「なあ、夢って本当に夢だと思う?」
ユウタは目を覚ますと、俺にのんびりと話しかけてきた。
ユウタは居眠りをして、起きる時に吊り上げられたマリオネットのように突然起きる。
弛緩して、死んだように眠っている体が突然飛び上がるように見える。
昼休み、屋上の陽だまりでうとうとしていたのだ。
「どういうこと?」
長年の付き合いで、ユウタの独特の目覚めにも驚かなくなった。
「実は俺、最近、結構抜けるんだよね。」
抜ける?また意味のわからないことを。
ユウタは、はっきり言ってへんなヤツだ。
時々、こういう不思議ちゃんのようなことを言う。
「抜けるって、何が?」
「おれ自身がw」
「はあ?」
「わかりやすく言えば、魂がよく抜ける。」
俺はバカバカしくて、あははと笑った。
「信じてねえだろ?」
「当然。」
「実は、俺、かけもちなんだよね。あっちの世界とこっちの世界。」
「へ?」
ついに頭がおかしくなっちまったか。はたまた悪いクスリでもやってるのか?w
「例えばさ、変な夢とか、悪夢とか、見るだろう?」
「ああ。」
「実は、それも現実なんだ。人間の脳ってのは、都合よくできていて、夢の断片しか覚えていないだろう?実は、それは、あちらの世界で自分が実際に体験したこと。悪夢からさめてさ、ああ、夢でよかった、なんて思っているだろう?実は、こちらの自分があちらの自分のピンチを救ってるんだ。」
「カオスでわからねえw」
「最近さ、俺、よくこっちが抜けるんだわ。たぶん、俺、あちらの世界の人間になる前触れだわ。」
「ていうか、お前、疲れてるだけだろ。しょっちゅう居眠りしてるし。ちゃんと寝なきゃだめだぞ。」
「寝てるし。最近、睡眠12時間くらいだし。だから、もう俺がここから消えるのが近いって言うんだよ。俺は、あちらでは、ショウタって名前なんだ。」
マジでこいつ、ヤバいクスリやってねえだろうな。俺は苦笑いしか返せない。
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春休みが終わり、俺は中学二年に進級した。
新学期が始まって、どうも大切な何かを忘れてしまったような気がしてならない。
俺のすぐ側には、常に誰かが居たような気がする。
屋上。昼休み。そして?
まあ、いいか。
忘れるくらいだから、たいしたことではないのだろう。
作者よもつひらさか