長編14
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友達の死

40年ほど前の話です。私の友達の中でも、一番気の合う友達が居ました。

名前は邦明でした。よく家に行き遊びました。

体が弱く何時も人工透析をしてました。週に一回は透析の日が在り

その日は必ず学校も休みでした。私も遊びに行くと叔母さんから良く

「邦明と遊んでくれてありがとうね。」と言われました。

邦明は家の中だけで、外には出ないのに顔や肌が真っ黒でした。

学校に来ると何時も、「真っ黒くろすけ」というあだ名で、

何時も邦明と呼ぶのは私だけでした。

中学に上がるころには、目も黄疸が広がり,白目が黄色になり

顔も痩せて小さくなり、不気味な感じさへ感じられました。

一年の2学期9月に入ると学校には来なくなりました。

登校しなくなって二週間。

担任が、邦明が死んだことをみんなの前で報告しました。

私は悲しくて泣きました。みんなが見ていようが関係なく泣きました。

私は学校休んで、母と一緒に葬式に参列しました。

物悲しい葬式で、親は悲しみのあまり

倒れて変わりに叔父さんが参列者に最後の挨拶を行いました。

私は葬式が終わり家に帰る途中

邦明の叔父さんに止められ納骨式にぜひ出て欲しいという、

邦明の親の要望が伝えられました。

私は参列する事を承知しました。

母も「行っておやり」と言うと涙ぐんでました。

49日が明けたころ。

新しい墓の前に私をはじめ邦明の親戚が集まっておりました。

親は私の学生服姿を見ると邦明と合わさって、強い悲しみに包まれました。

そして納骨も終わり、一人家路に着きました。

家に着くとおばあさんが塩を持って、玄関で待ってました。

私が入る前に、塩を振りかけて、私に向かい祈りました。

そして、靴を脱ぎ家に入ると自分の部屋に行き、明日の学校の仕度をすると,

下に行きお婆さんと一緒に仏壇に向かい拝みました。

それから一週間。

何も起きませんでしたが10日目になり

私の後ろに誰かがいる気配がして学校に行っても

何処に居てもその気配に振り返る毎日でした。

お婆さんにも相談しましたが「何の気配も感じない.お前の気のせいだ。大丈夫だよ。」

と言うばかりでした。

そしてお婆さんに相談した夜中。

今まで邦明の夢など見たこともないのに、夢に出てきて、

「僕とあそぼうよ進。僕は寂しいよ。進。一人にしないで。」

と言うと消えて行きました。

その夢を何日も見ました。

お婆さんに最初に言って、何でもないと言われていたので、報告はしませんでした。

夢はだんだんエスカレートして行きました。

「進、この崖を飛んでみろよ、気持ちいいぞ、」

そう言うと邦明は飛び降りて見せて私が飛び降りると永遠に着地できない、

無限世界に追いやられ、邦明は私が落ちる所を上から見て大きな声で笑ってました。

目が覚めると、寝汗で布団がぐっしょり濡れてました。

またあるときは、「おい進こっち来いよ」と誘うので付いて行くと

大きな沼のほとりに出ました。すると「ほら沼の中を覗いてご覧。綺麗な鯉が泳いでる。」

と言うので見ようと沼の水際に乗り出すと、ドーンと後ろから突かれ

沼に落とされました。「進、間抜けだね」と言うとサッサと居なくなってしまった。

沼に落とされた私は、上がろうとするが縁がヌルヌルして滑りまた水の中に戻される。

それを繰り返すと水の底から泡が湧き上がり、その泡の中に引きずり込まれて

溺れる。毎日その類の夢を見続けて居ました。

毎日邦明から落とされる夢を見続けて、私はだんだん衰弱して行った。

私は親にもお婆さんにも、夢の事を話すと馬鹿にされると思い話さなかった。

そして、決定的な夢を見ることになる。

夜中、霧の中彷徨い歩く私。何処に行くにも足元も見えないほどの霧の中

