中編5
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じぇふぁにぃちゃん

僕が住んでるS市には、都市伝説というか、ある噂がある、

S市の南区の公園の公衆トイレ。

そのトイレで、じぇふぁにぃちゃんと会えるという噂が。

じぇふぁにぃちゃんと会うには幾つかの手順が必要らしい、まず一番手前のトイレの個室に入って鍵をかける、そしたら仕切りをよじ登って隣の個室へ入る。

そこでまた鍵をかけて次の個室へ...これを繰り返して一番奥の個室に着いた後、内側からドアを3回だけノックすると、じぇふぁにぃちゃんがやってきてくれるのだ。

じぇふぁにぃちゃんはとても綺麗で可愛らしい声で、お喋りの相手をしてくれる。

こちらの話には必ず返事をしてくれて、色んなことを聞いてくれる、じぇふぁにぃちゃん自身は、とても楽しそうに自分の持ってる人形やお洋服の話をしてくれるそうだ。

なんでも話してるだけで涙が出てくるくらい良い子で、自殺しようと思っていた男の子も、一回じぇふぁにぃちゃんと話したら生きる活力が湧いたとか。

しかし、じぇふぁにぃちゃんと会えるといっても、できるのは話すことだけ。じぇふぁにぃちゃんがどんな外見をしてるのかなどは、誰も知らない、ドアを開けたらいなくなってしまうからだ。

でも、ドアを開けなければ必ず3分だけ話し相手になってくれるそうで、

その3分は一瞬で過ぎるようで、とても充実した時間になるとか。

一回じぇふぁにぃちゃんと話をした人はもうじぇふぁにぃちゃんとは話せないらしい。

...なんていう噂が流れていたら、試したくならない奴はいないだろう

ただ真昼間にそんなことをやっていたらいくらじぇふぁにぃちゃんと会うためとはいえ犯罪だ。

だから人気がなくなった夜10時ごろ、僕は南区の公園にやってきた。

「くそ...あいつら誘っても一人として来やしねえ」

薄情なことに、噂を試しにいこうと計画していた3人のうち、僕以外の2人がドタキャンしたのだ。

「ひょっとして夜の公園が怖いってんじゃないだろうな...まったく」

真夏にも関わらず夜の空気はひんやりと冷えていて、やけに静かだった。

「まあいいや、その分明日じぇふぁにぃちゃんとの話を、思う存分自慢してやるかw」

なんだか自分だけ得をしてるような気分になった僕は、噂を試すため早速手前の個室に入って、鍵をかけた。

「...意外と暗いな」

外にいた時は、街灯の光や月の明かりで気がつかなかったが、トイレの個室の中は電気も付いていないせいかかなり暗かった。

「まあいいや」

仕切りをよじ登って次の個室へ、そして鍵をかけまた仕切りをよじ登り次の個室へ、なんだかアスレチックを攻略をしているような気分になりちょっと楽しくなっていた。

「次〜次〜♫」

そしてさいご、一番奥の個室にたどり着いた。

「よーし、いよいよじぇふぁにぃちゃんとの楽しいお話の時間が始まるぞ...!」

そして半ば興奮気味にノックした

(コンコンコンコン)

ワクワクしながらじぇふぁにぃちゃんの返事を待った。

しかし、来ない

全然来ない

1分ほど経ってもじぇふぁにぃちゃんから返事がないのだ。

「も、もしかして...

ガセ??」

なんだかとても期待していた自分がとても馬鹿らしくなってきた。

「はあ、やめやめ。

さっさと出...」

個室のドアを開けようとした

その時

鈍い音のノックが返ってきた

(ゴンゴンゴンゴン)

「!!??」

急いでドアにつけていた手を離した。

(びっくりして心臓が止まるかと思った...)

でも、冷静になってみれば、じぇふぁにぃちゃんがきて、返事をしてくれたのでは??

そう思った。

(でも変だ...じぇふぁにぃちゃんは声で返事してくれるって噂で聞いたのに...)

にも関わらず返ってきたのはガサツなノックの音だけだった。

暫く静寂が続いた。

(じぇふぁにぃちゃんがいるんだよ...ね?)

僕は思い切って声をあげてみた

「あ、あの、じぇふぁにぃちゃん...ですか...?」

数秒してから

「じぇふぁにぃよ」

と返ってきた。

だがその声はあまりにも歪だった。

返ってきたじぇふぁにぃちゃんらしき者の声は、ボイスチェンジャーで声を不自然に低くしたような、刑事ドラマでよく聞く爆発予告をしてくる犯人のような声だった。

続けて数秒後にまた

「じぇふぁにぃよ」

と、ボイスレコーダーでもう一度再生したように、さっきと全く同じ声の大きさ、高さ、早さでつぶやいた。

流石に気味が悪かった。

ドアの外に何がいるのかもはや想像もしたくなかった。

もうすっかりじぇふぁにぃちゃんとの会話したいなんて気持ちはなく、とにかくこの場から逃げ出して帰りたい気持ちでいっぱいだった。

それから声はしないが、何かがずっとドアの前に立っている気配がする。何もせず、ただドアの前でひたすら突っ立っている【何か】を想像すると怖くて鳥肌がたった。

(よ、よしこっそり隣の個室へ行って飛び出そう...)

流石に今いる個室のドアから飛び出して行く気にはなれなかった。

そしてゆっくりと手を動かし、仕切りの上に手をかけた瞬間、

「オはナしシヨウよ」

びっくりして体が凍りついた

「オはナしシヨウよ

オはナしシヨウよオはナしシヨウよオはナしシヨウよオはナしシヨウよオはナしシヨウよオはナしシヨウよ

オはナしシヨウよオはナしシヨウよ

オはナしシヨウよオはナしシヨウよ

オはナしシヨウよオはナしシヨウよ

オはナしシヨウよオはナしシヨウよオはナしシヨウよオはナしシヨウよ」

(ゴンゴンゴンゴン)

また同じ声のトーンで繰り返し、繰り返し、何度も何度も

もう気が狂いそうで絶叫したかったが、ここで声を出したらどうなるかわからないから必死で叫びたい気持ちを押し殺した。

そいつとは話してはいけない気がした。

ひたすら耐え続けて、もうどれくらいたったかわからない頃。急に声とノックの音が止んだ。

今度はやけに静かになった。虫の声ひとつ聞こえない。

「き、消えた...?」

ゆっくりと、ドア開けてみる。

そこには何もいず、ただ外からの月の明かりが差し込んでいた。

外にはガランとした公園が見えた。

(そうか、3分が過ぎたんだ... 助かった...)

安堵で涙が出そうになったがこらえて、急いで家に帰ろうと歩き出した瞬間

不意に後ろから手を掴まれた。

『 オはナ死シヨウよ』

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