中編5
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夜の話売り〜隣の部屋〜

赤い部屋……

一度は耳にしたことある怪談じゃありませんか?

現に僕も聞いたことがあります。

今回のお話しは僕の友人の兄弟の体験したお話しです。

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晴れて大学生となった俺は、念願の一人暮らしの許可が出た。

自力で物件を探して、辿り着いたこのアパート。

築50年ほど経っているにしては、綺麗な床や壁、トイレも付いている。

風呂が近くの銭湯を使うというのは不便な気もするが、大学もチャリで5分弱。

日当たりも最高なこの部屋を誰が逃すか‼︎

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「……ああ、母さん?」

引っ越しを終えた俺は一応両親に電話をかけた。

『引っ越しは終わった?』

「もう終わった。後はいらないものをごみ捨て場に持っていくだけ」

『あらそう? 一人で大丈夫?』

「大丈夫だって!」

『今……とう……ん……な』

「ん? 母さん?」

『あ……? おか……わ……』

「母さん? 電波大丈夫?」

電話に雑音が入った。

母の声が途切れ途切れに聞こえる。

“ブツん”と音を立てて電話が切れた。

「あれ? この部屋電波悪いのかな……?」

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ゴミ袋と一応粗品を持って外に出る。

さすがに重い……

階段を慎重に下りて行く。

階段を降りて近くのごみ捨て場に向かう。

「あー、やっと運び終わったぁぁぁぁぁ‼︎」

そう心の中で叫んだ。

「あっ、電話」

さっき切れた電話を不意に思い出して両親に掛け直す。

『もしもし? あんたなんで勝手に切ったの⁉︎』

耳をつんざくような母の叫び声。

「切ってねーよ。電波が悪かっただけだ。」

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『お隣さんと大家さんにはしっかり挨拶するのよ‼︎』

母はそういうと祖母が遊びに来たと言って一方的に電話を切ってしまった。

「若いの」

不意に近くで年老いた女の人の声が聞こえた。

見るとそこには杖を付いているおばあさんが立っていた。

「あんた、あれかい。新しい、あれ、ここの住民かい」

「は、はい。えっと……どちら様?」

「わしは一応ここの“おーや”をやっておる」

えっ⁈ この人が大家さん?

「えっと、俺、ここの205号室に引っ越してきました‼︎ これつまらない物ですが‼︎」

「そうかい、そうかい……また息子が勝手なことをやったんだねぇ……」

「えっ?」

「覗くな」

おばあさんはそれだけ言うとブツブツ言ってどこかに行ってしまった。

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なんか大家さん不思議な人だったな……

『お隣さんと大家さんにはしっかり挨拶するのよ‼︎』

……204号室……4号室って珍しいな……

インターホンを押してみる。

……

反応なし。

「……出直すか」

俺は自分の部屋に戻った。

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「あっ、下の住民に挨拶すんの忘れてた」

俺は急いで部屋から飛び出し、階段を駆け下りた。

インターホンを押す。

「はーい」

出てきたのは眼鏡をかけた大学生ぐらいの青年だった。

「あっ、上の階に引っ越してきた者です……これつまらない物ですが……」

「ああ、どうも。って言うか君、あの部屋なの?」

「えっ?」

「……あたしもここに住んで2年になるけど、あんたの隣の部屋の住民見たこと無いんだ。でも隣の人には関わらない方がいいぞ」

そういうと扉を閉めてしまった。

ん? ここの住民、男じゃなくて女?

いやいやそんなことより、204の人のこと知ってる? でも見たこと無いって?

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考えすぎて頭痛い。

今日はもう寝よう。

布団を敷いて、そこに倒れこんだ。

今日は疲れた……

“ガチャ”

隣の住民が帰ってきたっぽい。

無意識に隣の部屋とを区切る壁を見る。

時計が目に入った。

時刻は午前3:30。

いきなり部屋に一筋の明かりが入った。

「えっ?」

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穴がある。

隣の部屋からこの部屋に続く穴が……

明かりが消えた。

俺は興味本位でそれを覗いてみた。

部屋には2人の人影。

影の大きさから男女だと分かる。

男の影が女の影の上に乗り首を絞めている……?

「……‼︎」

声が出なかった。

女が男を手じかにあった灰皿で頭を殴った。男は倒れたが、女は殴り続ける。

『あはははははは……』

高らかに笑いながら……ひたすら殴る……

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俺は布団の中でうずくまりながら心の中で叫んだ。

「これは夢だ……これは夢だ……これは夢だ……‼︎」

いつの間にか寝てしまったのか。

朝日が部屋の中に差し込んでいた。

恐る恐る穴の位置を確認する……

「やっぱり……」

そっと穴を覗いてみた。

真っ赤……

赤い……赤以外が見え無い……

『あはははははは……』

頭の中でそんな笑い声が響いた。

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その後彼は大家さんの家に行って全てを聞き出そうとしました。

しかし、あのおばあさんはおらず、大家だと名乗る男性からは何にも聞き出せなかったそうです。

あのおばあさんは何者だったのか……

彼は仕方なく、105号室の女性に話を聞きました。

彼女も最初は話すのを躊躇ったのですが、彼に全てを話してくれました。

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「あの部屋にはあたしと同期の女の子が住んでたんだ。

でも彼氏がどっかのお偉いさんで……。

彼女にそいつとの子供が出来ちゃってそいつが殺しに来たんだよ……。

でも彼女は近くにあった灰皿で頭を思いっきり殴って死んじゃったんだ。

それから彼女自身もおかしくなって……

そのまま自殺。

その時通報したのが、隣の部屋で彼女のストーカーやってた奴だったんだ。

ストーカーの奴、壁に穴開けて彼女のこと見てたんだな。

それからだよ。

彼女の部屋でおかしなことが起こるのは。

最初はストーカーの奴も気にしなかったんだろう。

でも、日に日に奴もおかしくなってとうとうナイフで……。

初代の大家さんは二つの部屋を封印した。でも、それから間も無く脳卒中で亡くなった。

今の大家は儲けしか考え無いから……

金に困ってる奴に部屋を貸して、そいつがいなくなった後、その事実をなかったこととしてあの部屋二つを貸した。

あの部屋から早く出た方がいい。

これは警告だ」

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彼はもう一度実家から大学に通うことにしました。

彼は真実を話してくれた彼女に「君は何故引っ越しをし無いの?」と聞いたそうです。

すると彼女は微笑んで「あたしはもうどこにも行け無いから」と寂しそうに言い部屋の中に入って言ったそうです。

その時彼が見たものは全く生活感の無い部屋とたくさんの同居人だったそうです。

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皆さん……決して穴があっても覗か無いでください。

彼女達のようになりたくなければ……。

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今宵も穴から見える部屋は赤いのはそういう訳だ。

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