邦明を探す。「何処なの?邦明。見えないよ。」一歩歩くたびに足が

石や細かい草にとられて転ぶ。何回も繰り返す。「邦明何処なの?」

私は叫ぶ「進。ここだよ。」直ぐ後ろから声がする。

振り返るが、邦明の姿が無い。また先の方で「進、何をしてるんだい。僕はここだよ。」

と声のする方に気をやり歩く。どのくらい繰り返したかわからない。

突然、崖になり足を踏み外し落ちる。仰向けに底知れぬ闇に落ちる。

ドーンと背中から落ちた瞬間。上から笑顔の邦明が覗いていた。

土の匂いがした。「進。お前もそろそろ眠りなよ」そう言うと上から扉が閉まった。

私は「邦明、どこなんだ、ここは?どうして狭いんだ。どうして暗いんだ。」

その言葉を私は繰り返している。

最後は邦明が笑いが聞こえる「ワハ、ハ、ハ、ハ、ハ。進、もうじきお前も楽に

なるからね。」そう言うと私の上に「ドサ、ドサ、ドサ、」と言う

土をかぶせる音がして暗闇が広がる。目を開けても暗い。何も見えない。

闇が広がる。狭い、足と手も動かせない。そこで、夢が終わり。

私は飛び起きた。

何時もの部屋が在った。朝の日差しがカーテン越しに射していた。

体がだるい、手も足もしびれている。頭は夢の影響で考えられない。

私はまた布団をかぶり寝なおした。

「8時じゃ。進、遅刻するぞー」とお婆さんの声がした。

「まったく近頃の子供はわかってない。学校がどんなに大事か」そう言う

お婆さんのぶつくさ言う声が私の耳のどこかに聞こえた。

お婆さんは「階段昇るのも楽じゃない。年取ったかのー」と言う声と共に

私の部屋の戸を開けた。

布団を頭までかぶる私。

「おい進。どうしたんじゃ。学校じゃぞ。何を不貞寝してるんじゃ。」そう言うと

お婆さんは一気に私の掛け布団を剥がした。

私は右袖で顔を覆った。お婆さんは無理やり覆った右手を剥がした。

私の顔をまじまじと近寄り眺めたお婆さんは驚き、尻を突いた。

「進,この頃、変ジャと思ったら、何かに獲り憑かれて居たのか?」

お婆さんは私の目を見てささやいた。「お前、このままだと獲り憑かれて死ぬぞ」

そう言うと、母と父を呼びに出た。

間もなく父母とおばあさんが二階にきた。

二人が私の顔を見るなり絶句した。父が一言つぶやいた。「死人のようだ。」

するとお婆さんは、「ここまで一人息子にかまわない親など親じゃない。判るか?」

父も母も「ハイ」と言うと黙ってしまった。

お婆さんはすかさず「これから、3日間、孫は学校を休ませる。良いな。」

母は「病院に連れてゆきます。」と言った。

お婆さんは賺さず「よく聞け、文子お前の息子は祟られているんだ。それも凄い

この世に怨念を持ったやつに。病院に行ったらお前の息子は間違いなく、死ぬか

狂人じゃ。」そう言うと「仕度をしなさい」と私に命令した。

母は呆然としていた。父は「またお婆さんの霊媒か」と言うとお母さんを見て

呆れて、下に引き上げた。しかし母は、誰よりも知っていた。

自分の目の前で、何人もの人が助かった事や姉妹も助かった事を。

「お父さんは、私が説得するから、お前は3日分の下着や服をバックに詰めなさい」

そう言うと下に行き、父を説得し始めた。

私はバックに服や着替えを詰めるのが精一杯で、

自分で服を着替える気力が無かった。

パジャマのまま、バックを持ちお婆さんの部屋に行った。

おばあさんも丁度バックに着替えやら道具をを詰めている最中だった。

お婆さんは私の姿を見ると「お前その格好でお寺に行く気か」と怒鳴りつけられたが、

どこか他の世界で話が聞こえるように感じて、答えが浮かばず

その場で、座り込んだ。

お婆さんは私の虚ろな目を見ると「進。魅入られてるな。お前はもう昔の進ではない。」

そう言うと仕度をして、タクシーを呼び山のお寺に向かった。

