中編3
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ノロちゃん

遅れてるなあ。僕は言った。

ノロちゃんはヘラヘラ笑って、そう?と言う。

このやり取りは何も今始まったことではない。

ノロちゃんはいつも遅れている。

結構前にアニメの絵が印刷されている消しゴムが流行った。

だけど、ノロちゃんは数年前に流行ったカドケシを持ってきて自慢した。

そのときもこのやり取りをした。

今だってそうだ。

今はある怖い本が流行っているのだが、ノロちゃんはうげつ何とかという本を持ってきたのだ。

僕はそうでもなかったが、周りの人から見たら、気味が悪かったらしい。

「その本相当古くないか?」

僕は訊いた。

「そうかな?」

ノロちゃんは明らかに煤けて、触っただけで破損しそうな本を掲げた。

ノロちゃんは目が悪いわけじゃない。

やっぱり、遅れているんだ。

その日から、ノロちゃんは苛められたわけじゃないが、昔から来た奴だと噂されるようになった。

僕とノロちゃんの家は近い。だから、登下校はいつも一緒だ。

今日もノロちゃんと帰っていた。話をして、ただ笑って帰った。

いきなりノロちゃんが走り出した。何か見つけたのだろうか。

僕も追いかけようとしたとき。

凄い音がして、ノロちゃんのところに大型のトラックが突っ込んだ。

嗚呼。嘘でしょ?

小さい僕にも分かる。ノロちゃんは死んだ。

それどころか。

ぐちゃぐちゃだろう。

喉に何かがこみ上げてきた。

だけど。

トラックの向こうからは、ノロちゃんの驚く叫び声が聞こえた。

「わあああ!何だァァ?!」

それを聞いて、僕はほっとしたと同時に、トラックの後ろを回って、ノロちゃんの手を引いた。

尻餅をついていた、ノロちゃんを無理矢理起こし、引っ張った。

「どうしたんだよう?」

「どうしたもこうも」

確か、ニュースでみたことがあるけど、ああいうのってじじょうちょうしゅとかいうのをおまわりさんにされるんだ。

それを聞いたノロちゃんも怖くなったのか、顔が蒼白した。

その夜。僕はいつおもわりさんから電話がくるか怯えていた。

厭だなあ。何か色々聞かれるんだろうなあ。

でも、あの現場には誰もいなかったわけだし、僕たちがいたのを誰も見てないはず。

でも。

もし、誰かが見ていたら。

ぷるるるる。

びくっと僕の身体が振動した。まさか・・・。

お母さんが電話に対応している声が聞こえる。僕は起き上がって、階段から廊下の電話を覗いた。

お母さんは僕を見つけたようで、手で僕を招いた。とても哀しそうな顔で。

嗚呼、やっぱり見つかったんだ。

誰か見てたんだ。

捕まっちゃうのかな?何もしていないのに。

この年で、まだやりたいことだっていっぱいあるのに。

じゃあ、ノロちゃんのところにもきているのかな?電話。

僕は恐る恐る受話器をお母さんから受け取った。

そこからは、すすり泣く声が聞こえた。

「僕ですけど・・・」

それはおまわりさんじゃなかった。もっと酷いニュースだった。

ノロちゃんが死んだ。

それを聞いたとき。僕は。僕の身体には、何かが走った。

電撃のような。何かが。

電話はノロちゃんのお母さんからだった。

ご飯のとき。ノロちゃんは明らかにおかしかったらしい。

顔が蒼白して。

で、それはご飯を食べ始めたときに起こった。

爆発したという表現が正しいのか。

ぺちゃんこになったんだ。

何かに押し潰されたように、左側のほうが凹んだ。

目玉が飛び出した。歯が何本も折れた。腕が吹き飛んだ。身体裂けて中の物が飛び出した。

その場には何もないのに、だ。

ノロちゃんのお母さん。というか、家族は何が起こっているのか分からなかったらしい。

まるで、空気に圧縮されたようだ、と言っていた。

僕は部屋に戻り。電気もつけず、言った。

「遅れてるなあ」

空からノロちゃんの笑い声が聞こえた気がした。

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