中編3
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友人との別れ

music:4

僕には自称霊能者を謳う友人がいた。

霊能者といえど、やる事は幽霊に物理攻撃を仕掛けたり、フラッシュライトのストロボで消滅させようと試みたりする

所謂異端の存在だった。

「だった」という表現なのは、今はもう彼は居ないからだ。

高校を卒業し、初めての春

僕は大阪の大学に進学し、友人も進学するものだと思っていたのだが、彼は就職も進学もせずに、ただ卒業した。

ある日、友人から『心霊スポットへ行こう』、と誘いが来た。

その頃の彼は、少し様子が違っていた。

思いつめているというか、こんな誘いが来たのは久しぶりだったので、喜んで付いていく。

今回は僕の家からも10分歩くか歩かないかくらいにある古いビルだ。

移住者はいるのだが、 昔、その屋上から飛び降り自殺をした人間がいるのだという。

友人とは、現地で合流し、このビルにまつわる話を語ってくれた。

「俺さ、このビルの二階の公文に小学校の時通っとったんよ」

公文に通っていたという話は聞いていたが、通っている教室は隣の市だと聞いていたので、頭に疑問が浮かぶ。

「なかなか問題が進まんくてな、窓の外をずっと見とったんよ

そしたら、窓の上部から下に向けて何かが落ちた」

「飛び降りたんですか?!」

なんてこった!

こいつはその自殺した瞬間を目撃したってのか?!

すると、友人は、フフと笑い、「違うよ」

と否定した。

「あの人はね、死んでもなお死に足りないんだろう」

訳が分からない、と思った。

「そうよな、俺も訳が分からん」

彼の背後に見えるビルの屋上から、何かが落ちたような気がした。

友人はビルに向けて歩み出す。

僕も後を追う。

「俺には自殺する人間の思考が分からない…」

そう呟いた。

屋上へ続く階段は南京錠で鍵をかけられていたが、友人はポケットから小さな鍵を取り出し、鍵を開けた。

ギィィ…と、錆びた鉄が悲鳴をあげ、その口を開いた。

彼は何も喋らない。

「その女性はなんで飛び降りたん?」

と何気なく問いかけた時だ。

彼は少し驚き

「なんで飛び降りたのが女だと思った?」

と問いかけてきた。

なんでも何も…と言おうとするが、わからない。

もちろん事前にここの話を調べたわけでもないのだが、彼の様子を見るに、飛び降り自殺図ったのは女性なのだろう。

耳鳴りがした、それもこれまでにないほどのビィーーーー…耳が痛い。

彼の背後だ、無数の人影がまるで夜の闇から這い出るように現れ…、彼を…

ビルから引きずり落とそうと…

ハッと目が覚める。

幻覚…なのだろうか。

そして彼は言った。

「俺には…自ら命を絶つ人間の感情がよくわからない」

二度目だったが、無表情の彼は少し悲しみを帯びているようだった。

一週間後、彼と連絡が一切取れなくなった。

彼は、もう俺の手の届かない所に行ってしまったのだろうか。

だが、その後も彼のばら撒いた火種は、僕に多大な影響を及ぼすのだ。

それは大学卒業まで続く。

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コメントありがとうございます。
『友人』は結果、行方不明になってしまいましたが、彼にとっての小学校5年生から高校卒業までの期間の話、そして、『僕』との奇妙な怪談話はまだまだ語りきれていませんので、楽しみにしていただけると幸いです。
これからもどうぞよろしくお願い致します
o(^▽^)o

この『友人』のお話し、好きだったのですが…
もうお別れのお話しなんですね…
まだ続きもあるようですから、楽しみにしております。