タクシーの中でも、私はボーとした頭で、何をしても気力が無かった。

1時間。タクシーは「法傳寺(ほうでんじ)」と言うお寺の前で止まった。

お婆さんが先に下りると運転手がパジャマ姿の私の手をとり降ろしてくれた。

私は門前でお婆さんが来るのを荷物を抱え待っていた。

何やら住職と10分ほど話すと離れのお堂に案内された。

私はボーとする頭の中で考えがわかず、お坊さんのなすがままになっていた。

布団が敷かれ、私はパジャマから白装束の着物を着せられ、布団に横になった。

しばらくすると、お婆さんと住職が現れた。

住職は私を見るなり「凄い霊気が漂ってますね。私とご隠居の力で大丈夫なんでしょうか?」と話した。

お婆さんは「馬鹿な父親と母親がこの子の異常にもう少し早く気がついていれば。」

と言うと涙を流していた。私は体の自由が利かず、目でお婆さんを追っていた。

「どうだい進、少しは落ち着いたかい。」お婆さんの声は聞こえるが答える気力が

無くなっていた。

「和尚様。このまま、この子を放っておけば死にます。何とか処置をお願いします。」

そう言うと和尚を見つめた。

お婆さんは経緯を話した。

「この子が友達の葬式に行き、納骨式に参列してからおかしくなり始めました。

納骨式から帰り、お清めは致しました。しかし、夜、死んだ友達の夢を見てから変貌し出しました。」

そう言うと

和尚は「私は今まで、色々な憑かれた物を排除してきたが、夢の中に出てくる

霊の排除は初めてじゃ。どうしたら良い物か?」腕を組むと考え出した。

私はまた眠くなりお婆さんや和尚様の居る前で眠りに着いた。

1時間。お婆さんと和尚様は寝ている私の前でお経を唱えていた。

私はまた夢を見ていた。夢を見るたびに私の体は弱って行く

しかし、どうしようもない。そう思っていると。。。。。。。。。。。

「進。」また邦明の声が何処からとも無く私の耳に響いた。

おびえながら、私は目を開けた。目の前に広がる景色は今まで生きてきて始めて見る景色だった。

木が無いのに木の葉が絨緞の様に敷き詰められている。

地平の彼方まで木の葉で一杯だった。

また声が「進。お前と俺がここで遊ぶんだよ。寝そべってご覧。空が綺麗だよ

空に吸い込まれてゆく見たいだ。」邦明はそう言うと私の前に現れ寝て見せた。

私も邦明に誘われるように寝ようとした時。何処からか、お婆さんと和尚様のお経が聞こえてきた。

邦明は「無駄な事をする。そんな事で進と俺の中を裂く事は出来ない。」そう言うと邦明は薄笑みを見せた。

「さ気にしないで、休もう。」そう言うと邦明は寝そべり青空を眺めていた。

私もそれに釣られ、寝そべった。しかし、私が寝そべると私の下の葉っぱは、

うじ虫に変わった。何千、何万のうじ虫が、私の寝そべったところに沸いて来て

私はその中に埋まって行った。口や穴と言う穴にうじ虫が入り込む。

うじ虫の山に埋まる私を見ると邦明が笑っていた。

「進。気持ちが良いだろ」私は息が出来なくなった。

そして我に返り目が覚めた。そこには、お婆さんと和尚様の顔が見えた。

お婆さんはにこやかに「進、気がついたね。調子はどうだい。夢の事をお話。」

私は二人に前で今見た夢の話をした。和尚様とお婆さんは顔を見合わせて話した。

「土、火、日、木、水、」「いよいよ最後だな。」と言うと

お婆さんは、着替えてくると言って、部屋を出て行った。

和尚も同じように出て行った。

私は部屋で正座をして待った。

お婆さんと和尚は白装束に着替え私を本堂に案内した。

大きな仏壇の前には絹糸を何本かにしたしめ縄に1m間隔に配置した真っ赤な御札がぶら下がり、

これからの死闘を予知するように見えた。

お婆さんは「進、お前の背負っている邦明は怨念の塊だ。それを排除するには

私一人の力では足らない。和尚もだがお前のその守護霊様の力も借りなくてはいけない。

