう一人の私は爺さんに首根っこ捕まれて

凄い形相で

「ほら!見ろーー」と怒鳴られている

怒鳴られてるのが解るけれど、

口パクで実際の声は聞こえない

それが妙に怖かった

客観的に見ると自分のしてることも

ひどいと思えて

起きると毎回、泣いていた

music:2

ある日は友人が夜中にうちに来てから

一緒に出かける予定だった

今から思うと、一緒に行こうとしていた

所は、ちょいヤバイ場所だった

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深夜に待ち合わせをしていたし

珍しく部屋には誰も

いなかったから、ベットで横になると

いつしか寝てしまった

どのくらいたったのだろう

胸に強い圧迫感で目が覚めた

………

金縛りになっていた

痺れに似た感じで動けない…………

あれ?誰か座ってる?

動けない身体で眼球だけ動かし見た……

shake

あの爺さんだ

正座で後ろ向きに座っている

その時、

「おまたせー」って玄関が開いて階段を上がる

友達の足音が聞こえた

早く……

早くきてーーーーー

声にならなかったけれど叫んだ

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爺さんは正面に正座したまま首だけで

……振り向いた

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sound:33

その顔は、いつものように険しい顔で

私を見ている

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wallpaper:126

なんなんだよ…………

あの爺さん…

ふざけんなよ…

どこで取り憑かれたんだ?……

何でワタシなんだよぉ………

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毎日のように見る悪夢で疲れていた

夢で見る自分の姿にも後ろめたい気持ちが

強くなり今の生活が嫌になった

溜まり場になってた部屋も綺麗にした

夜中に出歩く事もなくなり

退屈だから学校も行き出した

悪い友達も離れて行った

普通の友達も多くなっていき

いつしか夢も見なくなった

あの爺さんの存在も忘れかけていた

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目標の高校に入学したとき、祖母が亡くなった

父は6人兄弟だったが、こんな生活だったので

疎遠になっていた

記憶の奥底に残ってた祖母の家

昔は牛を飼っていてトイレが外にあるのが

怖かった

今は、こっちと変わらない

それでも本家は田舎で大きな家だったので

葬式は家で行われていた

まだ、準備の段階で親戚以外は誰も

来ていない

葬儀屋が慌ただしく準備をしている

……

広い畳の部屋で真ん中に寝かされてる祖母

こんな小さい人だったっけ

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続き部屋の先に立派な仏壇があった

仏壇の上の壁には、古い額に入れられた

沢山の白黒写真が飾られている

ご先祖様?だろうね

さほど、興味はなかったが何となく

はじから見ていく

やっぱり父親と似てるみたい

………………………………!

music:6

何枚目だろう

白黒の写真の1枚に、目が釘付けになる

同時に全身の毛穴が開く

あの爺さんだ

久しぶりに見たけど忘れもしない、

険しい顔

あの爺さんがなんで?

母親の葬儀なのに寄り添うでもない

父親に聞く

「………ちょっと…!この人は誰よ?」

「俺の父さんだよ」と父が言う

…………………………………………!

まじ?

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music:1

言葉が出なかった

祖父は父が14歳の時に交通事故で死んだ

厳しい人だったが家族を大切にする

良い父親だったとのこと

父に初めて夢の事を話した

父はみるみる、顔を赤くして涙が溢れだした

後から来た母親が私達の姿を見つけて

どうしたの?と顔をしかめる

父は、あんな家庭だった私が

心配だったんだろうと

どうして、そんな事になってしまったのか

独り言のように繰り返し言いながら

泣いた

そんな父を見て母親も背中をさすりながら

泣いていた

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位牌に手を合わせた

ごめん… おじいちゃん

ありがとう…おじいちゃん

父は、仕事が終わると

早く帰って来るようになり

母親も勤めを変え、家にいるようになった

今から思うと良く、元に戻れたと思う

とりあえず…

10年ぶりかに、家族で夕飯を食べて

笑う日々が来た

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爺さん、聞いてる?

どこかで見てる?

もう、爺さんが

出てこなくてもいいように

頑張るから大丈夫だよ

お父さんもお母さんも努力してるよ

きっと普通のどこでもある家庭に

なれると思うから

……

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これも不良時代に本当にあった話しです

爺さんが出て来なかったら

今、どんな自分になっていたのかな

家族は、きっとバラバラになっていたのかも

だけど爺さん!

まだまだ………

見守っていてよ

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怖いけど、とってもいいお祖父さんですね。
見守ってくれているんですね。