だから、まずお前からお前の守護霊を呼び出す。その後が勝負だ。」

そう言うとお婆さんは、頭に鉢巻きをした。

和尚も鉢巻きにタスキを掛けた。「さー始めるよ」そう言うと和尚様が題目を唱えだすと、

おばあさんも唱えだした。

もう日が暮れようとしていた。誰が鳴らすのか、お寺の鐘が鳴り出した。

お婆さんは「あの鐘の音を聞いて、目をつむりかねの数を数えてお眠り。」

そう言うとまたお経に戻った。

私は「ごーん、ごーん、」と言う間に何時しか、眠りに着いていた。

白い煙が立ち込める中、私はひとり鐘の音を聞いていた。

「ごーん、ごーん、ごーん、ごーん、ごーん」五つ目の鐘の音が止むと

物音ひとつしない、まるで雲の上に居るような気分で足が地に着いていない間隔に

襲われた。すると遠くの方から馬のヒズメの音が響いてきた。

私の近くまで来ると、立ち止まった。私はお経を拝みながら目を開けた。

そこには真っ黒な馬にまたがって、鎧兜に身を包んだ侍が立っていた。

私は怖くなり逃げ出そうとした。すると、「逃げることは無い。進。」その声が私の心に響き渡った。

私は「あなたは誰です。」と言うと「お前の後ろに何時も居る守護霊じゃ」そう言うと私を見た。

私はその場で、しゃがみ正座をすると話した。「あなたが守護霊様ですか?どうしてここへ」

そう聞くと「お前のばあ様カラ呼び出されたのじゃ。お前が危ないと聞いて駆けつけたのじゃ。

お前が死ねばわしも死ぬからな。」そう言うと大きな声で笑った。

「お前のばあ様は煩いハエのようじゃ。お前が危なくなるとわしの周りを飛び回る。」

そう言うと「お前の敵は何処に居る。」周りを見渡した。白い煙が引き始め

そこには、邦明が立っていた。私は無言で邦明を指差した。

私の守護霊様は馬を邦明に向けると、刀を抜き切りつけた。

三度か四度切りかかるが、邦明は消えたり、出たりを繰り返した。

そして、五度目の太刀に邦明の悲鳴が聞こえた。邦明は左肩から胸に掛けて太刀を浴びると消えた。

守護霊様がゆっくり私の元に戻ってきた。

「進。これまでじゃ。」私は「どうして、最後まで切り付けなかったの」と聞くと

「私は霊じゃ.霊が霊を殺す事は出来ない。判るか?」そう言うと

私を後にするとまた霧が出てきてその霧の中に馬のヒズメの音を残し消えて行った。

私は守護霊を追おうとしたがお婆さんや和尚様のお経の声が響き渡り

引き戻されるように、夢から覚めた。

私が夢から覚めるとお経を止め二人は私に聞いてきた。

私は起きた事を話した。

お婆さんは「そうか、来て下されたか。和尚様のお経のおかげじゃ」そう言うと

和尚様にお辞儀をした。お婆さんは私に言い聞かせるように話した。

「ここの和尚様は私の何十倍の法力がある。守護霊様を呼び寄せる事もできる。

他の人では、守護霊様は出てきてくださらない。」そう言うと和尚様におじぎをした。

「ご隠居、まだ終わったわけではありませんよ.斬り付けて相手を弱らせただけでまだ、

往生はしていないですよ。これからがご隠居の腕の見せ所ですよ。」

そう言うとにこやかに笑いその場を後にした。

お婆さんはその場で考え込んでしまった。

「ハテ、往生させるにはどうすればよいのか?」腕を組み考えていたが浮かばないようで、

その日はお寺に泊まった。

私の様態は、守護霊様が切りつけてから、良くなりご飯が食べられるまでなった。

しかし、眠るのが怖いのと、体の疲労感は取れなかった。

翌朝、おばあさんと二人タクシーに乗ると家路を急いだ。家に着くと門の前で父と母が待っていた。

家に入る前にお婆さんは玄関先や、門、引き戸、土間、下駄箱、全て見渡した。

そして大きな声で言った。「わかった。そうじゃ、そうじゃ。忘れていた。」

近所にも響く大声で話した。

「文子、進の靴を全てワシの仏間にもってこい。」そう命令すると

廊下を歩きながら相槌をして、部屋に消えて行った。

私は夜になるのが怖くて仕方なかった。

その日の夕方。

お婆さんは大きなあくびをしながら私の部屋にやってきた。

「進。お前もう一度、邦明に会え。そして、お経を拝んでやれ。

そうすれば、邦明は夢には出てこなくなる。しかし、言いか決して邦明に触れたり目を見てはならん。

判るか?今日は一杯食って、腹満腹にして寝ろ。」そう言うと部屋から出て行った。

そして言われたように、私は夕ご飯を腹いっぱい食べて寝た。

その姿を見た父も母も安心した様子だった。

午後、10時を過ぎると腹が満腹のせいもあり、眠くなり寝床に着いた。

そしてまた、邦明の声が聞こえてきた。

「進、痛いよー。痛いよー。肩を切られたのがつかないよー」と血だらけの肩や胸を見せた。

「お前の守護霊強いな。お前に取り付いて元の世界に戻ろうとしたが無理だ。」そう言うと私を見た。

思わず私は目を反らせた。

「どうしてみてくれないんだ。友達はお前一人なんだよ。」そう言うと今度は近づいてきた。

私はお婆さんの言葉を再び思い出すと、今度はお経を唱えだした。

邦明の様子が変わり「お前と一緒にずーと居られると思ったのに。」そう言い残すと消えていった。

私は消えて行く邦明を見ながらお経を唱え続けた。

翌朝。お婆さんは朝から玄関で大騒ぎをしていた。

「文子、お前昨日言いつけた、進の靴用意しておらんじゃないか?忘れたのか?

お前は鈍感じゃからのー」そう言うと

お母さんは「忘れちゃ居ませんよ。あんまり臭いんで、裏庭の縁側に干してありますよ。」

お婆さんは「余計な事しおって。お前何年わしと一緒に居るのじゃ。

もし靴のそこに泥が無かったら、お前の息子がまた悪い夢に引き込まれるんだぞ。」

大声でやり取りをしてました。

私はおばあさんが言った靴とか泥とか断片的に聞いていたので、

よく理解できませんでした。私が学校に行こうとすると、

おばあさんから玄関で引き止められました。

「お前の勉強熱心は判った。しかし、今日は学校休め。

お前から邦明を完全に追い払う。その為にはお前がいないと駄目じゃ。

親には私が言ってある。今日は一日

仏間じゃ。」そう言うと外に出て行った。

10時ごろになると今度は何時も行くお寺の住職を連れて戻ってきた。

私が仏間で、お経を拝んでいると、

お婆さんは「お前の友達はお経だけじゃ駄目じゃ。ちゃんと供養しないと。」

と言うと和尚様とお婆さんと私で拝んだ。

そして、私の靴を全て仏間の縁側に並べると、お婆さんは住職が拝む中

靴を一足、一足、庭の七輪であぶり燃やして行った。

私は少し頭にきてお婆さんに愚痴をこぼした。

「その靴の中には高い靴もあるから焼かないで」そう言うと

「邦明の骨の灰が着いた靴を吐いて通学する気か?」

と怖い声で、私をどなった。脇に居た和尚は、下を向き笑っていた。

私は「アディダスが燃える。ピューマが燃える。その事だけが頭に在った。」

完全に燃え終わると燃えカスをを袋に詰め和尚が用意した骨壷に入れると

和尚は引き上げて行った。

お婆さんは和尚様を見送ると「これで、邦明も、もう出まい。」そう言うと

お婆さんは話し始めた。

「昔はわらじのはなおが切れると縁起が良いと言った。

いつの間にか,はなおが切れると縁起が悪いと言う様になった。

時代のせいもあるが、骨を収めに行った時や墓参りに行った時は、

ゾウリやわらじははなおを切り捨てた物じゃ。

墓の土や余計な物を土から亡者を拾って家に持って来てしまう。

それを防ぐ為にすべて焼いたものじゃ。時代は変わった物だ。」

そう言うと空を見上げた。

そして、庭にだした七輪を寂しそうに片付けた。

もう夕日が沈みかけていた。

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